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未成年の叫び

小学、中学と一緒だった、
アケミと言う女子がいた。

アケミは、根暗でよくいじめられていた。

休み時間になれば、アケミ菌とやらが、
発生して、それをなすりつけ合う。

バリヤ等をもちいり、面白おかしく、
遊んでいるのだ。

私はそれを、ただ眺めて、
何が楽しいのかがわからなかった。

アケミは、そんなのお構いなし。
バカじゃないの。
とぼそっと言うだけ。

だが、次第にクラス替えや、
中学に入ってもいじめは変わらなかった。
余計にいじめは広がり、

アケミが廊下を歩くと、
みんな避けて、アケミの所だけが、
開けているぐらいだ。

アケミは不登校になった。

突然だろう。

アケミの家は近所にあった。
小さい頃から、よく遊んでいた。
とても、心優しくて内気な子だった。

なにがいじめの原因か、
それは、その内気な性格が災いする。

小学一年生の頃である。

その日は少し寒かった。
アケミは、素足でスカートを、
履いていた。

音楽の授業で、
前に出て振り付けのある歌を、
みんながやる。

アケミの番になり、
アケミはもじもじと前に行って、
先生に何かいいたげな素振りをする。

先生は、アケミが恥ずかしがっていると、
思って一緒にやろうと誘う。

そこで、アケミは、漏らしてしまった。

本当は、トイレに行きたかったのだ。

そこで、まわりの同級生が騒ぎ出す。
それがいじめの始まりである。

それから小学校6年間、中学数ヶ月。
アケミのいじめが続いていたのだ。

そんなアケミだが、
私にだけは、心を開いて、
よくいろんな話したり、遊んだりした。

アケミが不登校になって、
私はアケミの家に行く。

アケミの話しを聞くと不登校は、


いじめが、原因ではなかったのだ。


確かに、いじめはエスカレートして、
かなりアケミは嫌がってはいたもの事実。

特に女子がひどかったと言う。
年頃になると好きな男子も出てくる。
その男子がアケミをからかってると、
女子は余計にアケミをいじめるのだ。

だが、それ以前の問題を、
アケミは抱えていたのである。

アケミには、二つ上の中3の姉がいた。

私の知っているアケミのねぇちゃんは、
明るく、人当たりもよく、
成績も良く、とてもモテていた。

だが、家では違ったのである。
アケミのねぇちゃんは、
わがままで自己中心的で、
アケミを奴隷の様に扱っていたのだ。

暴力を振るった時の、
アケミの怯える姿が滑稽だと、
笑いながら、なお暴力を振るうのだ。

それ以外にも、
自分で取れる距離の物を取らせたり、
靴下を履かせたり、靴紐結ばせたり、
髪の毛のセットも、自分で出来る事を
アケミは全てやっていた。

ねぇちゃんの言う事は絶対なのだ。

親も見て見ぬ振りだという。


そんな親に対する反抗が不登校なのだ。


全てを話してくれた。
笑ってたかと、思えば涙がポロポロと
アケミの頬をつたっていた。

私もかあちゃんには、
家事一般と暴力を振るわれていた。

同じ様だが、全然違う。

かあちゃんは、不器用で、
愛情表現が苦手なだけで、
私を愛してくれていると感じるからだ。

アケミのねぇちゃんは、
違う。ただのクソだ。

外面がいいぶん、家ではアケミで、
ストレスを発散させているだけだ。

親も親である。
確かに、ねぇちゃんはできた子として、
まわりから、チヤホヤされてるのだろう。

だから、ねぇちゃんの行為を、
仕方ないと思っているのだ。

じゃぁ、アケミはどうなってもいいのか?

アケミの事を思うと、
胸が苦しくなって、悔しくて、
もどかしくて、どうにかなりそうだった。

アケミは、話を聞いてくれるだけで、
すごく嬉しいし、わかってくれる人が、
いると思うと頑張れるよ。

と話してくれた。

ある日また、
不登校のアケミの家に行くと、
母親が出てきて、アケミには、
会わせられないと言われた。

何でですか?
と聞くと。

アケミが会いたくないって言ってる。

と言うのだ。

アケミがそんな事言うはずない。
これは絶対に何かあったんだ。

とりあえず、わかりました。
と言って帰った。

まだ中1の私が何を訴えても、
大人はかまってもくれないだろう。
悩んだ…。

電話帳でフリーダイヤルで
悩み相談出来るのを発見し、
思い切って電話をした。

ところが…事情を話しても、
子供には難しいやら、
大人の問題だからだのと、
全然役に立たない。

これは、意を決して、
かあちゃんに相談するしかない。

かあちゃんが帰ってくる。

正座して真剣な顔をして出迎える。

かあちゃんは驚き、
なんだ!なにがあった?
と聞いてくれた。

かくかくじかじかで…。
とアケミを助けたい一心で、
かあちゃんに相談した。

かあちゃんは、
なんだい!それ!
本当なのかい?
お前はどうしたいんだ?

