郷土史
昨日は鎌倉幕府成立時に活躍した東国の有力武士に関するシンポジウムが、午後から開催されました。交通の便が良いとはいえない、地方都市の文化会館での開催であり、天候にも恵まれませんでしたが、満場になるほどの事前申し込みがあり、実際にソーシャル・ディスタンスシフトの会場はほぼ満席となっていました。
大河ドラマで鎌倉幕府を支えた有力武士たちには注目が集まっており、そうした機運の盛り上がりの中での開催だったということもありますが、内容は、当時の東国の状勢をマクロ的に俯瞰しての解説、歴史的事件の背景を調べるにあたっての史料の取り扱い方、歴史的事件が起こる背景から後日譚までを史料から読み解いての解説、最後に質疑応答というかたちで、かなり深掘りして、参加者した人たちの今後の郷土史探究に、大いに刺激を受けたことと思います。
先週、お会いした方とも話題になりましたが、郷土史というのは、小学校時代にある程度学ぶものの、そこで公教育での学習は打ち止めで、その後の中学受験や高校受験は、日本史、世界史といった受験に出るような、メジャーな項目を覚えるだけで精一杯になってしまい、中途からは歴史を学ぶこと自体もやめて、受験勉強に入っていく人も少なくありません。小学校自体も、情報科目や英語が入ってきてカリキュラムに余裕がなくなっており、リベラルアーツたる郷土史の存在感はいよいよ薄まっているように思います。
そのため、郷土史というのは大人の学び、特に社会の一線をリタイアして地域にいる時間が長くなったり、移住して地方に住んだりした高齢者が、時間的余裕の中で地域に目を向け関心を持ち、郷土史研究を支えているように思います。
学術研究は、若い研究者が安定的に入ってきた方が、その柔軟な思考力で研究が前進するのかもしれませんが、こうした郷土史研究は、社会を発展させ人々を豊かにするような力はあまりなく、稼ぐという面ではそれほど期待できません。
このため、社会が多くの研究者を丸抱えするのは難しいと思いますが、地域の世代を超えたつながりをつくることが可能で、初心者も引け目に感じることなく、高齢者でも無理のないペースで探究を深めることができるので、生涯学習だけでなく、福祉の分野でも、郷土史のニーズはあるように思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?