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[実体験] ストーカーの心理学。刑罰重罪化でストーカーはなくなっていくのか。

こんばんわサイモン心理大学です。
 
今回はストーカーについてご紹介したいと思います。
 
刑事事件が年々少なくなった現代、
しかしストーカーの数は年々増え続けています
 
私もストーカーに遭ったとまでは言わないですが、待ち伏せやつきまといに遭ったことがあります。
あの恐怖感は二度と味わいたくないですね。
 
あなたがストーカーにあったとき、どのように対処すればいいのか
実際に遭遇したなら迷うこと、かと思います。
 
実際に

篠崎 (しのざき) 氏などの行った調査では、約8割がストーカーに関する知識が低いという結果が出ています。

篠崎 etc, 2018

 多くの若者が、ストーカーに対する防犯意識を持たず
さらには、自分がストーカー被害に遭っていて相談するべき状況だという認識もできていない場合があります。

約2割の人が、ストーカー規制法を知らなかったとも答えています。

篠崎 etc, 2018

自分の身を守るために知る必要があります。
 
そこで今回はストーカーとは何か

どのように対処すればよいのか
ストーカーの心理状態とは一体どんなものなのか
警察が何をしてくれるのか
 

そんなことをお話をさせていただきます。  

ストーカー発生件数

令和5年、ストーカーの相談件数は19,843件でした。(生活安全局人身安全・少年課, 2024)
 

ストーカー認知の実態

まずは、ストーカー被害の実態からご紹介します。
小畑氏ら (2020) が、18歳から25歳までの大学生968人を対象にストーカー被害実態調査を行いました。
 
調査の結果

14% (134人) が「別れた恋人から執拗な連絡」などを受けたことがあると答えました。
(男性32人,女性102 人)

小畑氏ら (2020)

これはおよそ7人に1人が被害に遭ったことがあるということになります。
 
そして

身近に被害に遭った人がいると答えた人は、22.8% (214人) に及びました。

小畑氏ら (2020)

これは、ストーカーというものが、皆さんの身近に存在していると考えていいと思います。

誰にストーカーされたか、については

別れた交際相手」が20.9% (28人)
交際相手ではない学校関係の友人・知人」が22.4% (30人)
知らない人」8% (8人)
※無回答:31,3% (42人), その他:アルバイトの人などでした。

小畑氏ら (2020)

つまり、多くはあなたの知っている人がストーカーになりうるのです
他の調査でもそうですが、ほとんどの場合、ストーカー相手が「元交際相手」ということになります。

ストーカー行為の期間については

平均:6か月ですが、かなりばらつきがあるそうです。
6か月未満:約60.5%と半数以上。
1年以上:17.4%
5年以上:も少数であるが、あったとのこと。

被害に遭った人の中で、警察に相談・通報したのは、
およそ5.9% (8人) でした。

 警察へ相談しなかった理由については、

「小さな出来事だから」
「プライベートで個人的なことだから」
「自分で何とかできると思ったから」

被害を過小評価していることがわかりました。
 
また、警察へ相談することに対して

「相談したら面倒そうだから」
「解決しない」
「警察は何もできないと思ったから」

と回答し、ストーカーについてや、警察がどのように対応してくれるかなど
多くの人に理解してもらう必要があるとのことです。
 
簡単に実態を見てもらったところで、さっそくストーカーの心理について紹介したいと思います。
ストーカーを理解するところからいきましょう。
  

ストーカーの心理とは

「多くの人は、時間の経過とともに気持ちに整理をつけ、ストーカー的行動も自然におさまっていくものなのである

福井 (2016)

 相手の拒否などにより、ストーカー行為をしたとしても自然となくなっていきます。
それでもつきまとったりする者が、いるのです。
 
その定義は、ストーカー行為者が、

「相手側の発したメッセージによって思考や行動を修正できるかどうかにある」

福井 (2016)

つまり、相手からの拒否、警察からの警告
これらがわかっていたとしても、ストーカー行為がやめられない場合があります。
自身の気持ちと行動をコントロールすることができない状態なのです。
 