と聞いてきたので、

アケミを助けたい。
あの親とねぇちゃんに、
ガツンとお仕置きしてやりたい。

そう真剣にまっすぐ、
かあちゃんの目を見て話した。

かあちゃんは、
わかった。
お前…よく話してくれたね。
えらいよ。
お前がそんな優しい子で、
かあちゃんは嬉しいよ。

だから、かあちゃんが、
絶対にその子を助けてやる。
お前の為なら、かあちゃんは、
なんでもしてやるからな!

そう言うと、
かあちゃんは立ち上がり、
かあちゃんにまかせな!
お前はここにいろ!
と言うと出て行った。

心配で、こっそりついていく。

すると、かあちゃんは、
アケミの家のチャイムを連打する。
中から、アケミの両親が出てきた。

すると、かあちゃんは、

こんばんは!
ちょっとお話したい事あるから、
中に入れてもらうよ!
とアケミの家に上がり込んだ。

そこから、
なにが起こったのかわからない。

かあちゃんは、
アケミを連れて帰って来た。

びっくりした。
アケミの髪の毛はザクザクに短く切られ、
所々坊主になっていた。
そして、アケミの顔はアザだらけで、
首にはくっきりと指の痕跡がついていた。
アケミは怯えきっている。

見るに耐えない姿をしていて、
目を逸らしそうになったけど、
ここで逸らしてしまうと、
アケミを助けられないと思い。

アケミ!もう大丈夫だ!
大変だったな!よく頑張ったな!
とアケミを励ました。

かあちゃんは、
アケミに優しく抱きしめて、
辛かっただろに…
よく我慢したね…
あんたは、
あたいが守ってやるからね。
安心しな…。
と怯えるアケミに優しく声をかけてた。

しばらくすると警察が来た。

かあちゃんがアケミを誘拐したと、
アケミの両親が通報したのだ。

かあちゃんは、
わかっていて行動したのだと思う。

警察に、家にあがってもらい、
アケミの姿を見せて
私が話した内容を話した。

かあちゃんは、アケミに、
大丈夫だから、
少しづつでもいいんだ。
話しておやり。と言う。

私もアケミに
オレが守るから大丈夫だ!
とアケミの背中をさする。

アケミは、だいぶ落ち着いてきた。
ポツ、ポツと家での扱いを吐き出した。
そして、今回の殺されかけた事。
警察も親身になって聞いてくれた。

警察は、アケミを保護するからと、
連れて行こうとする。

私は不安になり、警察に、
これからアケミはどうなるんですか?
と聞いた。

そしたら、
まずは病院に入院してもらうよ。
心の病院があるんだ。
そこに行って治してもらうんだ。

もちろんアケミさんご家族には、
別の警察の人に
事情聴取をしてもらうから。

アケミさんの傷が治ったら、
保護施設に行ってもらうよ。

誰にも言えない所なんだ。
アケミさんご家族にも教えられない。

そっか…。
アケミと少し話す時間くれますか?

と言うと警察の人は今応援の警察が、
アケミさんご家族を連れて行ったみたいだ。
安心して話していいよ。

アケミに泣きながら話しかける。

守るって言って、全然守れなくてごめん…
アケミ、もう会えないみたいだ…
お前の事は…絶対忘れないからな!

いつも優しいアケミが好きだった…。
こんなオレを頼ってくれて、
なんでも話してくれて…ありがとう。

会えないなんて…悲しすぎて…
オレ…何も出来なくて…こんな事…
こんな事になる前にアケミを救いたかった!

涙が止まらない中、叫んだ。

アケミが泣きながら返事してくれた。

ありがとう。
いつも助けてもらってたよ。
会えなくなるの、私も寂しい…。

でも、私も絶対忘れないから。
これ以上、迷惑かけたくないから、
行くね…さよなら…。

アケミはそう言うと、
警察の所に行ってしまった。

それからアケミの両親は、
虐待と殺人未遂で逮捕された。
姉は中3だからなのか、
遠い親戚の所に行ったそうだ。

しばらく中学校では、
アケミの話で盛り上がっていた。

私はそれを、ただ眺めて、
何が楽しいのかがわからなかった。


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