【フードエッセイ】カナガシラの唐揚げと、私が美味しい魚について書き続ける理由
更新が前後してしまったが。
先週土曜日、私が仕事に出ている間に夫が塩釜仲卸市場まで食材のまとめ買いに行ってくれた。
今回買ってきてくれたのは、ヒラメとカナガシラのお刺身と、加熱調理用のカナガシラの開きである。
カナガシラは頭とウロコが硬く、初めてこの魚をまるごと買った時には、魚の処理に不慣れだった私は捌くのに難儀した。しかし、以前にもnoteに書いた通り、捌くのに手間取ってもまた食べたいと思うほどに美味い魚でもあった。
塩釜仲卸市場には、このカナガシラを捌いた状態で販売してくれるお店がある。捌いた状態だと調理も簡単でありがたく、以前から度々利用している。
今回も、開いた状態のものはひと口大に切って片栗粉をまぶし、唐揚げにしていただいた。
魚の唐揚げは、1センチほどの深さの油でもからりと揚がるので家計にも優しいのが嬉しい。何より、揚げたての美味さは格別である。
特にカナガシラの唐揚げは、塩や胡椒といった下味を何もつけずとも、そのままで美味しい。からりと揚がったカナガシラはほんのりと紅色の入った皮の見た目も美しい。さくっとした皮の食感も楽しく、中の身はふわりと旨味たっぷり。
宮城県では古来から民謡に歌われるほどに馴染み深い魚だったというカナガシラであるが、現在は「未利用魚」「低利用魚」とされる魚のひとつでもある。
しかし、地元スーパーがお惣菜として販売するようになって大きな話題を集めたり、塩釜仲卸市場をはじめ鮮魚店で調理しやすい状態で販売しているのを目にする機会も多く、最近では身近な魚のひとつになってきたという印象を受ける。
我が家においては、すっかり定番の魚である。
もちろん、カナガシラとヒラメのお刺身も、どちらも美味しかった。
夫が買ってきてくれた塩釜仲卸市場の魚のおかげで、この日も幸せな晩酌となった。
水産庁のウェブサイトに掲載されている最新の「令和4年度 水産の動向」によれば、我が国における食用魚介類の1人1年当たりの消費量は23.2kgで、年々減少し続けているという。
魚の美味しさや健康面への良い効果は広く知られている一方、それでも消費者が魚介類をあまり購入しないのは、価格が高いことや調理に手間がかかること等が要因であると記されている。
これらの課題を踏まえて、各地では、水産物の消費拡大に向けて様々な取り組みがなされている。上記ウェブサイトでも触れられているが、そんな取り組みの一つが、先述のカナガシラのような「未利用魚」「低利用魚」の利用促進である。
一般的に知られていない魚の中にも、美味しい魚は、たくさんある。
しかも、そういった魚は、安い。
安くて美味い。
また、まな板に乗るサイズの魚であれば、慣れれば調理は意外と簡単である。今はありがたいことにYouTube等に捌き方を解説する動画がたくさんアップされており、その多くが消費拡大を目的にしていることから無料で視聴出来る。
さらに、先のカナガシラをはじめ、最近では自分で捌かずともすでに調理しやすい状態で販売されているものも多い。今回は唐揚げにしたが、開いた状態であればフライパンで焼くだけでも美味しいし、電子レンジでも調理出来る。
魚は面倒、と思っている方がいれば、是非試していただきたいと思う。
私は水産業の関係者でも営業担当でも無い、ただの魚好きの一般人に過ぎない。
そんな私が、誰に頼まれたわけでもないのにこうして魚の美味しさや簡単な調理法について日々書き続けているのは、自分自身が魚を食べ続けたいからに他ならない。
日本の水産業を取り巻く状況は、厳しい。
このまま日本の水産業が衰退して、身近な美味しい魚が食べられなくなるのは困る。
本当に困る。
この文章を目にした方のうち一人でも二人でも、実際に、身近な魚を買って食べてくださる方がいれば嬉しく思う。
カナガシラに限らない。
それぞれの街の身近な市場で、スーパーで、あるいはネット通販でも。
もちろん、料理を楽しまれている方が多く存在するnoteという場所においては、我が家のように、あるいは我が家以上に毎日たくさんの魚を美味しく魚を食べているという方々も多いのかもしれない。
けれど、魚料理に馴染みが無い・魚を食べる機会がほとんどないという方もいることと思う。
そんな方々に、
「美味しそう」
「(調理が)簡単そう」
と感じていただけたら嬉しい。
そして
「買ってみよう」
「食べてみよう」
と行動に移していただけたら、さらに嬉しく思う。
美味しい魚は、全国各地にたくさんある。食べやすい魚の加工品も、たくさんある。
日本の魚介類・水産物を買って食べる人が一人でも増えることを、魚好きの一人として、心から願っている。