島にあるトンネルの先は
自分は相談相手に恵まれていると思います。とはいえ、自分が今の軌道から外れるような動きは、相談する相手にとっても手に余るでしょうから、軽く相談はできても、残りは自分で悩むしかない状況です。
今の悩みは、目の前にトンネルがあって、そのトンネルに入るかどうしようかを迷っている、そんな感じでしょうか。トンネルの手前の、現在、自分がいる島は、それなりに食べ物も実り、水も手に入り、雨露をしのぐ家屋は小さいながらも確保されています。知り合いもいて、それでいて匿名性はある程度確保されているので、プライベートの隅々まで知られるようなことはありません。自分の公私を使い分け、そこで二面性を持ったままでも、生活することはできます。
トンネルの中に入った人は見たことがありますが、それは随分昔の、まだ自分の年齢をさして自覚していない、若い時分のことであり、その後、トンネルから人が戻ってきたかを確認していないですが、少なくとも元の姿で戻ってきてはいないような気がします。トンネルの先がどうなっているのかわかりません。枝分かれして、最後は迷宮のようになっているのか、途中に魔物がいるのか、トンネルの先に新たな大地があって、この島とは違う、向こう岸の大地につながっているのか。島からうっすらと見える大地には、リアルに接したことがありません。
人のうわさでは、大地にある町は華やかそうでもあり、楽しい世界が広がっているようですが、トンネルに入り大地への出口を探さない限り、そのことを確認する術はありません。
時折、島の岸辺に打ち上げられる画像は、いつの時代のものか確認しようがなく、それが昔日の姿であった場合、トンネルを超えた先には、繁栄の時代を過ぎた世界が広がっている可能性もあります。守りに入れば、今の島に居続けて、何となくそれでいいよと言われながら、年長者の言いつけを守り、後進を育て、序列の中でゆるゆると押し上げられるのを待つというのもありでしょう。
先行者利益というのは、誰も試したことのないトンネルに入ったものだけが得られるのでしょう。そこを、背中を押してもらいたいと思う心も、自分の弱い心の現れです。財を投げうつのか、心を鬼にするのか、身を捨てるのか。自分が島にいることを知ってから、外の世界の存在を知るようになってから、2年が過ぎ、3年になろうとしています。中途半端の先には未来はない、この半年が勝負で、そこで自分が本気になることで、また、周囲の人に自分の選択を納得させることができます。
夢ではない現実で、悔いのない選択をしたい。砂時計は容赦なく落ちており、時間は残されていません。