十年ひと昔を思う
十年ひと昔という。
10年前を振り返れば、まるで昨日のことのようだ。しかし10年先を思うとずいぶんと先のことに思えてくる。退職まで残り10年と思ったときには、長く感じ、その間に起こるだろう様々な出来事を想像するだけで気持ちが圧倒された。あと残り5年になったときに急に気が楽になったことを覚えている。私より後に退職を迎える友人に「あと5年になると気が楽になるよ」と言ったら、実際に5年になったときに気持ちが軽くなったと言われた。
それにしても、やはり10年先は長い。ある銀行員から窓口で10年定期は長いですからと言われて3年定期にしたことがある。対応がとても誠実な人だったが、今思うと一層そう思えてくる。
先は長い10年も振り返れば短い。10年・・・生まれてきた子は小学校の中学年、小学校の新入生は高校生、少年は成人を迎える。ずっと子どもたちの時間の密度は濃いなと思っていた。だが大人たちの時間も薄くはない。
東日本大震災の日から今日で13年になる。いつの間にか10年を過ぎていた。今日『花は咲く』の演奏を聴いた。
10年の間によく旅行に行った。その年年の暦には旅先の思い出が詰まっている。リフォームのために文京区後楽園近くに仮住まいした。初めての山の手線内の生活だった。10年の間に元気だった母はいなくなった。学生だったわが子は結婚して一男を授かった。私たち夫婦はジージバーバになった。
変わらない日常の中でも、積もり積もれば変化がある。静かな川の流れのようだ。「逝く者はかくの如きか、昼夜をおかず」長いような短いような10年、振り返れば何かしらが変わっている。変わらないのは自分の心持ちだけのようだ。