札幌の串鳥を仙台で味わう
私は串鳥が好きだ。
鳥の串のことではない。
いや、鳥の串焼き全般も好きではあるが。
「串鳥」は、札幌に本店のある焼き鳥チェーン店である。
若い頃は外に飲みに行くこと自体多く無かった私だったが、30代の半ばを過ぎたあたりで飲み会の機会が増えるようになってからは、度々こちらのチェーン店を利用していた。
店ごとに店舗面積の違いはあれど、どの串鳥もちょっとした仕事の打ち上げ等の飲み会をする際に便利なテーブル席や個室があったし、カウンターでの一人飲みであれば予約無しでふらりと訪れても利用することが出来るのも嬉しかった。
1本から注文できるので、少人数や一人でもいろいろな種類を少しだけ食べられる。加えて、焼き鳥専門店だけれどごはんものやサイドメニューもあって、がっつり食べたい時にも便利。しかも、どれも安くて美味い。
居酒屋チェーンやジンギスカンのお店等、仕事帰りに友人達と利用した店はいくつもあるが、利用回数が一番多い店は間違いなく串鳥である。転勤により札幌を離れた後も、出張や帰省で札幌に行った際にはわざわざ足を運ぶほど、私にとっては大好きなお店だった。
今も、北海道に帰省した際には必ず足を運んでいる。
おかげで、以前は外食より宅飲みのほうが好きだったという夫も、今ではすっかり串鳥ファンの仲間入りをしている。
先週の土曜日。
光のページェントを見ようと夫とともに出かけたのは、点灯の時刻よりもずいぶん早い午後4時頃だった。
当初は、光のページェントのイルミネーションが点灯する前に買い物をし、点灯する瞬間を見てから定禅寺通りを散策、その後どこか空いている居酒屋を探して夕食を、という予定だった。
しかし、壱弐参(いろは)横丁での買い物を済ませても、イルミネーションの点灯まではまだ時間があった。
「先に軽く食べちゃう?」
そう言って夫が案内してくれたのは、串鳥の「青葉通一番町店」だった。
宮城に移住してきて以来、街中で「串鳥」のロゴを見つけて気にはなっていた。
でも、まさかね、と思っていた。
「串」と「鳥」がつく名前の焼き鳥店なんて全国どこにあっても不思議じゃないんだから、まさか同じチェーン店ではないでしょう、と。
北海道内でさえ、札幌市内と近郊の他には旭川しか無かったんだし。
でも、その「まさか」だった。
公式サイトによれば、仙台に串鳥1号店が出来たのは平成16年6月。
今では北海道外5店舗のうち、4軒が仙台市内にある。(1軒は東京の吉祥寺)
凄いぞ串鳥。
ありがとう仙台。
というわけで、宮城移住から3年目にして初めての「仙台の串鳥」である。
「スープの味がおんなじだよぉぉっ!」
串鳥では、食事の前にサービスで温かいスープが提供される。
さすがにビールは慣れ親しんだ北海道限定サッポロクラシックでないが、そんな寂しさを吹き飛ばすスープの美味しさに、焼き鳥が出てくる前からすでに感激してしまう。
そんな私の様子を見てニコニコと笑いながら、夫は同じくサービスの大根おろしに醤油をかけてつついていた。場所は変われど、やはりさすが串鳥。酒飲みに寄り添うサービスが嬉しい。
この日は土曜日、しかも光のページェントが始まって2日目ということもあってか店内はカウンター以外ほぼ満席の賑わいだったが、焼き物以外はさほど待たされることもなく一品目の料理が出てきた。
まずは、大人のポテサラ。
カリカリシャキシャキのトッピングが楽しいポテトサラダ。添えられたカイワレ大根の辛味も良いアクセント。美味い。
「あ!ニッカがある!」
ドリンクメニューにニッカのハイボールがあるのを見つけた夫が嬉しそうに言う。早速ドリンク追加注文。夫はニッカのハイボール、私はサッポロ黒ラベルをおかわり。
2杯目のドリンクが届く頃から、タイミングよく串が焼き上がる。
基本の豚串。美味い。やっぱり北海道も宮城も肉は豚だよね。
(注:ここは串鳥です)
やっぱ焼き鳥だよね。(あっさり前言撤回)
美味い。
三カ月ほど前の北海道帰省の際は品切れで食べられなかった大好きなつくね梅じそを仙台で堪能。嬉しい。
「岩下の新生姜の豚巻き、新生姜がでっかいよぉぉぉ!」
いつも家で作る時は節約してちょっとしか新生姜を入れないのだが、さすが串鳥は豪快。めちゃくちゃジューシーで美味しい。
「うずら、めっちゃ美味ぇ!燻製っぽい!」
夫のリクエストで頼んだうずら玉子、実は私も初めて食べたのだが、これがまた美味しかった。
そして
「串鳥のなすだぁぁぁっ!」
個人的にはつくねやささみに匹敵するくらい大好きなのがこのお店のなす焼き。自分の周囲でもファンは多く、串鳥といえばなす焼きだよねとよく話していたのを思い出す。
仙台でも札幌と同じ味。美味しい。そして嬉しい。
感激しながら食べ続け飲み続け、ふと気になって時計を見た。
「ページェント・・・点灯、しちゃった?」
夫に尋ねる。
夫も時計を見た。
「・・・んだな。」
顔を見合わせ、互いに笑ってしまう。
「まぁ、いいべ。」
「んだね。」
点灯の瞬間を見る楽しみは、また来年に取っておくことにした。
もちろん、食事の後は、光のページェントのイルミネーションをたっぷり楽しんだ。
北海道を離れても、馴染みの味を楽しめるのは嬉しい。そして、ありがたい。
案内してくれた夫に感謝である。
お腹も心も満ち足りた夜だった。
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