父と母への手紙
お父さん、お母さん、
思い出したことがあります。
昔、新しいスーツケースを買って、それに荷物を詰め込んで帰省した時の事、
圧力をかけるとぼこっとへこむ、薄い素材のそれを見て、お父さんは、
「安物じゃないか」
と言ったよね。
それに対して、反論しようとした私にお母さんは、
「疲れたでしょう」
と、別の話題を振って、話をそらした。
あのスーツケースは、柔らかくて軽い新しい素材で作られた丈夫な製品で、そこそこ値の張る物だったんだよ。
私なりの大変なこだわりを持って、時間もかけて選んだ大切なスーツケースだったんだ。
お父さんとお母さんは私の事を理解していない。
私が話す機会をいつも横取りしているから。
だから、私がどんな人間なのかをいつまでも知らないまま。
私のスーツケースを「安物」だと決めつけたように、私自身の事も、決めつけて、こんな人間なんだろうという人物像を勝手に作り上げていると思う。
それは私じゃない。
私という人物像を勝手に作り出して、「心配だから」と、口出しをしてくるのをやめてください。
「あなたには分からないことが多いから」と、指図してくるのをやめてください。
「あなたたちの頭の中にいる私」は「私」ではありません。
私をあなたたちの分身だと思う事をやめてください。
私に執着するのをやめてください。
私を独立した人間として認めてください。
私の自由を認めてください。
いいかげんに、私を解放してください。
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