明治34年の年賀状 日本橋田所町から神田区西小川町に
祖母は明治18年に日本橋田所町で田中家の三女として生まれた。父親は田中平吉といい、大工職人であった。高等小学校を卒業してから、神田区西小川町1-3の佐々木家(佐々木慎思郎)の元に奉公に出た。これは、祖母16歳の明治34年正月に同じく田所町で育った幼なじみの松本こと子から届いた年賀状である。
新年の寿千里同風-遠く離れた千里の彼方まで同じように新年のお目出度い風が吹いているという祝詞ーから始まっているのに趣を感じる。すでに年賀ハガキが広まりつつあったが、祖母たちは、筆書きの手紙の交換を楽しみにしていたようである。普段は会えなくなった友だち同士だが、宿下がりの時に会うことを楽しみにしていたことを示す手紙も別に残っている。
【宛先】
神田区西小川町一ノ三
佐々木様 御内ニテ
田中はる子さま 御許へ
【差出】
明治三十四年一月七日
田處町
松本こと子
【本文】
新年の御寿 千里同風 御目出度申し納奉り候
昨年中は一方ならぬ御厚情に預り ありがたく御礼申上げ奉り候
尚本年も相変らず御まじはりの程 伏て願上奉り候 拝み候や
あなたさま始め御姉上さまにも いつもながら御さえざえしく渉らせられ恐喜の至りにぞんじ奉り候
次に私事始め一同無事にくらし居り候まま憚りながら御安心下され度願上げ奉り候
末ながら かつえさまえ よろしく御つたへ下され度ねんじ入奉り候
先は年始の御見舞まで申上げ奉り候
あらあらかしこ
明治三十四年一月七日 こと子
はる子さま 御もとえ