アルモンデの暮らし
2022年1月18日 くまもとむらづくり人材育成塾にて講演した内容を画像と一緒に記載しています。
私のプロフィールです。
昭和33年生まれ、来月2月で64歳になります。
昭和56年 熊本大学工学部卒
卒業後、機械メーカー、電機メーカー、つくばの環境研究所、財団法人、自治体のまちづくりセンターの事務局長など全国を転々として多様な仕事を経験してきました。
そして、55歳で脱サラして農家となり、現在 山鹿市で自然農を中心とした田舎暮らしをしながら、持続可能な地域社会を模索しています。
自然農の出会いと移住のきっかけは 東日本大震災とその後の原発事故でした。
私の妻の「この国と社会システム なんか 変じゃない?」の疑問から田舎暮らしへ舵を切りました。
つまり、色々調べていくうちに 世界的にも「気候変動」や「貧困問題」「格差社会」また「行き過ぎた資本主義」など、グローバル化の限界が見えてきて、このままだと「持続可能ではない」ということに気がつきました。
それでは、どうするか?グローバル化の反対はローカル化である。日本には、「豊かな自然」があり、よき「伝統文化」があり、日本人の「地域の信仰」があり、地元ならではの「顔が見える経済」がある。
そこで→多様性を許容する 日本文化に変えればいいのではないか?地域社会の作られ方も多様でよい。それが持続可能な社会をつくる。という結論に至りました。
そこで、2014年に脱サラし移住を決断し、アルモンデの暮らしを始めました。
アルモンデの暮らしとは=身の回りにあるもんで暮らす という意味です。
アルモンデの場所は 山鹿市の菊鹿町の標高330mの中山間地にあります。
集落戸数7戸 高齢化率 60% 基幹産業は農業です。
この写真が自宅(古民家の母屋、蔵と納屋)です。と自宅前の田んぼの様子です。
アルモンデの暮らしの目指すものは、身の回りにあるもの、つまり「自然の条件」や「地域資源」を上手に使わせてもらいながら、「環境に負荷をなるべくかけない」暮らしをすること。そして、この限界集落が持続可能な集落になり、それを見本に人々のライフスタイルが持続可能へと変化していくこと。
そして、それが日本の中山間地域の良きモデルとなり、全国身近にエコビレッジが出来ていくこと。
また、私は移住者なので、よそものとしての「心がけ」をもって暮らしています。
つまり、そこにある、文化・歴史や風土を尊重し、地域に溶け込み(寄合には必ず出席し、役は引き受ける)。そこの自然は大切に使い、破壊しない、環境を汚染しない。残すものと変えていくものを丁寧に実践する。
また、私の田舎暮らしのスタイルは 百姓 + 半農半X・・
必要なものは自分で作るを基本とし、食料を自給しながら得意な仕事でお金を稼ぐ という暮らしをしてます。
ところで、持続可能なむらづくりの3要素とは何か?私はFECであると思います。それは フード(F)、エネルギー(E)、ケア(C)です。
これは、昨年お亡くなりになりました、経済評論家・内橋克人さんが提唱してきた、「人と人が共生する経済」FEC自給圏を参考にしています。内橋さんはFECで地域が自立して暮らすことを提案していました。
ここから、身の回りにあるもんで暮らす アルモンデの暮らしの具体的活動内容について発表します。
Fは、自然農で食をつくる、Eは炭焼きでエネルギーを作る、Cはカフェでつながりを、森林で癒しを作る活動をしています。
そして、それを伝えるために、まず「体験する」そして「感じて、考える」さらに「つながっていく」最後に「伝える(分かち合う)という流れを考えて活動しています。
自然農とは、畑を耕さないで、肥料や農薬を用いないで、草や虫を敵にしないで作物をつくる農のあり方で、人と自然が共生する生き方でもあります。
これは、奈良県の川口由一さんが実践する農法で私も2年半教わることで、自給自足の移住に踏み出せました。
大型機械も使わなくてよく、鍬とスコップがあれば、田んぼも作れます。田んぼは約8畝あります。ここで、耕さず、肥料農薬用いず、7年間お米を作り続けています。
畑は約一反を作り、安心かつ美味しい野菜を自給しています。
ここからは、自然農の農的体験の内容です。
これは、秋の栗拾いと栗ご飯づくりの体験会の一コマです。栗畑は耕作放棄の栗を管理しています。子供たちが多いのも嬉しいですね。
お米づくりの体験会の様子です。自然農の田植えは代掻きをしないので、このように畑状の畝に苗を1本づつ手植えして、後から水を入れます。秋には、稲刈り、掛け干しの体験をして、最後に足踏み脱穀機での脱穀の体験をします。
自然農の暮らしの勉強会を「結熊(ゆうゆう)自然農園 学びの場」として月一回のペースで行っています。
獣害対策の柵のつくり方、種の蒔き方から収穫の仕方、田んぼのつくり方などを学びます。また、しめ縄づくりなども行いました。
他に自然に寄り添う暮らしの体験としては、柿渋づくりを行い、木材塗装や柿渋染めを行いました。また、畑で作ったヘチマを使って、ヘチマタワシを作りプラスチックフリーを実践しています。また、集落の農家さんからシイタケの菌打ちを教わったりもしました。
!!農村は宝の山です。無いものねだりより、あるもの探しをして、暮らしを豊かにしましょう!!!(提案です)
アルモンデでは、環境に負荷を出来るだけ掛けない暮らしをしようということで、料理は基本的に薪ストーブと七輪で調理をしています。そのため「炭」が重要なエネルギー源となります。
