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『ひとり親けんこう白書』第2章 心身のケアの実践(後編)セルフケア講座がもたらす変化

セルフケア講座がもたらす変化〜現場からのレポート〜

本調査では、セルフケア講座がもたらす変化についても調べました。講座受講後にアンケートに答えてくれた43人のシングルマザーの約7割が、「心身の健康」「自分自身への向き合い方」に変化を感じたと答えています。「主観的幸福感」や「セルフ・コンパッション(自分自身への思いやり)」についてもポジティブな変化が見られました。

『ひとり親けんこう白書』p14

心身の健康が変化したと感じますか?

セルフケア講座に参加した人に「心身の健康が変化したと感じますか?」とアンケートをとりました。変化を感じなかった人は1割未満。約7割が変化を実感していると答えています。

変化を感じなかった人は1割未満。約7割が変化を実感していると答えています。

療や深い介入がなくても変化が起きる理由

セルフケア講座は、ストレッチと瞑想、短い会話の時間からなる1回 30 分の参加しやすいプログラムです。「治療」ではなく、深い介入を行うわけではありません。それにも関わらず、参加者は自分への思いやりが増したり、心の疲労度が改善したりしています。

その理由として考えられるのは、セルフケア講座に参加することで「自分を犠牲にする」よりも「自分を大切にする」ことが、子どもとの生活や関係をよくするためには必要だということを実感し、日々の生活のなかで実践するようになるからではないでしょうか。

ひとり親としての困難はすぐに解決するものばかりではありません。「だからといって、自分を責めて落ち込む必要はない」「他にも同じような思いをしてがんばっている人がいる」「できる簡単なことからやればいい」という前向きな姿勢になることが、メンタル面にもよい効果をもたらすと考えられます。

参加者の声

【体と心への気づき 】
・今まで蔑ろにしてきた心身の状態に意識を向けるようになりました。
・日々忙しく自分のどこが不調か確認する暇もなかったのですが、自分の疲れやゆっくりお風呂に浸かっていなかったことに気づいた。

【体への効果】
・セルフケア講座に参加した昨日はとてもよく眠れた。
・肩と首に覚えていた強い痛みが和らいだ。セルフケア講座の後は落ち着いた気分になれた。

【心への効果】
・在宅勤務が続き、運動不足で鬱っぽくなっていましたが、体も心もリフレッシュでき閉塞感ただよう日常生活に風穴をあけてくれました。
・安心できる場所があるので、深く落ち込んだりしなくなった。
・「わたしが頑張らなきゃ」という心のこわばりもストレッチで一緒にほぐれたように感じた。

【子どもへの影響】
・ほんの少しの余裕を持つことが子にも伝わるし、自分も楽になると思いました。

【セルフケアの習慣】
・この講座を通して、シングルマザーだからこそ、自らをケアしないといけないと教わり、ひたすら自己犠牲の生活から脱し、前向きに人生と向き合えるようになりました。

自分自身への思いやり、幸福度の変化

セルフケア講座の目的のひとつに「自分を大切にするという感覚を獲得する」というものがあります。自分への思いやりを測定する「セルフ・コンパッション尺度」や、主観的幸福感を調べるWHO開発の「SUBI尺度」を使って、その目的が達成できたかどうかを調べました。

『ひとり親けんこう白書』p20

セルフ・コンパッション(自分への思いやり)

セルフ・コンパッションを調べる尺度には、「自分へのやさしさ」「共通の人間性」「マインドフルネス」という肯定的側面の項目と、「自己批判」「孤独感」「過剰同一性」という否定的側面を調べる項目があります。受講前後で平均点を比較したところ、セルフ・コンパッションはどちらも高くなりました。

【肯定的側面の平均値】
(事前)19.30点⇒(事後)20.83点 
*統計的な有意差あり
*値が高い方がセルフ・コンパッションが高い
否定的側面の平均値
(事前)20.23点⇒(事後)19.16点
*統計的な有意差なし
*値が低い方がセルフ・コンパッションが高い

*受講前・受講後のアンケートの比較(n=43)

データをもう少し詳しくみると、「自分の失敗は、人間のありようのひとつであると考えるようにしている」(共通の人間性)、「苦労を経験しているとき、必要とする程度に自分自身をいたわり、やさしくする」(自分へのやさしさ)、「気分が落ち込んだとき、多くの人がおそらく自分より幸せであるという気持ちになりがちである」(孤独感)という3つの項目でセルフ・コンパッションが高くなりました。講座でセルフケアの大切さや意義を学んだことや、ともに参加している他のシングルマザーの存在を感じられることで、「困難を経験しているのは自分だけではない」「頑張っている仲間が全国にいる」と実感し、セルフ・コンパッションが高くなったものと考えられます。

主観的幸福感の向上

 WHO(世界保健機関)が開発した 「SUBI(Subjective Well-Being Inventory)尺度」は、心の健康状態、人間関係や身体の健康感など、精神生活を総合的に評価できる指標です。セルフケア講座の受講前後で「心の健康度(陽性感情)」と「心の疲労度(陰性感情)」を比較したところ、どちらも平均点が上がっていました。心の疲労度(陰性感情)は48点未満の場合、精神的にも身体的にも疲れている可能性があり、43点未満の人は要注意とされています。これについては、講座の受講前と受講後で顕著な変化がみられ、セルフケア講座は悲しみ、不安、憂鬱、退屈などの陰性感情の軽減に寄与すると考えられます。

「心の健康度」の平均値 
(事前)35.09点⇒(事後)36.19点 
*統計的な有意差なし
「心の疲労度」の平均値 
(事前)44.28点⇒(事後) 54.35点
*統計的な有意差あり 
*得点が高いと、心の疲労度が低い

*受講前・受講後のアンケートの比較(n=43)

アドバンスプログラムの効果

セルフコンパッションとSUBIの心の健康度については、「セルフケア講座のみ」の参加者と、第3章でご紹介する「アドバンスプログラム(グループリフレクションや寄付キャンペーン)とセルフケア講座両方」の参加者を比較しました。

前者には、統計的な有意差が見られなかった項目も、後者ではセルフコンパッションと心の健康度がともに向上していることがわかりました。

セルフケアの習慣をつけた上で取り組む更なるエンパワメントの効果が示唆されています。

参加者の声 

【孤独感の払拭】
・周りに話ができるシングルマザーが居なかったので、リモートで姿を見て会話ができた事で1人だけじゃないんだと実感できた。
・会話の時間は、とても短いですが、シングルマザーであることを引け目に感じることなくふるまえる時間は、私にとって、とても貴重な時間でした。とても救われました。
・全国あちこちに、シングルマザーとして力強く明るく生きる方がたくさんいるのだということを認識できました。
  
【幸福感】
・オンライン上での顔見知りがふえたことで、わたしにとってのサードプレイスとなった。一瞬だけど、おかあさんではない時間。女性として生きられた大切な時間。そんな場所と巡り会うことかできて、わたしは幸せだと感じた。
・ストレッチ自体はyoutubeなど無料のコンテンツでも楽しめますが、こうした場で他の仲間とつながってみんなでやる、というところになんだか幸福感がありました。

以上、セルフケア講座がもたらす変化〜現場からのレポート〜をご紹介しました。次回は、心とからだのつながり〜トラウマとセルフケア〜をご紹介します。

https://www.singlemomssisterhood.org/singlemoms-health

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2023年9月27日(水)12:00-13:00
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