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さくら舞い散る道の上でYou deserve itチャントが鳴り止まない
金曜の仕事帰りに見ようかと思ったけど、翌日すっきりした頭で観に行って良かった。キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド。ものすごいテンポの良さで陰謀と緊迫した国際情勢が描かれるんだもん。
さて、とりあえずBrave new worldってなんのこっちゃってなりますよね。とりあえず。おそらくオルダス・ハクスリーの小説Brave new worldから取ってるんでしょう。邦題は「素晴らしい新世界」でもタイトルは皮肉であって内容はディストピア小説です。
MCUの世界が今どうなってるかはドラマのファルコン&ウィンターソルジャーでサムがキャプテン・アメリカを継ぐ物語を通して描かれてましたが、なかなか大変なことになってて世界はまた訪れるかもしれない異星人や異世界人の侵略に備えて国を建て直さないといけないような状況で彼らが目指すものが「素晴らしい新世界」なんでしょうかね。
まあ、案の定、それマズイですよって話が今回の映画。
ちなみにファルコン&ウィンターソルジャーについては超長文を書いているので、話よくわかってない人は是非読んでほしい。
しかし、この映画、おもっくそ日本をフューチャーしてるんだけどおそらくサディアス・ロスがこだわるワシントンの桜が日本との友好関係の象徴ってことで「ほんとは俺らマブだからな」ってことなんですかね。そこに関わってたのが当時東京市長の尾崎行雄さんらしく、そこから今回の映画に出てくる日本の総理がオザキさんだったという。まあでも、あんな好戦的な人日本の総理大臣にならんですよ。
https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202104/202104_04_jp.html
日米開戦!日米開戦じゃないか!
そういうとこも含めてトム・クランシーファンの同士はきっと「相変わらずあいつら日本を分かってないんか」って力が抜けたことでしょう。日本の関わってくるシーンせっかく白熱しててもどこもかしこもツッコミどころだらけで集中できなくなるのよ。
ご興味のある方は是非一読頂きたいトム・クランシー作の「日米開戦」という小説がありまして。俺はこのキャプテン・アメリカBNWという映画はもしかしたらこの小説の落とし子かもしれない説を唱えたい。
まあ、タイトル通り日本とアメリカが戦争します。長らく米ソ冷戦下のポリティカル・サスペンスを描いてきたジャック・ライアンシリーズですが現実世界でソ連が崩壊しちゃって困ったクランシー先生はなぜか日本を仮想敵国にしちゃったんですね。まあ貿易摩擦から日本の財界が政界を操ってってのはアメリカ人視点ではわからんこともないんだろうけど、まあ無理がありますよねっていう。でも、この小説の終盤で議会議事堂に旅客機が突っ込むシーンがあって911の時にまたクランシーが予言的中させた!って話題になりました。なんだかんだ安全保障に通じてる人なんでこないだも旅客機とヘリがぶつかるなんてこともあったけどワシントンの空港とホワイトハウスや議会議事堂は位置関係的にやばいっていうのは結構言われてましてね。話がぶっ逸れた。
しかし、日米が戦う以外でもこの映画で大統領サディアス・ロスを演じるのは以前演じていたウィリアム・ハートが亡くなったことで役者が代わるんだけど何の因果かハリソン・フォード。
クランシーのジャック・ライアンシリーズっていうのは主人公ジャック・ライアンが最初はCIAの情報分析官として、作品ごとに出世したりしていくんですが最初の「レッドオクトーバーを追え」は映画も大ヒットしたので有名だと思うけど、その時はアレック・ボールドウィンがジャック役で次の「パトリオット・ゲーム」と「今そこにある危機」ではハリソン・フォードが演じてるんですね。
