見出し画像

⑦EPATH’s 2nd Summer School トランス男性(FTM)のテストステロン療法後の出血はどう対応する?

Gynaecological aspects, fertility options and parenting
オランダの産婦人科医 Norah van Mello先生の授業を受けました。

授業内容は、トランスジェンダー男性(FTM)の不正出血、月経、避妊、妊娠・出産、骨盤底筋群の筋力低下、腹痛について


今回は、トランス男性の不正出血・月経について説明します。

*テストステロン療法とは、男性ホルモン療法のことを指します。

*世界的にはFTMという言葉は使わなくなりましたが、現在の日本ではFTMという言葉が今でもよく使われるため、FTMとも記載しました。

患者様からの声
・男性ホルモンを開始したのに、なかなか生理が止まらない!

・男性ホルモンを投与しているのに、不正出血がある。

・男性ホルモンを開始してから生理が止まった。しかし、数年後に生理がきた。薬が効いていないのではないか!?

・男性ホルモンを投与するクリニックを変えたら、生理がきた!

・今回の注射は痛くなかった。男性ホルモン注射の打ち方がよくなかったから生理がきた!


「生理を止めたい!」が一番の目的で
、テストステロン療法を開始された方も多いと思います。

しかし、生理が止まらない。一度は止まったのに、また生理が来てしまった….などの相談は多くあります。


【Point】
・テストステロン療法後、いつ生理が止まるかは個人によって異なる!

・テストステロン療法投与により、テストステロン値が十分であっても、生理や不正出血がおこることはある。
→テストステロン投与量を増やしても、生理が止まらない人もいる。

・日本の医療機関は信頼性が高い。病院やクリニックで、効果のないテストステロン製剤が患者様へ提供されることはない。

どのテストステロン製剤が最も効果的に月経(生理)を抑制するか、またテストステロン投与開始後に無月経(生理の停止)がいつ起こるかは不明である。

参考文献から引用



短期作用型テストステロン注射(エナルモン・テスチノン)
長期作用型テストステロン注射(ネビド・リアンドロン・セルノス)
どの薬剤が生理を止めやすいかは、まだよくわかっていません。



上の参考文献の結果では、
テストステロン療法開始から3か月
→トランス男性の17.9%が持続的な腟からの出血を報告し、26.8%が少量の性器出血があった。
大半の人が約3か月ほどで、生理が止まる。

テストステロン療法開始1年
→腟からの出血4.7%、少量の性器出血6.9%
テストステロン療法を1年投与しても、出血が続く人もいる。

テストステロン療法開始18か月(1年半)
→参加者の中に出血報告はなかった。


【出血の原因は?】
①血中のテストステロン値が低い
→テストステロン値を、シスジェンダー男性のテストステロン基準値より下回らないようにする。注射投与量を増やす。

②テストステロンジェルを使用している
→注射製剤よりもジェル製剤のほうが、出血がおきやすい。そのため、注射製剤に変更する。

③テストステロン療法後に体脂肪率が増加した
→体脂肪率も、生理や不正出血に影響すると言われている。筋トレ!

④子宮内膜が増殖している
→テストステロン療法後、子宮内膜は萎縮(いしゅく)する場合もあるが、増殖性内膜になることもある。その場合、生理や不正出血が生じることがある。

この場合は、黄体ホルモン(プロゲスチン)製剤を内服し、経過をみます。
日本の場合、薬品名は、プロベラやノアルテン内服になります。
海外だと、リネストレノールという薬だったりします。

⑤子宮内膜ポリープがある
→子宮鏡下で子宮内膜ポリープを摘出する。

⑥子宮頸がん・体がんの可能性
→不正出血継続の場合はがん検診を行い、問題ないことを確認する。


テストステロン療法(男性ホルモン療法)後のトランスジェンダー男性、FTM、ノンバイナリーの方の生理・不正出血の診察を行っています。

治療可能です。
お困りの方はご相談ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?