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牧野先生からの絵はがき

記録された文字は、時を超えて過去を現在に呼び起こす。

実家の片付けをしていたら、小学校の時の担任だった牧野先生から頂いた絵はがきが出てきた。

「しゅんすけさん、お元気ですか」で始まっていた。数十年を経た絵はがきだが、まるで初めて読むように新鮮な感覚だった。

― 先生はことしはとても元気で長い旅行 
にも出かけました。この絵はがきはその時のものです。日本海の色はとてもきれいで青くすんでいました ―

絵はがきの写真を見ると天の橋立を旅行したようだ。消印は「36.8.2船橋」なので、7月下旬の数日間の旅行だったのだろう。

― しゅんすけさんもからだをじょうぶにして大きくなったら旅をしてみてください。先生もこれからあちらこちら見学していきたいと思っています―

そういえば、小学校の頃はよく熱を出して学校を休んでいた。そんな私を気遣いつつも、旅の楽しさを伝えてくれている。幸い私は、人並みに健康になれて、旅をすることができた。

― もうすぐ二学期ですね。しっかり勉強してくださいね。さようなら ―

それから二学期になって、まもなく秋が来た。だいぶ涼しくなった日に、牧野先生がこう言われた。
「今日の気温は18度です。寒くも暑くもない丁度よい気温ですね。18度は一番頭の働きがよくなります」

そして、こうも言われた。
「先生もまたまだ分からないことがいっぱいあります。もっと勉強しなくてはいけません。一緒に勉強しましょう」

つぶらな目をした丸顔の穏やかな若い女の先生だった。古い絵はがきを見て、数十年ぶりに牧野先生に再会した気持ちになった。

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