ちなみに、その後はベンアフレックが演じたりリブートしたりなんてしてますが、正直どの作品も映画だと原作の1/5くらいしか描けてないので小説で読んだ方が面白いです。
そして前述の日米開戦のラストで国家安全保障問題大統領補佐官(小説で毎回この長い漢字の羅列が出て文字数を稼いでいる)から副大統領になっていたジャック・ライアンは飛行機の議会議事堂へのカミカゼアタックで大統領が死亡したことによってなんと大統領になってしまいます。映像化されてないけどハリソン・フォードが演じたキャラは最終的に大統領になるんですね。さらにハリソン・フォードは映画「エアフォース・ワン」でも大統領になっててその時もジャック・ライアンじゃん!って言われてたような気がしますけども。
ほんで、BNWでナターシャと同じレッドルーム育ちの元ウィドウ、ルースの役職が国家安全保障問題担当大統領補佐官なんですね。これもう狙ってんだろっていう。
もう30年も前の小説ですが、俺と同じように若い頃にこれを読んでた人が今回の脚本に関わってんじゃないかなっていう。
まあ相変わらず日本のこと分かってないなっていうのは、まず自衛隊ってものを未だに理解不能なんだなっていう。ていうか字幕担当の人も「戦艦」なんて書いてたら左巻きの人に火炙りにされちゃいますよ。日本に戦艦はありません!あと戦闘機どっから来た?まさかあの世界の日本は空母持っちゃったの?インド洋まで飛べるのか?ていうかインド洋にそんなほいほい艦隊出せないでしょ。ほんで日本の諜報組織は独立した機関じゃないのでポンコツです。そんなのがアメリカを出し抜いて情報手に入れたぜなんて得意げに言うわけないですよ。
あと、意外かもだけど航空自衛隊は英語で通信するらしいんですね。それが国際標準だからだったかな?ていうか民間でも日本語で通信してないはずよ。うっかり日本語聞こえてきた時「あれ?ここだけ吹き替え版?w」ってなったわ。
ほんで「撃たれた!反撃許可ください!」「オッケー!」ってないないないwこれはさすがに日本人全員笑うでしょ。わーくにではまず遺憾砲射撃ですよ。反撃許可くださいって言われたらとりあえず官房長官が会見開いて遺憾砲。ほんでシンゴジみたいな閣議がだらだらされて、とりあえず機関砲での威嚇射撃だけ許可でしょ。MCU世界では日米安全保障条約はなくなったのか?自衛隊は日本国軍になったのか?じゃなきゃミサイル発射は過剰防衛だって野党がぎゃーぎゃー言うからって総理が許可しないですよ。戦後日本初の米軍機への攻撃なんて日本の政治家がそんな責任負えるわけないじゃない。自衛隊機が撃ち落とされることよりも自分の保身が優先に決まってるじゃないですか。領海外で資源占有のために艦隊出してる時点でなかなか政治生命アウトだと思うけど。
これ微妙なとこなんだけどTwitterもといXでも日本じゃなくて中国にすべきではって書いてる人何人かいたけど中国だったら有無を言わさず速攻で占領して日本もアメリカも戦争上等で構えるでしょ。あんなアダマンチウムなんて無敵の資源降ってきたら。まあ、おそらくあの世界では中国やインドは内側で手いっぱいなんでしょうね。アメリカですら内戦の危機になってたんだし。だから日米…あれ?インドも会議にいたな?まあその辺は協調してアダマンチウムを共有しようとしたと。だけどアメリカが裏切ったから日本は独自に動くって筋になるんでしょう。中国だったら最初から戦争ですよ。
とまあ、インド洋での激しい戦闘シーンの最中に上記のようなことを脳みその半分で考えてたので、仕事帰りに観なくて良かったなぁと。
血清を打たないヒーロー
まあ日本人にしか分からないツッコミどころは置いといて、映画としてはすごく良かったなと。あ、やっとMCUちゃんと映画作る気を取り戻したなって。まあキャプテン・アメリカシリーズはずっと硬派なシリアス路線だからっていうのもあるかもだけど。前の記事でも書いたけどヒーロー映画の皮を被った社会派映画としてアメリカの暗部をバッサリいくっていう。現実のアメリカもちょうど怒りっぽいおじいちゃんが暗殺されかけつつ大統領になってウクライナとロシアの係争地にあるレアアースを狙ってたりね。すげぇタイムリー。日本製鉄が大統領の言い分しかとしてUSスチールをぶんどりに行ってたりとかね。すげぇタイムリー。コロナウイルスについても色々きな臭くてアメリカが裏で糸引いててそれを隠すためにどっかで戦争起こしたなんて陰謀論もあるけどこの映画の内容とめっちゃ被るんですよね。いい人ぶった大統領が実は闇仕事をやらせてた人たちに罪被せて闇に葬ろうとするっていうの現実にありますしね知らんけど。
