強運。
私と言う人間は、
ひねくれ者で、不器用で、
とてつもなく厄介なヤツである。
そんな、私なのだが、
かあちゃんゆずりの部分と言うか、
かあちゃんの影響が強く私を作っている。
かあちゃんは、
ケンカばかりするし、
酒に溺れて、暴れまくるのが日常茶飯。
耳の聞こえないかあちゃんは、
言葉が出てこない代わり、手が先に出て、
暴力を駆使して、私に手加減なしに、
当たり散らす…その時はいつも殺されると、
思うぐらい、それは派手に痛めつける。
これは、私には出来ない。
これでも、平和主義者で、
出来れば穏便にすましたい。
お酒は、たしなむ程度にしときたい。
暴力は怖くて出来ないし、
モノに当たり散らす事もない。
そもそも…あまりイライラしないのだ。
怒りの感情はあるが、イライラする前に、
ひねくれ者の私は、一気に冷めてしまうのだ。
あーやってらんねー。
はいはい、そーですか。と全てが嫌になるだけ。
そんな、かあちゃんは、
私に暴力を振るったら、ひどく落ち込むのだ。
こんな、かあちゃんでごめんよ…。
あたいは本当にダメな人間なんだ…。
お前には、苦労ばかりかけて情けないよ…。
いつも、そう言って、泣くのだ。
私は、違うよ!
かあちゃんはダメなんかじゃない!
オイラはかあちゃんが大好きだもん!
それより、かあちゃん!
何かあったらオイラを頼って!
オイラに出来る事があれば、全力で、
かあちゃんの味方になってやる!
かあちゃんには、オイラがいるよ!
そう、かあちゃんの目を見て伝えるのだ。
かあちゃんは、泣きながら、
お前は優しいね…。
どうして、そんなにやさしいんだい?
お前が優しい子で、かあちゃんは嬉しいよ。
こんな、かあちゃんの子供で、嫌だろ?
よその子になりたいって思うだろうよ…。
なおも、かあちゃんは泣いて落ち込む。
私は、強くかあちゃんの目を見て、
かあちゃん!オイラが優しいのは、
かあちゃんの子供だからだ!
かあちゃんが、
オイラをそう育ててくれたんだよ!
かあちゃんは、すごく優しいもん!
だから、ね、かあちゃんは何にも悪くない!
かあちゃんは、
オイラの自慢のかあちゃんだよ!
あのね、オイラは、
かあちゃんの子どもに、なりたくて、
かあちゃんの腹ん中を選んだんだ!
だから、
よそのかあちゃんじゃダメなんだよ…。
そう言うと、かあちゃんは、
ありがとね…あたいも、お前の母親になれて、
本当に、嬉しくて、大好きなんだ…。
あたいを選んで、産まれてきてくれて、
本当に…ありがとうね…。
そう言うと、
頭をくしゃくしゃと撫でてくれる。
そして、
私の大好きな笑顔になってくれるのだ。
大人になった、私は人間関係を拗らせる。
かあちゃんゆずりの不器用で、ひねくれ者の、
私はなかなかうまく、人と関わる事が出来ない。
自己嫌悪に、おちいり殻に閉じこもる。
そんな時、いつも思うのが、
かあちゃんの苦労や困難に比べたら、
私なんて、まだまだじゃないか。
かあちゃんの優しさのおかげで、
今の私がいるのだ。
どんなに、辛くてもしんどくても、
人間関係を拗らせても、かあちゃんは、
私に愛情を持って育ててくれていた。
だからこそ、
もう天国にいった、
かあちゃんを悲しませてたまるかと、
うぉー!と自分を奮起させるのである。
かあちゃんの子供として、
産まれて、育てられて、
たくさんのかけがえのない宝物をもらった。
そうだ、私はとても幸せ者じゃないか。
なかなか、手に入らない宝物だぞ!
かあちゃんよ。
日々、感謝してます。
かあちゃんの息子で、本当に…良かった。
かあちゃんを選んだ、私はかなりの強運だな。