大家さん。
今回は、大家さんの話をします。
私が入院する時も、
いってらっしゃいと軽く送り出し、
退院するまでの、約一年ものあいだ、
私の部屋を、そのままにしてくれるのである。
しかも、
定期的に仏壇のかあちゃんの、
仏花やお供えや、水を替えたり、
部屋の換気は定期的にしてくれる。
時にハウスクリーニングを頼んでまで、
私の部屋をキレイに維持し帰ってくるまで、
色々と私の代わりに、あれこれとしてくれる。
ありえないくらい、
人が良すぎる優しい人なんです。
退院した時すら、
病院まで迎えにきてくれ、
畳まで、新しくしてくれちゃうのである。
そんな、大家さんとの出会い。
さかのぼる事、
かあちゃんが亡くなった時期になる。
私がその時に、住んでいた部屋は、
新しくマンションが建つ予定になり、
退去命令が出てしまいました。
今まで、私は引っ越す時は、
隅から隅まで、掃除して生活感のない、
状態にしてから、引っ越すのが流儀であった。
それは、私と言う存在を消し去りたい。
いつもそう思って、これでもかと掃除するのだ。
感謝の気持ちも込めて、綺麗に掃除したい。
掃除が大好きなんですよ。
潔癖症ではないのだが、掃除していると、
なんだか、心が落ち着くと言うか…。
これは、
幼少期から続いている習慣であり、
掃除する事で、精神を落ち着かせて、
一つの安定剤みたいなものである。
つまり、潔癖症ではなく、依存症だな。
だが、この時は、
かあちゃんが亡くなって、
ショックすぎて、思考停止していた。
泣いてばかりで、情緒不安定で、
掃除と言う、安定剤は効かなくなっていた。
そんな追い討ちをかける様に、
住んでた部屋を追い出されるのである。
正直、憔悴しきっていた。
部屋探しする気力すらないのだ。
そこで、運命の出会いがある。
それが大家さんである。
大家さんは、民生委員をしていた。
そこで、突然に私の所にやってきて、
色々とお節介を焼いてくれていたのだ。
大家さんは、
よければうちのアパートに住まないか?
と提案してくるのである。
そこで私は、どうせ取り壊されるなら、
全て置いて、貴重品だけ持って身一つで、
いいやと、大家さんのアパートに移り住んだ。
大家さんは、身一つで来た私に、
めんどくさい手続きや、身の回りの事を、
せっせと、世話を焼いてくれるので、
次第に、私は大家さんに心を開いてしまう。
いつも、笑顔の大家さん。
こっちまで、笑顔になってしまう。
大家さんには、家族がいない。
結婚はしていたものの、大家さんの人柄が、
災いし、奥さんがよそで子供を作ってしまう。
だが、大家さんは、それでもいいと、
血のつながらない子を我が子として育てるのだ。
そして、十数年して、
奥さんと子供は、本当の父親であり、
不倫相手の所へと突然、出て行ってしまった。
後から、
記入済みの離婚届が送られてきた。
奥さんと子供の幸せを、
最優先だと思い、離婚届を役所に提出して、
それから、ずっと一人なのだと笑って言う。
そして、民生委員として、
人の役に立ちたいと、自分の幸せなんて、
そっちのけで、人助けをしまくるのだ。
キレイ事かも、しれないが、
誰かの役に立つ事が、幸せなのだ。
大家さんにとってそれが、安定剤であり、
誰かの役に立つ事、それが依存症なのかも。
似てる様な、似てない様な…。
そんな、大家さんとの仲は良好なのだ。
入院する前は、
目の前が畑で、日当たりが良かった。
だが退院すると、
残念な事に畑の持ち主が亡くなり、
大きい一軒家が立ち、日当たりが悪くなった。
大家さんは、優しく、
うちの部屋は日当たりがいいから、
物干し竿もあるし、洗濯物や布団でも、
いつでも、干してもいいよ。と言うのだ。
と、言うより半ば強引に勧めてくる。
一年も、部屋を使わないでいた為、
虫干しも兼ねて、家の物を大家さんの所に、
持っていっては、日に当てまくっている。
そんな作業をしていると、
大家さんが、休憩しなさい。と、
冷たいお茶と、お茶菓子を出してくれる。
休憩がてら、
茶を飲みながら、世間話をするのである。
私は、テレビも新聞も読まないし、見ない。
今現在の日本の現状を知らないのである。
大家さんは、そんな私に明るい情報だけ、
教えてくれるのだ。
恥ずかしながら、
流行病の事も、元首相の暗殺事件も、
ある人から聞くまで、知らなかったのである。
大家さんとは、平和ボケしまくって、
日本の四季の流れが早くなったねーとか、
だんだん夏が暑くて参ったねーとか、
でも、生きてるって感じていいねーと、
日本の現状なんて、どうでもよくなっていた。
多分だが、大家さんは、
あえて私に暗いニュースを、
教えないんだな…本当にお人好し過ぎる…。
就労支援に行っても、
まだまだ、心を開いてない為か、
そこまで世間話を談話する事がない。
私が、
そういう話題が嫌いだと思っているのだ。
私があえて、この世の中の事を、
知ろうとしないんだと、認識してるのだ。
まぁ…半分当たっているが…。
いや…ほぼ当たってる様な…。
私は、マスコミや新聞等の情報を、
一切、信用してない。
本当の事は、ごく一部であり、
ほとんどが、裏工作されて都合の良い様に、
一般の人達を、上手い事、洗脳していると、
本気で思ってしまっているのだ。
報道なんて、スポンサーありき。
都合が悪いのは、はぐらかす。
これでもかって、ぐらいゴリ押しするのは、
絶対に知られてはいけない何かがあるからだ。
ひねくれ者の私は、そう勝手に思ってしまう。
私は心を開いてしまうと、
信頼してしまい、大家さんの発する言動で、
私は精神的に左右されてしまうのである。
だから、大家さんがお人好しで良かった。
もちろん、病院の主治医やカウンセリングの、
先生も信頼しているし、生きるか死ぬかは、
この人達にかかっているので、信じるしかない。
それでも頑固者の私は、
人付き合いを、広めたいし、
まだまだ、私は伸びしろがあると思い込んで、
就労支援に行って、仕事を探すのである。
大家さんは、民生委員を引退している。
ふむふむ…民生委員…どうなんだ?
いや…ハードルが高いな…。
なんか、難しそうだし…ね…。
明日、お茶菓子持って、大家さんに、
会いに行こうかな…はぐらかしてきたら…。
もう、きっぱりあきらめよう!
そこまで、意固地ではないので、
ダメなら次に進むしか方法はないのです。
なんせ私、伸びしろ依存症なので。