でも、この映画の本当のテーマはちゃんと「キャプテン・アメリカとは」なんですよね。それも血清を打った超人スティーブ・ロジャースと血清を打ってない人間サム・ウィルソンを比較しながら。
前の記事でも血清打ってなくてもサム・ウィルソンは超人とは書きました。現実世界にいる超スーパーエリート兵士を更にすごくしたレベルの人間と。とはいえ、やっぱりナイフで刺された傷はすぐに治らないし骨も折れるし、パワーファイターには力負けしちゃう。それをワカンダ製のチート装備で補ってなんとか戦ってるけど、やっぱりレッドハルクには敵わないのね。
それでもきっと今後もサムは血清とかそれに似たものがあっても手を出さないんだろうなと最後の相棒との会話で感じましたね。あそこかっこよすぎて痺れた。
しつこいようですが前の記事で書いたのはスティーブ・ロジャースという人は一貫して「兵士」でした。彼はリーダーとして指揮を取れるけど戦術的指揮官であって戦略や政治には疎いままでした。だから彼の解決策は常に、サディアス・ロスに対してもスタークに対しても「対決」でしたね。起きうる問題を防ぐことはできないので、起きた問題を力でねじ伏せるという。それが彼のリーダーシップでありキャプテン・アメリカでありました。
対してサム・ウィルソンはというとホアキンがサムに憧れたというように、サムはどう考えてもスティーブに憧れて戦いながら救うというパラレスキューに志願し、ファルコン計画のテストパイロットになってるわけで元々は「兵士」だったんだけど、相棒を失ってカウンセラーになったことで彼には「対話」というスキルが発動したんですね。思えばスティーブがスタークと仲直りできたのも彼がサムの仕事を受け継ぐようにカウンセラーをしたおかげだったんじゃないかと。スティーブにも対話のスキルが身についたのかもしれない。
ファルコン&ウィンターソルジャーの物語を通してサムは自分がなるべきキャプテン・アメリカ像を描いたんでしょうね。彼はソルジャーではなくネゴシエイターとして戦う。スティーブのように超人的な力でねじ伏せることはできないから、対決より対話。攻撃よりも守護。
スティーブは敵の銃を奪って撃ったりしてたけどサムはマガジン抜いたりバラしたりしてとにかく敵の武器を無力化していく。そうすれば相手も対話に応じるしかなくなるから。まあ、それを敵に予測されてたけど。
でも究極はホアキンが言ったようにスティーブのキャプテン・アメリカは憧れるけど成れない。でもサムのキャプテン・アメリカは頑張れば成れるかもれない目標になるっていう。つまり上に立つリーダーじゃなく、前に立つリーダー。
アメリカの大統領っていうのも普通成れないですし、なんでも力でねじ伏せられるんですよね。なんでもじゃないわ。できる部分だけ。とはいえ、そんなリーダーが間違えたらどうする?っていうのが正にトム・クランシーが「恐怖の総和」で書いてるんですね。(原題のトータル・フィアーズで映画化されて、その時にジャックを演じてるのはベン・アフレック)
そしてこのブレイブ・ニュー・ワールドでも大統領は善人ぶっておきながら邪悪な火種を撒き散らしていて危うく戦争を起こしかけたりする。それを予測して危機を防ぎ、対話でハルク化を収める新キャプテン・アメリカ。そうだお前はスティーブじゃない!サム・ウィルソンお前がキャプテン・アメリカだ!You deserve it!!チャントがアメリカの映画館では鳴り響いたことでしょう!
P.S.それにしても森山直太朗のさくらの歌詞がこの映画にピッタリ
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