中間管理職一歩手前
「プロのサラリーマン」をnoteに書いてから一年半が経過した。あれから色々あって、タイトルの通り「中間管理職一歩手前」まで来てしまった。何故、ここまでの立場に来てしまったのか。この一年半の間で起きた事を、リアルなサラリーマン内で起こってる力学を、つらつらと書き起こしながら、まさかの展開で想像だにしなかった立場に立たされそうな現在を語りたい。
昨年に起こった大事件
昨年6月、自分の勤める営業所になかなかなインパクトの大事件が起こる。同時に社内で自由に振る舞っていた僕の立場が、大きく揺るがされた。その事件とは、立場的には拠点のNo.2で、社内でも指折りの売上を叩き出すエース級の先輩が、辞めて起業するとの事。まあ、実はこの起業にも色々問題があって、これはこれで一本noteになりそうなシロモノだったが、それはまたの機会に書こうと思う。兎に角、仕事場的にもかなり難易度の高い仕事を担っていた人間の退職はかなりの痛手。後を任されたのはなんと、辞める先輩が他社から引き抜いてきた人。なかなか出来る人ではあるが、まだ変わってきたばかりで勝手がよく分かっていない。そんな状態で、先輩でも手を焼いていた程高難度な仕事を、回せと言われる事自体無理があるというもの。案の定、残業がかさみ、本人も追い詰められる一方で、何の対策も打とうとしない上司や会社に爆発寸前。「あの子も辞めるかも知れない」そう囁かれ始めた。加えて辞めた先輩が、事もあろうに、あとを担ったその子を、さらに起業した自分達の会社へ引き抜こうとしてきた。人手不足をギリギリで保っていた営業所のバランスが今にも崩れそうになっている。剃刀の刃を渡る様な日々が続く様になった。
身を削る決断
僕はそこまで何かを動かせる立場ではなく、ここまでは何も口を挟まなかった。しかしさすがの危機的状況に、辞めた先輩の次を担った彼を助ける事を決意する。僕も彼と同じ様に高難度な仕事を担っている。ここは自分が、自分の身を削るしか無い。今までずっとこの会社において、ただひたすらに与えられた仕事から逃げず正面から受け止めて、人が嫌がる事でも、難易度が高くてもこなして来た。その積み上げたスキルは、誰にも負けない自負がある。今度はこれを自分の中だけではなく、自分の周りにも広げて行く時ではないか。そう感じたからである。実は僕の中には一つの勝算があった。それは、
「自分が"楽しい"と思う職場は、自分で勝ち取るしか無い」
という事だ。そして、仕事での本当の苦しみは、売上の負荷や目標の高さでは無い。
「"誰も助けてくれない"と思う孤立感」
だ。トラブルに見舞われた際、また、大きな仕事を抱えた際、明らかに周りが距離を取って、いかにも関わりたくない空気が流れる様な職場は、もはや拷問である。この職場には、今まさにその空気が形成されつつある気配を感じた。
「今しか無い」
直感的にそう思った僕は、勇気を出して、言った。
「よし!僕が一緒に担当しよう。一人増えれば、情報交換も増えるし、考える頭、動かす手も増える。皆んなで痛みを分ければ痛みが薄まる。今は皆んなで力を合わせてこの苦境を乗り切るしかない!」
そう言って、この負荷の高い担当エリアに手を出す事にした。身は削るが、仲間の精神負荷を減らし、本当の意味での「チーム」を作り上げる事を目指した。ここからまさに、想像もしかなった未来へ進み始める。
「地道」という力
僕は、何においても、ずっと逃げて来なかった。がっぷり四つの正面突破しか知らない。目の前で僕に押し付けて逃げて行く人は沢山見てきた。
「お前を育てる為だから、対応してみろ。」
という言葉に最初はまんまと引っかかっていたが、経験値が上がる事によって、次第に面倒事から逃げたいだけの心根が見え隠れしてるのが分かる様になった。そうやって上手く躱していく先輩や上司が、華麗に問題を解決している様を終ぞ見た事がない。こういった解決能力を見せない先輩達の姿を見て、「自分は、後輩や部下の後ろに隠れて安全を守る様な人間には絶対にならない」と固く誓ってきて今がある。「地道」に真っ直ぐ問題に向き合ってきた力は確実に圧倒的な解決能力として身に付いていた。実は身を削る決意をしたこの時に、この力が花開いて来るのをひしひしと感じる様になった。問題の中心に自分が入る事により、あらゆる方面での解決の方途が見え、的確に指示を出す事ができ、今までの半分にも満たない時間で問題をクリア出来る様になった。自分でも驚く程、問題の本質が手にとる様に分かり、解決への最短距離を自然と選び取れる様になっていたのである。ギリギリのバランスで保っていた拠点の状況はみるみる回復していき、職場の雰囲気は明るく変化していった。辞めそうだった彼は元気を取り戻し、難易度の高い仕事を熟せる中核的な存在になりつつある。今や「助け合い」の文化が、この拠点の強みとなり、お互いをカバーし合い、気兼ねなく休みが取れる活気ある職場となった。
