日本企業による外国人材の採用増加に思う
最近、中国人学生が日本企業への就職を希望する動きが増えているというニュースを目にしました。
高学歴でも就職難が続く中国と、各分野で人手不足が深刻化する日本、このことについては、別に目新しい話題でもなく、これまでもあちこちで見聞きしていたように思います。
ただ、これまで僕の中では、この二つのことについて、別々なフラスコの中での出来事と捉えていたので、このニュースにより、はじめて結びつけて考えるようになったのが正直なところです。
確かに、採用に比較的有利に思われる上場企業ですら、最初に内定を出した学生全員から内定辞退を出されてしまった、というような話も聞きますので、企業側が思うように学生を採用できなくなっている昨今、特に海外展開する企業からすると、中国人学生の採用に関心を持つのは、自然なことなのでしょう。
実際、このニュースをきっかけに調べてみると、楽天やカシオ計算機といった企業は、中国人にかかわらず、外国人材の採用を積極的に進めています。楽天は社内公用語を英語に統一し、外国籍エンジニアが多く活躍していますし、カシオは多文化に対応した職場環境の整備を進めているようです。
NTTコムのように国内に基盤があるような大企業も、来年度の外国人採用は倍増させるようです。このレベルになると、さすがに採用に困るようなことはないのではと思うのですが、それでも優秀な人材確保という点では、日本人学生だけを相手にしていては、厳しいということなのでしょう。
当然ながら、受け入れ側にとっては言葉の壁や文化の違いといった面について配慮し、社員の融和にも気を配らなければならないため、どんな企業でもできるわけではありませんし、同じように人手不足に悩んでいる公務員や教員は、現状では外国人を日本人と同様に採用することはできないため、外国人材を活用できる組織と、できない組織に、国内でも二極化が進むように思います。
また、こうした採用が拡大すると、日本人学生がこれまで得てきた席が奪われる構図になり、排外的な主張が勢いを増す可能性もあります。このへんは、日本の移民問題と同様に、名より実を取るかたちで、ステルスで進めていかないと、政治的な規制がかかる可能性もあります。
僕としては、この流れは前向きに捉えていますし、自分の属する組織は、今のところ外国人採用には消極的ですが、国内外における日本人以外のマーケットの比重が高まることを考えると、日本人にはない視点を持つ優秀な人材確保のルートは、持っておいた方が良いでしょうね。
国と国の関係においても、お互いに排外的になり壁を築き、自分の殻に閉じこもれば、それだけ衝突のリスクが高くなりますので、インバウンドだけでなく、こうしたかたちでの人の交流の深化は、隣国同士、大事ではないかと考えています。