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テストステロン製剤(男性ホルモン)の種類と良い血中濃度は?

今回のテーマは、
FTM トランスジェンダー男性(トランス男性)
トランスジェンダー(AFAB)に対する
テストステロン製剤の種類と良い血中濃度について

最近、患者様からよく聞かれる質問を書きます。

先生のクリニックでは、テストステロン注射の在庫不足はありますか?

よくある質問1

→在庫不足は、ありません。

テストステロン製剤は、どんな種類があるのでしょうか?

よくある質問2

テストステロン製剤といってもいろいろあります。
使用されている方が多いのが①②でしょうか。

①注射:短期間作用型テストステロン製剤:エナルモン、テスチノン、テストケア、テストビロン
※会社が異なるだけで、内容はすべて同じくすりです。

②注射:長期間作用型テストステロン製剤:ネビド、リアンドロン、セルノス
※会社が異なるだけで、内容はすべて同じくすりです。

下記の写真は
左側がテストビロン。①の薬です。
右側がネビド。②の薬です。

IHRI 患者説明ブックから引用


③ぬりぐすり:グローミン、1UPフォーミュラ
グローミンはテストステロンが1%で1UPは5%のぬりぐすりです。
以前1UPは記事にもしました。

グローミンも1UPも、災害用や旅行用で購入される方が増えてきました。
50歳以上の方で、1UPに切り替えるトランスジェンダーの方も増えてきたり。

ノンバイナリーやXジェンダーの方のぬりぐすり使用率も高いですね。
塗り薬は副作用も少なく、安全です。
血中濃度も安定するので、人気があります。
注射とぬりぐすりの両方でホルモン療法を行っている方もいます。


④飲み薬:セルノスカプセル
ネビドと同じ成分:ウンデカン酸テストステロンの飲み薬です。
これも災害用・旅行用に飲んだり、筋トレ用として飲む方もいます。
筋トレ前に飲んで、パワーアップ!


ホルモン療法を行うにあたり、一番大切なことは、

★ホルモンの血中濃度が安定していること
★副作用をできるだけ少なくすること
★健康でいられるよう、過量・過少投与はしないこと
★患者様にとって安全・安心であること
→定期的に医師診察を行いながら、血液検査を行い、医師-患者間で対話をすることが重要だと思います。


テストステロン(男性ホルモン)製剤は、何がおすすめなの?

よくある質問3

ホルモン値が一番安定する薬がよいので、
注射製剤だと長期型テストステロン製剤が一番よいと思います。
12週(約3か月)に一回、ネビド/セルノスをおすすめしています。

しかし、50歳以上や基礎疾患など何かリスクがある方は、塗り薬をおすすめしています。
患者様の年齢、既往歴やリスクに応じて、一人一人ホルモン療法のベストを考えていて、血液検査をしながら、ホルモン量の投与間隔を検討しています。



WPATHのガイドラインのように
エナルモン/テスチノン/テストビロン 100-200mg 2週間に1回でもよいと思います。
しかし、250mg2週間に1回は多いなあ…多血症や副作用、髪の毛が心配だよ…と思ってしまいます。

でも遠方の方、なかなか受診できない方にはリスクを説明の上、250mg 3週間に1回を提案する時もありますが….


先日、USAから帰国された方が受診されたのですが…
エナルモン50-60mg/1週間に1回自己注射しておりました。
(noteで記載することについて、了承を得ました。)

エナルモンは急に効果はでますが、急速にテストステロン値が低下してしまうので、1週間に1回がベストという先生もいらっしゃいますね。

WPATHガイドラインより抜粋

テストステロンのホルモン値のベストは?
どうやって調整しているの?

よくある質問4
IHRI 患者説明ブックから引用
WPATHガイドラインより抜粋

当院のテストステロン値の単位はng/mlになりますが、
クリニックによってはng/dLかと思います。

テストステロン値は4-7ng/mlになるように調整しています。
これが至適数値です。

↑のガイドラインにも記載がありますが、ネビド/セルノス投与中、注射前の血液検査でテストステロン値が4ng/mlを下回らないようにネビド/セルノスの間隔を調整しています。

だいたい、12-14週に1回、ネビド/セルノス投与になります。


エナルモン/テスチノン/テストビロンはピーク値と注射直前の数値をみて、
できるだけ、テストステロン値は4-7ng/mlになるように調整していますが...
でもなかなか、短期間作用型のテストステロン製剤でよい血中濃度を保つことは難しい…..

何かありましたら、ご相談ください。

【東京】

【神奈川】

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参考文献 
WPATHガイドライン最新の第8版は英語ですが….

https://www.tandfonline.com/doi/pdf/10.1080/26895269.2022.2100644

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