トドメの事件
苦境を脱したタイミングで、新しい直属の上司が赴任し、初めて自分の前でトラブルを跳ね除けてくれる人に出会った。「中間管理職はかくあるべき」という見本を示してくれている。勢いが加速する中、トドメの事件が起こる。会社の超ベテランが、割と頻度の高い作業で、手を挟まれ骨折した。丁度その時、グループ会社内で労災事故が多発しており、会社としてかなりピリピリしてる時だった。ようやく勢いに乗った拠点の雰囲気に、暗雲が立ち込めて来るかと思われたが、現上司の大らかな性格に助けられ、空気の悪化は回避されたものの、事故調査、現場検証、対策立案など、本社と親会社から次々と弾が飛んできた。最も困難を極めるのは対策立案だ。労働災害は基本的に、起こしたくて起こしてる人は居ない。殆どが不注意や、慣れによるもので、防止策と言っても、本人や個々人が改めて漫然と仕事している状況を改め、意識を高く保つ以外にない部分が多いからである。それでもその中で原因を見極め、同じ様な事故が二度と起こらない様に、親会社より、まあまあのプレッシャーで対策立案を求められる。現場のリーダーでもある僕にも、責任の一端がある。作業を指導教育する立場として、この対策立案のブレイン役となった。先ずは親会社をお客様と見立て、何を求めてるかの本質を考えた。すると、親会社が求める対策とは、この作業における絶対安全な「標準作業要領」を策定する事だと直感した。調べると、この作業に関しての作業手順や、要領が決められてる訳では無かった。これを機に、「標準作業要領」が作成でき、それが共有されて誰でも安全作業が出来る様になれば、この事故から大きな教訓を得る事ができる。そういう答えを親会社は求めてるのだろう。そう考えた僕は、早速この作業での不安要素を皆で話し合った。長年修理の仕事を「地道」に続けて来た僕の思考回路は、ここでも「原因追及」に活かされる事となる。難易度の高い修理になればなるほど、多くの客観的証拠とロジックを積み上げが重要だ。皆の意見から事故で起こった行為以外にも次々と問題点が明らかとなる。その一つ一つが客観的証拠となり、ロジックを積み上げていくと、一つの根本原因に行き着いた。この原因さえ解決すれば安全で効率的な作業が実現するに違いない。そう確信した僕は直ぐに取りまとめ、上司に報告した。この事件は、小さな事ではあるが、自分の手で"助け合える職場"をつくってきた信頼関係が、忌憚なき意見を生み客観性を高め、一つの答えに結実できた出来事だった。案の定上司は
「これの対策案は絶対にイケる」
そう言ってくれて、親会社へほぼ修正なく上げてくれた。その後も親会社の立ち合いでの現場検証、ヒアリングも難なくおわり、親会社からの事後の対応、対策立案の最終評価は最高評価の「A」。この作業における「標準作業手順」も全国で展開される事となった。これがトドメの事件で、いよいよ僕は「中間管理職一歩手間」まで来る事となった。上司からは
「今すぐ課長を交代しても良いレベル。次の責任者は間違いなく君だから、今からそのつもりで仕事をする様に」
と。要は「背中を見とけよ」という意味でもある、トドメの一言だった。こうして、#想像していなかった未来が目の前に来ている。今の職場で管理職となり、一国一城の主となるのは悪くない。何故なら自らの努力でこの職場の雰囲気を勝ち取って来た自負があるからだ。ただ、「名選手は名監督にあらず」の言葉がある様に、管理職となると、フェーズが全然違うという事も理解はしてるつもりだ。だからこそ、自己研鑽は常にしてきたし、今後も勿論続けて行く。どんな立場であっても楽しい職場は自分で勝ち取って行くしかないからだ。ハイキャリア転職や起業が流行る昨今、僕は「プロのサラリーマン」として、今居る職場で未来を開く人生も悪くないぞと今後も提案し続けて行きたい。
そこにも充分#想像しなかった未来が待ってるかも知れないからだ。
長々と読んでいただきありがとうございました。