風がはこぶ。

風が強いです、
家のワンちゃんが、風上に向かつてくんくん
してます。
風の中にどれくらい匂いがあるのかな？
この風は
南風だから、東京湾の微かな汐の匂いがする風。
沖合をとおるタンカーが運んだオイルの匂い、漁船の甲板が陽に乾かされた匂い、砂浜の塩辛い海藻のにおいが混じっている風。
 
においの粒を、僕らは感じられないけど、
遥か南、フィリピンあたりで砕けた波の飛沫や、スコールの隅っこの雨粒がきっとまじつている。

いま、僕をとおり過ぎた風は、どこかでこの僕の幸せな一時の匂いを感じてくれるかな。ここで載せた匂いは、ワンちゃんの肉球のにおい、庭の草とりをしたあとの土の匂い。これから花を咲かせる木の暖かい匂い。

やってくる風に、少しだけ僕の幸せをおすそ分けして、北にへ向かって行く風を見送りました。

明日は北から、冷たい悲しい大陸を起源のかぜがやってくるかもしれません。
その時は、僕の幸せで悲しみを薄めず、悲しみを平等に背負えるように、そして今、命を落としている人が必ず居ることを思い、思い、思い、一分だけ息を止めて、祈ります。