もりそばを食べての雑感
蕎麦屋に入り、ざるそばを注文した。目の前に正方形の蒸籠に盛られたざるそば、そば猪口、つゆの入った徳利、そば湯が現れた。つゆに点けてズズズーとすする最初のひと口が特に美味しい。そばを食べ終わり、いろいろな想念が湧いてきた。
容器
冷たい蕎麦には、もり、おおもり、ざるがある。その容器だが、子どもの頃から、もりは長方形、おおもりは正方形、ざるは円形だと思ってきた。今日食べた蕎麦屋では、同じ正方形だった。おおざるの容器は記憶がない。円形なのだろうか。そもそも、ざるそば自体おおもり位の量はある。ざるともりでは、本来つゆが違うと聞いたことがあるが、実際につゆが違う蕎麦屋に出合ったことがない。
薬味ねぎ
子どもころによく入った蕎麦屋のキザミねぎがよくこんなに薄く切れるものかと感心する位に薄かった。ただし量は少なかった。今日入った蕎麦屋のキザミねぎも同じように薄かったが、量はあった。ネギの量はどの程度が妥当なのだろう。余りに多いとつゆにネギがいっぱいになり、ネギを食べているようになる。薬味なので、多くなくてもよいのだろう。
そばつゆ
そばつゆは、かつお出汁が効いているのは美味しい。甘味が強いつゆもあるが、子どもの頃の蕎麦屋のつゆは甘味が強かったので、これが身について好みになっているが、今日入った蕎麦屋は甘味は強くなく、かつお出汁が効いて美味しかった。つゆは濃い目で少ないより、適度の濃さで多目が好きだ。そば湯のためにも、余裕がほしい。
わさび
わさびの使い方も人それぞれ違うようだ。つゆにわさびを溶かす人もいる。昔、「そばの上にわさびを乗せて食べると旨いよ」と、そば職人から教わったが、確かに美味かった。わさびは刺し身に乗せてから醤油をつけると旨い。わさびは食材に乗せるとその味を引き立てる効果があるようだ。
そば湯
そば湯は最後に飲むが、ストレートで飲むことにしている。塩からくないと、そばを塩でつないでないのだと安心する。そばつゆを入れてしまうと塩の有無がわからなくなる。ストレートがもの足りなくなったら、少しつゆを垂らすのがよい。そば湯が塩からいのは、どうもいただけない。
食べ方
今日のそばは、箸で持ち上げると頭上まで上がった。これは長い。そば猪口に入れて、ズズズーとすする良い音がした。やはり、そばは音がする食べ方が美味しい。音を出すことを善しとするのは、もりそばと茶道の抹茶か。こちらも最後にズズズとすする。
そばをつゆにちょぴりつけて食べる蕎麦通の食べ方は、どうすればよいのか謎である。そばを持ち上げて、下の方を猪口に少し入れて食べると最後につゆがついたそばが口に入り、不味い。濃いから薄いへの変化が美味いが、薄いから濃いへの変化は不味い。箸で摘んだ先をつゆにつけると、そばが蒸籠の上をはってしまい、ズズズーと食べられない。蕎麦通の食べ方は、有り得ないと思いたい。
固さ
歯医者に通っていて、仮歯にしていた頃、固いものが食べられないので、昼食はそばにしていると歯医者に言ったら、そばは固いですと予想外の答えが返ってきた。今日のそばは、少し固めだった。スパゲティでいう中央に硬さを残すアルデンテのような高級品だったが、美味しかった。玄そばで栄養価が高そうだ。美味しいそばは固いのかと、歯医者の言葉を思い出した。
やはり、そばは美味しい。日本人に生まれてよかったと思える瞬間は、自然の中でおにぎりを食べた時と蕎麦屋でそばを食べた時かと思える。