新型コロナウイルスとの闘いは続く:後編(2020年7月4日)
東京は2日連続で新規感染者が100人を超えましたが、東京都も国も、今すぐ手を打つことに躊躇しています。世界でも同じ状況で、経済活動を再び止めることの難しさが浮き彫りになっています。今週号のThe Economistは、こうした中で一人ひとりの意識と行動の変容が重要だと訴えています。昨日共有した記事の後編もどうぞご覧ください(前編はこちら)。
英語原文は、以下からどうぞ(後編はAnd economies have adapted. からです):
新型コロナウイルスとの闘いは続く(後編)
2020年7月4日
そして、経済活動も状況への対応を進めている。もちろん、経済への打撃はまだ存在しており、J.P.モルガン銀行によると、同行がカバーする39の経済圏では今年上半期における落ち込みはGDPの10%程度と予想されている。しかし、Zoom経由での仕事がすっかり定着した人々は、在宅勤務でも驚くほど多くの仕事がこなせることに気づいている。中国ではスターバックスが「非接触型」のオーダー方式を生み出し、顧客の店舗滞在時間を削減している。停滞に苦しんだサプライチェーンの運営も円滑化している。工場はシフトをずらしたり、アクリル板で仕切りを設けたり、人と人の接触が最小限になるよう作業パターンを変更したりしている。
政府は、国全体のロックダウンを解除した現在では、屋内での大規模な集会は禁止するが、学校や店舗の再開を認めるなど、賢明なトレードオフを行うようになった。米国のいくつかの州のように、規制を緩めすぎて方向転換を迫られることがあっても、そうした過ちから学ぶ動きもあるだろう。
問題は、治療法やワクチンのない状況での感染拡大の封じ込めは、人々の自覚と行動変容に依存していることだ。最初のパニックの後、多くの人々は感染防止対策に関心を失い、抵抗すら見せている。マスクはウイルスの拡散防止に役立つが、ヨーロッパや米国では「骨抜きにされる気がする」、さらには「民主党員的だ」という理由でマスクの着用を拒否する人もいる。手洗いを徹底すればウイルスは死滅するが、ついつい以前のように適当に済ませてしまうようになった人も多いだろう。パーティに出かけるのは危険だが、若者たちは何か月も続いた閉じこもり生活にうんざりしている。何よりも重要なのは、月日が経つにつれて、人々は生活費を稼がなければならないという事実だ。秋になり屋内の生活が中心になると、感染がまた急拡大する可能性もある。
社会規範を変えるのは難しい。AIDS(後天性免疫不全症候群/エイズ)を例に考えると、AIDSの原因となるHIVウイルスへの感染は安全なセックスと清潔な針で予防できることがすでに長年にわたり知られている。しかし2018年には170万人が新たにHIVウイルスに感染した。新型コロナウイルス感染症はAIDSよりオープンな話題だが、感染防止はより困難である。マスク着用は主に他人を守るためであり、若者、健康な人、無症状の人でも、高齢者や病気にかかりやすい人を守るために、面倒でもこのルールに従うことが求められている。
行動を変えるには、国や地域の信頼できるリーダーからの明確なコミュニケーションが必要である。しかし今、多くの人々は政治家を信用していない。米国、イラン、イギリス、ロシア、ブラジルなどの感染拡大国では、大統領や首相はウイルスの脅威を軽視し、一貫性のある対策をとらず、間違ったアドバイスをしている。そして国のことよりも自らの政治的な立場を守るのに必死だ。これらすべてが当てはまる人物すら散見される。
新型コロナウイルスは少なくともまだしばらくは猛威を振い続ける。リスクを恐れる人々は外出を控え、技術革新は鈍化し、その結果、経済の回復は90%にとどまって完全な回復には至らないだろう。多くの人が感染し、死亡者も増加する。人々の警戒心は徐々に失われつつあるのかもしれないが、パンデミックの脅威は決して過ぎ去ったわけではない。(おわり)
***
健康で安全に、よい週末をお過ごしください!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?