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真夏に夜行列車の復権を考える

 今年の夏のダイヤでは、JR東日本が中央線・大糸線を運行する夜行列車として、特急「アルプス」の運行を発表したことが話題になりました。

 北アルプスに向かう中央線・大糸線の夜行列車は、戦後ながらく、急行「アルプス」が運行されていましたが、21世紀になり廃止、後継列車として、季節運転の快速「ムーンライト信州」が夜行運転されるようになりましたが、これも平成30年を最後に運行を終了したので、6年ぶりの復活、ということになるのでしょうか。

 現在、定期運行している夜行列車は、電車寝台特急の「サンライズ瀬戸・出雲」のみであり、あとは東武鉄道が浅草から会津高原尾瀬口に、夏と冬に臨時の夜行列車を運行しています。

 平成20年代までは、「ムーンライト」を名乗る快速列車が、青春18きっぷの利用設定期間である、夏休み、年末年始、春休みを中心に、各地で運行されており、
また、ムーンライト以外にも、定期列車の寝台特急や夜行急行なども多く運行されていましたが

・格安高速バスの運行や、ホテル料金の低価格化、社会全体の高齢化による夜行列車需要の減少
・JRの複数会社にまたがって運行することの調整の難しさや、夜行列車運行による駅の夜間人員配置によるコストや、保線作業の時間確保が難しくなるといった運行サイドの事情
・新幹線の開業延伸により、北陸本線や信越本線などの主要幹線が第三セクター化され、長距離旅客はすべて新幹線にシフト

といった事情により、次々と廃止になりました。

 今回の特急「アルプス」の復活の意図は、よくわかりませんが、かつて夜行列車を廃止に追い込んだ社会環境の変化は、ここ数年で再び変わってきているように思います。
 インバウンド需要で、ホテル代は高騰しており、格安高速バスは、運転手不足もあり、需要にかかわらず減便される動きも出ています。

 夜行列車を運行することによるコストや保線作業の時間確保の課題、並行在来線の三セク化といった事情は変わっていないわけですが、個人的には、去年、今年と続いている、夏の高温が、夜行列車の復権を後押しするように思います。

 このままでいけば、数年後には夏の最高気温40度越えが当たり前になり、日中の移動は難しくなってきます。
 通年とはいいませんが、夏の間だけでも、夜行列車は臨時運行することで、ホテル代高騰で宿泊費を節約しようとする旅行客の需要を取り込めるように思います。
 
 寝台列車用の車両は、ながらく新造されていませんが、こうした社会環境の変化に対応して、JR6社共通でも、新型の寝台列車用の車両を新造してほしいものです。

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