「宇宙杯」みんなの俳句大会に参加して
「パパー、巣箱に小鳥が住みはじめたよー」
単身赴任をはじめたばかりの春先、当時小学生だった息子が興奮を抑えられずに電話をしてきた。二日酔いの朝ではあったが、一方的に話す彼の言葉は、嬉しさとワクワク感が混ざり合い、知らないうちにこちらも吸い込まれてしまい一緒になって飛び跳ねた記憶が蘇る。
自宅の庭先にあるハナミズキの木に、息子と巣箱を設置しました。赴任先に赴く少し前の12月のことでした。春になる頃にはきっと小鳥がやってきて、この巣箱に住み着くよ。そう言い聞かせて寂しさを逸らしていたのです。
3月の上旬、そんな巣箱にジュウシガラの番がやってきました。息子は来る日も来る日も待ち続け、番を発見するや否や僕に知らせてくれたのです。
春休みに自宅に戻ると3匹の雛がいました。
ピピューツ、ピピューツ、ピピューツ、
親鳥が虫を捕まえて戻るのを待ち焦がれているのか、そこからは確かな幸せの鳴き声が聞こえる。息子と顔を合わせニンマリ。
「元気に鳴いてるねー」
「だねー」
そう言って笑い合いました。
あれから毎年この時期になるとジュウシガラの番がやってきて、我が家の巣箱に住み着くのです。繁殖期を終えても離婚率は1割に満たないと言うから、きっと同じ番が毎年やってくるのだと思います。
そして、ゴールデンウィーク前後、雛たちは巣立って行きます。
「パパ、今年はもう雛鳥が巣立ったみたい」
先日そう電話をよこしたのは息子ではなく妻。その声はいつもになく寂しそうでした。
「えーっ、もう巣立っちゃったの。今年はやけに早いねぇ」
「うん、、、」
雛たちが巣立つ少し前。河津桜が満開に咲き誇っている頃、一足先に息子が巣立って行きました。大学卒業を機にひとり暮らしをはじめたのです。毎年この季節になるとケラケラ笑いながら雛たちの賑やかな声を楽しみ、その成長を願う。でも今年は雛たちの声しかしない。
窓辺から空っぽになった巣箱を眺めて涙する妻の気持ちと、巣立って行った者たちへの願いを認めて投句してみます。
4月になり新しい期を迎える。
今年も新入社員が沢山入社してきたようです。僕たちは依然として出社制限されており、ほぼ毎日自宅でリモート作業を継続している。
初々しい若人たちの笑顔が社内報で紹介されている。
サイトの中には眩いばかりの希望に満ち溢れ、未来を願う青年たちが満面の笑みで集っている。
僕にもこんな時代があったんだよな。かれこれ30年近く前のこと。
この若者たちにどうやってバトンを渡していくのか。そう思うと何だか無性にワクワクしてくるのです。
「何をニヤついているんすか」
web越しで話しかけてくるのは僕の同僚。
「僕ら中年組は、いつクビ切られるか分からないと言うことですよ」
と、恐ろしい現実に引き戻そうとするのです。
「だよな、、、」
そこで現実に戻されて一句。
note友達の”とのむらのりこさん”に誘われて俳句企画『宇宙俳句』に参戦。
一記事で3句投句できるルールのようですが、自身のセンスのなさを痛感し2句で撃沈します。🥲
はじめての俳句と川柳。
良い経験をさせていただきました。🍀
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