シノプスこそが流通業DXのトップランナー【35周年社長インタビュー】
株式会社シノプスは、1987年10月に株式会社リンクとして創業してからおかげさまで35年を迎えることができました。今回は代表取締役の南谷洋志の周年記念インタビューをお届けします。
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コロナを契機にクラウドサービスを開始
――まずは35周年を迎えた今のお気持ちをお聞かせください
まず、無事35周年を迎えることができたのは、多くの方々からのご愛顧とご支援の賜物です。心より感謝申しあげます。
ある統計によると、企業設立1年後の生存率は40%。5年後の生存率は15%。10年以上は6%。20年は 0.3 %。そして、30年以上生き残れる確率はなんと・・・0.02 %と言われています。5年前、この0.02%に残れた喜びと支えてくださった皆様への感謝の気持ちをユーザーの皆様にお話しさせていただいたことをよく覚えています。
2018年12月25日には株式上場も果たしました。35年間、無事に事業を継続できたこと、そして上場できたことはユーザー・パートナーの皆様や社員をはじめとする当社に関わってくださっているすべての方々のご支援があったからこそと思うと、感謝に堪えません。
――設立30年からの5年間は、パッケージ製品からクラウドサービスへの移行がありました
パッケージからクラウドへの移行は10年前からずっと実現したいと考えていました。しかし、パッケージからSaaS(Software as a Service)という新しいビジネスモデルへの転換は、当時、売上全体の半分を占めていたパッケージ売上が大幅に下がるため、一時的に業績が落ち込むことが想定されました。株式を上場したこともあり、売上は落とせないというプレッシャーから中々踏み切れずにいました。
そんな中、2020年には新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣などにより、県を超えての移動が制限され、営業活動が停滞しました。商談の機会が減ったわけですので、新しい案件も減っていきました。そこで、「どの道売上が下がってしまうのであれば、今しかない」と考え、2020年の3~4月頃、クラウドサービスの開発をスタートさせました。社員が一丸となって推進してくれたこともあり、夏から秋ごろには少しずつ開発が終わり、SaaSへの移行が始まりました。今では全国2,209店舗で7,405アカウントが稼働しています。
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需要予測が難しい「惣菜」カテゴリーへの進出
――sinops-CLOUDから「惣菜」カテゴリーへの展開も始まりました
2020年に複数のユーザーの皆様より「惣菜の需要予測も開発してほしい」とのご要望をいただきました。コロナの感染拡大により、外出自粛の要請があったりと、消費者の方がスーパーマーケットなどに買い物へ出かける頻度が減りました。そのため、惣菜よりも一定期間保存の効く冷凍食品などがよく売れるようになり、以前に比べ惣菜が売れ残るようになりました。
惣菜は基本的にその日に売り切らなければならない賞味期限が非常に短いカテゴリーです。賞味期限が短ければ短いほど、需要予測は難しくなります。「統計・データでみるスーパーマーケット」によると、惣菜のロス率は最も高く10.3%です。惣菜の商品管理の難しさが垣間見えます。
その日に売り切らなければならないため、夕方など閉店時間が近づくと、惣菜売り場では値引きを行います。スーパーマーケットでは惣菜の売上は全体の2割程度と大きいです。さらに、利益率も高いため、値引き・廃棄ロスは避けたいというお声が多いです。
そこで、惣菜の自動発注サービス「sinops-CLOUD 惣菜」だけでなく、最適な値引きタイミングと値引き率をAIで算出する「sinops-CLOUD AI値引」も開発しました。
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――惣菜の開発には多くのユーザー様にご協力いただきました
当社は製品開発をする際、お客様の実際の現場で実証実験をさせていただくことが多いです。惣菜は、東京都環境局資源循環推進部計画課が実施した「ICT 等を活⽤した⾷品ロス削減事業」に採択され、東急ストア様で実証実験をさせていただきました。東急ストアさまでは実証実験を行った店舗の平均で食品廃棄330kg削減、売上8ポイントアップ、ロス金額10ポイント改善(月/店舗)の効果が得られました。
こうしたユーザーの皆様のご協力もあり、昨年(2022年)製品化したAI値引は、2022年12月現在で、7社のユーザー様に導入いただいております(PoC実施中を含む)。
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コロナ禍でDXの重要性が再認識
――コロナ禍は各所でDX(デジタル化)が進みました
新型コロナウイルスの感染拡大は、流通業のデジタル化を確実に後押ししました。クラウド(仮想サーバー)の浸透により、初期コストを抑えられるようになったのもデジタル化を加速させた要因の一つでしょう。DXは不可逆的で、後戻りすることはありません。これは流通業だけに限った話ではありませんが、これからデジタル化を強く推進することが、企業のさらなる成長につながります。数年先の会社のありたい姿、あるべき姿を想像し、そのための戦略を立て、スピード感をもってPDCAを回せるか、これが重要です。
――「sinops」は小売業のデジタル化を後押しする製品です。小売業がDXを成功させるカギは何でしょうか?
正しいデータを収集することと、そのデータをどう活用するかです。当社の製品「sinops」は、リアルタイムの在庫数を起点に販売実績や天候、売価といったさまざまなデータを掛け合わせることで需要予測を行っています。しかし、精度の高いデータを収集できていなければ、精度の高い需要予測を行うことはできません。精度の高いデータをリアルタイムに収集する、これがDXを成功させるカギです。
――需要予測型の自動発注サービス以外にも新しいサービスへと広がりをみせています
データを活用した新しい取り組みを推進するのが、DXの醍醐味です。前述のAI値引をはじめ、新しいアイデアが社内でどんどん生まれており、シノプスこそが流通業のDXを推進するトップランナー企業だと自負しています。AI値引はラベルプリンタを販売するサトーホールディングス様と協業し、値引き率とタイミングの算出からラベルの発行までをワンストップで提案しています。社内だけではなく、パートナーの皆様とも協力し、今後も新しいアイデアを生み出していきたいと考えています。
DCM構想でサプライチェーンの最適化を実現
――向こう5年の展望を教えてください
DCM構想による食品サプライチェーンの最適化の実現です。20年以上前からずっと提唱し続けていることなのですが、日本でのサプライチェーンの最適化はデマンド・チェーン・マネジメント(DCM)でなければ成功しません。需要情報を卸売業やメーカーにつなげることで、物流の最適化、生産の最適化を実現できると、私は考えています。
食品サプライチェーンの需要情報は人々の胃袋や冷蔵庫の中にあります。しかし、そこまでは中々追うことができませんので、食品スーパーマーケットの需要予測データが起点であると考えます。そこで、sinopsで算出したスーパー各店舗の高精度な需要予測データを卸売業やメーカーと共有するのが、DCM構想です。このDCM構想の動きを加速させるため、2022年1月に伊藤忠商事株式会社と業務提携契約を締結しました。
2022年は「DCM元年」と捉え、さまざまな下準備を進めてきました。今年2023年はDCM構想が本格的に動き出す年になるでしょう。食品ロス削減といったSDGsに向けた取り組みに注力する企業が増えるなか、足元では「2024年問題」や燃料費高騰といった物流問題のほか、電気代の上り幅も見過ごせない状況です。川下から川上へとデータを連携していくことで、こうしたさまざまな課題を解決できます。
社会課題解決に寄与するITソリューションを提供しつづけることが私たちシノプスの使命だと捉えています。そして、ユーザーの皆様に「sinopsを導入して良かった」「今後も使い続けたい」と思っていただけるように、需要予測の高度化のほか、新しいソリューションの開発力・提案力強化に注力していきます。