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#32 きっとお前もなやめる駐妻 棄てな棄てな まじな執着を今は。

【32日目】食品、調味料の在庫の消費が進まない。ここは早めに動いておいた方が、後々の精神のために良さそうだ。とりあえず、食欲をそそらないものは捨てる。捨てる作業は、追い詰められてからやると精神ダメージが大きい。出国引っ越しのときに経験済。【本帰国まであと68日】

「買ったときは食べたかったり、使いたかったりしたのだ。そのポジティブな気持ちに、嘘はなかった。」

 大量の食品や調味料を見ていて、そう思う。

「でも、今となっては、食欲をそそらなくなったものを、最後まで食べきるために、ガス代を使って調理したり、内臓を使って消化する意味...ないな。」

 そう思う。思ったら、即行動。

 佃煮や乾物など、一気に捨てた。30リットルのゴミ袋ひとつ分くらいあった。

 スーツケースが重いのを我慢して、日本から運んできたのかと思うと、マジで無駄だったと思う。

 無論、これらを買ったのは、一時帰国時のお買い物担当、我が夫である。

一応、事後報告した。

予想通り、夫は

「ぜんぜん、わからないですね。そんなもの買ってたかなぁ」

と、小首をかしげている。

 夫は持てる能力を仕事に全振りしている男なので、冷蔵庫や倉庫にどんな食べ物があったかなんて、覚えちゃいないのである。

「まだ食べられるものを捨てるのは、多少心が痛んだけど、もっとシンガポールにいるつもりで買ってたんだから、しかたないよね。馬券が外れたと思って、あきらめようと思って。」

 私が笑顔なので、夫は納得している。

「ハッピーワイフ、ハッピーライフ、シンガポール。」という標語を、念仏のように唱え続けているのであろう。


 シンガポールへ来るときの私は、最後の最後まで冷蔵・冷凍庫の「食べ物」と調味料に追い詰められていた。

 夫は送別会やら、なんやらで帰ってこない。家で食べられないのに、最後まで家で食べる可能性を捨てられなかった。

 おまけに東京のゴミ収集は曜日別に分かれていて、好き勝手に捨てるわけにもいかなかった。

 私だって、外で食べておきたいものもあるのに、家で作ってひとりで食べて、大量の荷物に囲まれて、本当に本当につらかった。

 そして、その押しつぶされそうなつらさは、夫にもらすわけにもいかなかった。


 あんな思いは二度としたくない。

あと70日弱の時点で、ここまで捨てられたのはよくやったと思う。

「愛着はOK。でも執着はNG。」を合い言葉に、いっぱい捨てて、元気になろう!





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