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集中力の質

0.左利きのエレン

私の好きな漫画に「左利きのエレン」がある。

作中で、登場人物の真城学は「才能の正体とは?」という問いを発しており、この問いに対する考察が興味深いため、単行本や原作者のnoteから引用しながら、自身の考えも交えて整理したい。

1.才能の正体

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”才能とは集中力の質である”

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私たちが「日常生活の中で共有している時間」は絶対的なものであり、自分にとっての1秒は、誰にとっても1秒である(と一般的に意識されている)。

しかし、

かのアインシュタインは「熱いストーブの上に手を当てたら、一分がまるで一時間くらい長く感じられるだろう。しかし美女と一緒にいる一時間は一分程度にしか感じられない。」という言葉を残した。

つまり、時間に変化は無くとも、そこに向き合う人の意識によって時間感覚は変化し得るという「時間の相対性」を、相対性理論の中で唱えた。


そして真城は、その時間感覚の変化は「集中力の差」によるものと考え、その差を生み出す要因は「集中力の質」だとしている。

さらにこの「集中力の質」を、

集中力の質=集中の「深さ」×「長さ」×「早さ」 

と考察している。

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この3つの要素をそれぞれ「深い・普通・浅い」「長い・普通・短い」「早い・普通・遅い」で評価すると、人の集中のタイプは大まかに27タイプに分けることができる。

私は、自分の集中の質を、「浅く・短く・早い集中」と評価している。

(ただし、あくまで自己評価であり、おそらく多分にバイアスがかかっている。「もっと深い集中状態に入りたい」「もっと集中継続時間を延ばしたい」という自身の願望があり、自己評価の低さが現れているだろう。この「実在する自己」と「認識する自己」の乖離を埋めていく方法は様々あると思うが、考察しきれていないので今回は割愛。)

おそらく私が長期インターンの飛び込み営業で、すぐに結果を出すことができた要因は、過去の経験から集中の質を自己分析し、それに合わせた営業の仕方をしていたことが、一つの大きな成功の要因だったと考えている(詳細は後述)。

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ここで気を付けたいのが、集中の質に優劣はないということ。

大多数の人は、「深く・長く・早い集中」が最も優れていると思うかもしれないが、あくまで集中の質とは人の集中の優劣を決めるものではなく、集中の特性(タイプ)を意味するものである。集中の質によって向いている職業と向いていない職業が存在するだけだ。

作中では、「浅く・長く・早い集中」を持つ人物のことを「”マルチタスク”のタイプであり、ビジネスに向いている」と評価している。

一方、「深く・長く・遅い集中」を持つ人物のことを、典型的な”シングルタスク”」と評価している。

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ちなみに、人間は(コンピュータもだが)厳密に言うと、「”マルチタスク”はできない」と言われている。「俗にいうマルチタスク」は、細かく意識の対象を切り替えているだけだ。(そして、意識の対象を切り替える時にロスが生じるため、生産性が低下することが研究で明らかにされている。)

このことから、「深い集中」を持つ人が意識の切り替えを必要とするマルチタスクを苦手とし、深い集中が必ずしも優れているとは限らないということにも頷ける。


2.集中の練度(熟度)

上記に加えて、集中力の質には4つ目の要素があると考える。それが集中の練度(熟度)だ。

「集中の練度」とは、つまり「ルーティン」のことである。集中の練度は鍛えることができ、集中力の長さ・深さ・早さのすべてに影響を及ぼす。つまり、先述した式を

集中力の質=(集中の深さ+長さ+早さ)×集中の練度

と直すことができる。

集中力トライグラム

ルーティンと一口に言っても様々な段階があるが、私が集中の練度を高めるためには、まず「自分のルーティンを自覚すること」だろうか。

(向き不向きがあるのかもしれないが、「自分のルーティンを作る」というのは、あまりしっくりきていない。試したことはあるが、決めたルーティンをすることに意識が向いてしまい、却って気が散る。)

「お前集中してるときとか、ぼ~っとしてるときこういう癖あるよ。」等々あったら教えてもらえると嬉しい。(集中すると前髪を弄ってしまうことは自覚している。)

3.成果を出すためには

職業や組織や家族などの環境、つまり「外的要因」に起因する「職能の器」と、自分に備わっている性質、つまり「内的要因」に起因する「集中力の質」の相性によって、パフォーマンスは劇的に変化する。つまり、才能を発揮するために必要なアプローチの半分は「外的要因」を整える事にある

(太字による強調は筆者が施した)

ここまでは、「内的要因」についてだ。そして、成果を出すためには、内的要因と外的要因を擦り合わせることが重要である。

就活を例に出せば、自身に合う会社に入社したいのであれば、「自己分析(内的要因)」と「企業分析(外的要因)」の両輪の擦り合わせが必須ということになる。よく「自己分析が一番大事」と言われるのはこれが理由だろう。

そして、内的要因における集中の練度(ルーティン)のように、外的要因についても自力でコントロールできる部分がある。

例えば、思い切って転職や種目トランスファー等で環境を変えてしまってもいいし、自身の集中の質に合わせて集中のサイクルをデザインしてしまってもよい。

私の場合、長期インターンで終日飛び込み営業をしたときには”午前中しっかり集中して、長めに昼休憩を取って、午後もしっかり集中する”よりも、”2,3件ピンポンする(15~30分)ごとに一旦集中を切り、2,3分の時間をおいてからもう一度集中しなおす”という集中の方が、件数は同じでも高い成果を出した。

私は前者の方法であれば、2時間を過ぎたあたりから雑念が入るが、後者であれば、昼休憩を入れずとも10時間後も目の前の仕事に集中することができるため、自分の「認識している集中の質」は「実際の集中の質」から大きく乖離していないのでは、と思ったり。

このように内的要因を自己分析し、外的要因を意識的にコントロールして自身の集中の質(内的要因)に合わせていくことが、持っている力を最大限引き出すことに繋がる条件のひとつのように思う。

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