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【ためし読み】川井俊夫著『金は払う、冒険は愉快だ』③

【ためし読み】川井俊夫著『金は払う、冒険は愉快だ』③

 宅配便屋の倉庫の仕事は日銭を稼ぐのに一番簡単な方法だ。俺のような得体の知れないおっさんでも、電話をして、倉庫へ行って、なにか書類を二枚くらい書けば、その日のうちに働ける。

 ベルトコンベアに載って、荷物が次々と流れてくる。荷札を確認して、自分の担当エリアのやつを降ろし、そいつを足下に積み上げながら、隙を見てトラックの荷台に積んでいく。作業自体は単純だが、赤いビニールテープを巻いた棒切れを持って

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【ためし読み】川井俊夫著『金は払う、冒険は愉快だ』②

【ためし読み】川井俊夫著『金は払う、冒険は愉快だ』②

 店の扉を開けて、誰か入ってくる気配がした。すみませんね、ご主人……いるかな? しゃがれた爺さんの声だ。
「ハイハイ、ここにいるよ」
 そう言って入り口からでも見えるように店の奥で座ったまま手を挙げる。
「ああよかった。入っていいかな。そっちかい? お願いがあるんだ。頼みごとってやつさ。聞いちゃくれないか?」
 体格のいいジジイだ。少し足を引きずっているが、背筋もしゃんとしてるし、年寄りにしては身

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【ためし読み】川井俊夫著『金は払う、冒険は愉快だ』①

【ためし読み】川井俊夫著『金は払う、冒険は愉快だ』①

 朝の7時30分に携帯電話が鳴る。番号は登録してあるやつだったから、画面には数字ではなく俺が自分で入力した名前が出る。相手は「茶道具がたくさん、早口でうるさいジジイ」だ。登録してあるということは、当然過去にこのジジイから連絡があり、依頼を受けて仕事をしたことがあるということだ。記憶を辿る必要はない。すぐに思い出した。最初の依頼は6月だ。クソ暑い中、とんでもない量の茶道具を買取るハメになった。

 

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