そこで、「炭焼きをしたい!」と集落の人に言い続けたら、移住して3年して「うちにあるばい!」ということになり、30年ぶりに炭焼き窯を復活させることになりました。4年前のことです。 最初は、集落の方たちもこのように手伝ってくれました。移住者が信頼を得るには時間がかかります。
これが30年ぶりに復活した炭窯です。集落の棚田の中腹に横穴を掘って作られていました。
炭材は直径10cm前後の樫の木を長さ60~70cmにカットして窯に入れます。軽トラ1.5台分くらいが炭窯に入ります。
火入れをしてから、約2日間煙の状況を見ていきます。最初は白い煙が出て(左写真)次第に透明になっていき、この程度の透明度(右写真)になったところで、完全に窯を閉じて蒸し焼きにします。
そして、約1週間後に窯を開けて炭だしをします。
樫炭は火力もあり火持ちも良くいい炭です。
そうしているうちに、炭焼きしたいとの声があり、炭焼きのワークショップを始めました。年3回のペースで行ってます。
炭での生活をしたい希望者が増えている感じがします。
また、炭焼きは地域の環境整備にもなります。林道の整備だったり、民家の敷地にある大きくなりすぎた木を伐って欲しいとの要望ありで、集落の伐採整備のボランティアで炭材を確保してます。
古民家再生は百姓の仕事の大きなテーマです。
私の自宅は、古民家をDIYで手直ししながら暮らしています。これは、福岡の古民家再生の建築家のオカムラさんに手伝ってもらいながらの作業です。この古民家も最初は新建材をベタベタ張り付けた昭和の家になっていました。
そこで、天井を剥がし、床を剥がし、壁を取っ払って、元の古民家に戻しました。
また、内装も天然素材を使い、杉板の床を張ったり、建具を作ったり、漆喰塗をして整えました。
さらには、次に出てきます蔵をリノベーションしてカフェを作ったりしました。
Care=ケアは介護、福祉、医療、教育の分野で使われますが、社会生活をしていく上での、こころのケア、身体のケアが重要だと思います。
そこで、カフェ (café) アルモンデ では、
ケアの活動として、カフェがつながりをつくる。繋がりがこころを作る、こころが仲間を作る。仲間が増えると幸せが増える。幸せが増えるとケアをしたくなる。この好循環を目指しています。
最初は、自然農の学びの場の集まりの場でした、そこで自然の中で心と身体をケアしていき、田舎暮らしを愛する仲間が出来てきました。
そこで、定期的に仲間づくりが出来る場所として、昨年(2021年)4月にカフェとしてオープンしました。
今では、自然と人、人と人のつながりと調和を感じられるカフェを目指しています。
初めて会った知らない人通しがつながったり、新しい出会いがあったり、時には地域の交流の場となり新しい活動が始まったりと、カフェは新しい文化を作る場所になる可能性を秘めています。
ここで重要なキーワードは「つながりと分かち合い」であると実感します。
そうこうしてくるうちに、集落の方から放棄山林を購入しないかという話がきまして、ケアの活動の展開として、森の活動を始める事になりました。
活動を始めると、心と体の健康、自然の健康、生きもの(動物)の健康のすべてを守りたい、いわゆるワンヘルスの考えが出てきて、さらには森と街と海はつながっており一体であるという発想も出てきました。
つまり、森の活動はすべてのいのちの健康とつながっており、町に住む人も森につながっている。
山林はクヌギ山と杉山がそれぞれ3反づつあります。昨年の春から月1回のペースで整備を始めています。下草狩り、間伐、シイタケの原木づくり、たき火小屋作り、道づくりとまだまだ途中です。
将来的には、100年つづく持続可能な森に、生物多様性のある森にしたい。また、森の幼稚園やサバイバルキャンプ、ソロキャンプも出来るようにしたい、シイタケやカブトムシのいる森や鳥や動物のいる癒しの森にしたいと・・・夢は広がります。
最後に、むらづくりについて、これからの経済についての展開の話を少し。
内橋克人さんは「人と人が共生する経済」を提唱しました、アルモンデでは「人と人と自然が共生する経済」(つながりと分かち合い)の経済を提案します。
それは、ローカル経済への道 「農村 体感型 観光」経済 というもの
カフェ、民泊、体験観光 →街中観光地と中山間地の連携 → 地域資源の有効活用 の流れと展開が考えられます。
また、FEC自給圏を目指して、SGDsの考え方を活かして進めることが重要です。
この発想の原点は、2つあります。一つは2年前のこの、熊本むらづくり塾での大分安心院の民泊体験です。80歳のお婆ちゃんが営む民泊で普通の田舎暮らしを体験したことで、ローカルな地域活動の大切さを知りました。
また、山鹿市の豊前街道でのお祭りのイベント出店でまちなか観光地と周辺の田舎地域が連携出来ることを知りました。
ここまで「つながりからつながり」が生まれていくことをお話ししました。
このことからむらづくりは1回きりのイベントではなく「プロセス」であり、永遠に続く活動であると思います。
これからもアルモンデは、持続可能なむらづくりの3要素を充実させながら、
身の回りにあるもんで暮らす暮らし方を実践しながら 「体験する」「感じて考える」「つながる」「伝え、分かち合う」の循環を回しながら、アルモンデの暮らしを今後も続けていこうと思います。
ご清聴ありがとうございました。ホームページやFBもチェックしてもらえると嬉しいです。
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