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【フードエッセイ】石巻のスーパー「あいのや」さんがカッコいいので嬉しくてお魚をまとめ買いした話

 先週末の石巻帰省の際、食材の買い出しに立ち寄ったのは「あいのや」さんという地元スーパーだった。

 義実家からは少々距離があって車でないと行けないお店ではあるのだが、鮮魚の品揃えが豊富な上にお惣菜もボリュームたっぷりで、初めて訪問した際には大喜びで野菜や地魚をまとめ買いした記憶があった。
 今回は、久しぶりの訪問。
 混雑する開店直後の時間を避けて昼過ぎに訪れたのでお惣菜は売り切れているスペースもあったが、それでも鮮魚コーナーには地元・石巻港で水揚げされた新鮮な魚がまだたくさん並べられていた。
 お馴染みの魚から初めて見る魚まで種類も豊富。しかも安い。嬉しくてどれにしようかと迷っていたその時、一緒にいた夫が、鮮魚売り場にお知らせが掲げられているのに気づいて教えてくれた。
 そのお知らせの日付は、昨年8月27日だった。

お客様へお知らせ

いつもごひいきにしていただきありがとうございます。
福島原子力発電所の処理水の放出が始まりました。
株式会社あいのやは全店でこれまでと変わらずに、常磐沖や仙台沖、石巻沖、三陸沖でとれた鮮魚や貝や海藻とそれを原料とする水産加工品を販売いたします。
地元の漁業者の皆さんや水産関係の皆さんに、これまで(株)あいのやは大変お世話になっております。
これからはいままでのお礼の気持ちをこめて、これまで以上に常磐沖から三陸沖までの水産物を、そのおいしさをさらにお伝えしながらもっともっと販売できるようにがんばります。漁業関連の皆さんのお力添えをこれまで以上にいただけると幸いです。

令和5年8月27日
(株)あいのや 代表取締役 相野谷真一

 「カッコいいね」

 私が言うと、夫も頷く。

 「たくさん買おう。」
 「んだ。食うべっちゃ。」

 その日は、車に積んであったトロ箱がいっぱいになる量の魚と海藻を買って帰宅した。
 

ニシン、太刀魚、メヒカリ、ニタリクジラ、生わかめ
これだけ買って総額1,092円(税込)
石巻産 メヒカリ

 石巻産のメヒカリは、帰宅してすぐに唐揚げにした。
 包丁の先で軽く表面を擦ってウロコを落とし、胸鰭を切り落としてワタを取り、背にも2ミリほど切込みを入れたらザルに入れてさっと水洗い。キッチンペーパーで水気を拭いてから片栗粉と一緒にビニール袋に入れてカシャカシャと粉をまぶし、小鍋に1センチほどの深さの油を熱して揚げれば出来上がり。今回はメヒカリ12匹に対して片栗粉は大さじ2杯弱。

北西太平洋産 ニタリクジラ

 クジラの刺身はこれまですりおろしニンニクと生姜醤油でいただくことが多かったが、生憎この日はニンニクを買うのを忘れていた。けれど醤油だけでも美味しかったし、思い付きでおろし生姜とポン酢を合わせてみたところ、こちらも美味しかった。

宮城県産 生わかめ

 茹でられていない生ワカメを買えるのは今の時期ならでは。
 帰宅して鍋に湯を沸かす。沸騰したお湯に生ワカメを入れると、茶褐色から鮮やかな緑色に変るのが手品のようで楽しく嬉しい。もちろん、茹でたてのワカメは味も香りも格別。茎のコリコリとした食感もたまらない美味しさだった。

石巻産 生にしん

 「キズあり」ということで2匹で135円(税込)というお買い得品だったニシンは、翌日の晩酌で塩焼きにした。
 傷といっても2匹のうち1匹の腹の部分に小さな傷が数か所あっただけ。しかも、2匹とも子持ちだった。数の子付きでこの値段とか、もうほとんどお魚の福袋状態である。
 ワタを取ってよく洗い、水気をキッチンペーパーで拭き取ってから塩を振る。5分程休ませてからグリルで焼けば、ふっくら美味しいニシンの塩焼きの出来上がり。
 腹から取り出した数の子は、ザルに入れて水洗いし、さらに熱湯をかけた。熱湯をかけたことで表面が硬くなり扱いやすくなった数の子に軽く塩をまぶし、アルミホイルで包んでからフライパンに載せてじっくり包み焼きにすれば、焼き数の子の完成である。焼きタラコのようなカリカリの食感で、これもまた美味しかった。

石巻産 太刀魚

 今や石巻の新たな特産品となった感もある太刀魚。キラキラとした皮がはがれてしまったからか、申し訳ないほどの安さになっていた。もちろん味に変わりはない。こちらはさっと洗って水気を拭き取ってから塩を振り冷凍保存した。
 これで連休明けに残業になっても晩酌に困ることは無い。
 どんなに疲れて帰っても、冷凍庫には石巻産の太刀魚がある幸せ。
 ありがたい。

先週末の晩酌風景(再掲)


 石巻の魚と海藻、そして野菜を毎日頂ける暮らしは幸せだ。
 そんな食材を毎日提供してくれるお店があるのは、本当に本当に幸せだ。


 「あいのや」さんのお知らせのメッセージに応えられるよう、私もまたお店や生産者の方々へのお礼の気持ちをこめて、これまで以上に常磐沖から三陸沖までの水産物のおいしさをさらに伝えられるよう、たくさん食べてたくさん紹介してゆきたい。
 そんなことをあらためて思った、先週末の出来事だった。


石巻からの帰りに立ち寄った東松島の鳴瀬川河口

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