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過去のあの瞬間、確かに生きていた。

過去の私が、その時その瞬間、まだ私の記憶の中で呼吸をしていると感じることがある。

やっと採用された障害者雇用でのパート勤務。まずは、お掃除から始めてみようということで、利用者さんの一部屋一部屋に出向き、クイックルワイパーをかける。腰が痛くなってくる。休みがどんどん取れなくて体が悲鳴を上げてくる。

ああ、いけない。今は過去の自分ではないのだった。自分の部屋の掃除をしているだけで思い出して、胃が痛くなって掃除を中断せざるを得なくなってしまった。
これは、捨てていい過去。私の頭からホウキを取り出して嫌な気持ちのホコリをサッサッと追い払う。
何度思い出しても、何度も、何度も、追い払う。私はもう此処にはいないのだから、それができる。

19歳の私は、大学に入学したてで一限から始まる必修科目と、初めての一人暮らしでの慣れない家事と、合わない人付き合いに翻弄されていた。
その中でも、部活は忙しかった。確かに私の体力では続けることは難しかった。でも、先輩方は優しくて面白くて、人間関係には恵まれすぎていたから、あの頃の私は先輩と話す時間がとても楽しかった。
結局膝を痛めて、色んなことが重なり、精神的にも追い詰められていた私は部活を辞めてしまったけれど、確かにそこで過去の私はずっと笑顔で過ごしている。生きている。

これは大事な思い出だな。蓋を開けたら綺麗な音が鳴るオルゴールの宝石箱にしまっておこう。
いつ思い出しても、どんなに辛いことが一緒に引き出されても、オルゴールに癒されて幸せな思い出に変わるだろう。 

その部活の思い出が、先輩たちが忘れられなくて仕方なくなり、特に関わりの深かった先輩に連絡をとってみた。
あの頃から7年、正直繋がっている自信は無かったけれど、過去のあの頃が思い出としてずっと生きていたから、あの記憶を過去だけに収めたくなかった。
今も、先輩と楽しく笑って話したかった。
そしたら、なんと返信が来たのだ。
良かった、私のこのキラキラした思い出たちは現在に塗り替えられて、さらに煌めきを放つ。
私はこの瞬間が好きだ。確かに、過去の思い出たちを振り返って、楽しかった気持ちに浸るのも楽しい。
でも、それよりもずっと幸せなのは、過去ではなく今が幸せなこと。
私の心の中にあるオルゴールの宝石箱は、まだ沢山あるから、いつでも開いて幸せな気持ちに私をいざなってくれるだろう。

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深海 もみ
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