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秋来ぬと目にはさやかに風の音

立秋(8月7日)を過ぎても、暑い日が続いた。立秋から一層暑くなったようだ。先人たちが、秋立ちぬと言ったからには、どこかには秋らしいものがあるのではないかと季節の移り変わりに神経を研ぎ澄ませてみたが、自分の錆びた神経では秋らしきものは、なかなか見つからない。

8月も半ば過ぎだったろうか、夕刻にやや暖かさのない風を感じたが、それを無理に秋風だと思ったのは、心理学でいう何効果と言うのだろうか。

歩きながら「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる」という上代の和歌が頭に浮かんだ。十代で乗った観光バスのガイドの語るこの和歌が印象的で、時季を得ていたのだろう。しっかりと脳裏に焼きついた。この和歌の作者は、しばらくは繊細な感覚を持った平安の女性だと思っていたが、後に藤原敏行という平安前期の貴族だと知った。この平安貴族のように風の音で秋を知りたいという欲望が例年の如く今年も頭をもたげた。

だから、都合よく秋風と思おうとしたのかも知れない。立秋を過ぎたのだから、どこかに秋の片鱗があるはずだという思いと、今年の猛暑に早く秋らしきものを感じて、少しでも秋に近づきたいという思いがあったからだろう。

それでもこの数日は、確かに夕刻の風は涼しくなった。見上げれば、青空に浮かぶ雲が秋らしい形をしていて、空が高くなった。夕闇迫れば、虫の音が聞こえる。残暑厳しいが、はっきりと秋は近づいている。夏至から2ヶ月が経った。日はずいぶんと短くなった。

【写真は、2024年8月24日16:43の空】

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