ストーカー全体の特徴としては、

「行為者の被害者に対する執着心や支配意識が非常に大きい
「行為者に犯罪であるという意識が薄い
強い殺意を抱いている場合、検挙されることを考慮せずに大胆な犯行に及ぶことがある
「被害者自身が危険性を過小評価していることがある」

篠崎etc, 小池:2018)

ということがわかっています。
 
このような状態の人のことを
精神科医の福井裕輝氏は「ストーカー病」と名づけました。

ストーカー病
揺るぎなき被害者感情、激しい思い込み、愛憎入り交じった執拗さ、飛躍した衝動性などが一貫してみられる」

福井 (2016)

状態だそうです。
 
福井氏 (2016)が、ストーカー行為を4つのパターンに分類して説明しています。

「執着型」
「一方型」
「求愛型」
「破壊型」

福井氏 (2016)

順番に説明します。

執着型」とは、元交際相手や配偶者などがストーカー化するというパターンです。
復縁したいという欲求から始まるが、結果的に相手への復讐に目的が変わり、傷害事件や殺人事件に発展しやすい

福井 (2016)

また、職場の人間、医者と患者の関係、教師生徒などのパターンもあるそうです。

一方型」とは、顔見知りやほとんどしらない相手から接触を計ろうとして、恐怖や混乱を与えるストーカー行為をするというパターンです。

福井氏 (2016)

理想の人、タレントやアイドルなどに恋愛感情を抱き、ストーカー化してしまうパターンのことです。 

求愛型」とは、相手との相思相愛の関係を持ちたいという一方的な意図からストーカー化するというパターンです。

福井氏 (2016)

全く知らない人というわけではなく、例えば、友人の友人からストーカーされるようなパターンのことです。
自分の気持ちをうまく表現することができず、ストーカーになってしまうのです。 

破壊型」とは、自己中心的な欲求を満たすために、ストーカー化するパターンです。

福井氏 (2016)

相手を自分のものにしたい、性欲を満たしたいなどの目的からストーカーとなってしまうパターンです。
 
また、これらのパターンには、精神的な病が関係しているとのことです。
 

「執着型は、自己愛性パーソナリティ障害
自己愛性パーソナリティ障害とは、自己の重要性を過度に大きく捉え、過剰な賞賛を求めたり、他者に嫉妬したりすることを特徴とするパーソナリティ障害のことです。(誠信 心理学辞典, 2014)

 福井氏 (2016)

傷つきやすさももっており、復讐心に代わる場合もあるのです。 

「一方型は、統合失調症や妄想性障害
恋愛妄想などを生じ、『自分と相手は深く愛し合っている恋人同士である』という思い込みからストーカー化してしまうとのことです。

福井氏 (2016)

また、『見捨てられるのではないか』という嫉妬心からストーカー化する場合もあります。 

「求愛型は、広汎性発達障害傾向
自分の気持ちをうまく表現できない、相手の気持ちを読み取ることも難しいのです。

 

「破壊型は、反社会性パーソナリティ障害
一般的にはサイコパスのような人のことです。

福井氏 (2016)

自分の目的のために他者を利用しようとするのです。
 
 

ストーカーを行う理由

なぜストーカー行為を行うのでしょうか
もう少し深堀ってみましょう。
 
金政 (カネマサ) 氏らは、ストーカー実態調査のため、1,884人の18歳から39歳の男女に対して郵送調査を行いました
その結果、

女性は、性格や交際時の関係性がストーカー行為と関連していたのですが、
男性は、性格や関係性との関連が見られなかったそうです。

そして

男女ともに関係破綻後には、反芻思考 (ネガティブな考えが離れない状態、独善的執着がストーカ行為と関連するという結果が出ました。(金政etc,2017)

つまり、別れ方や別れた後の経験によっては、男女ともにストーカーになる可能性があるのです。
 
また、福井氏が、ストーカー行為の原因を2つ紹介しています。

「他人の不幸は蜜の味」
そして
「感情の整理ができない」です。

「他人の不幸は蜜の味」とはどういうことか。

「ストーカー加害者は、自分の理屈の上では相手を愛していると思っている。 ゆえに、いくら相手に拒絶されても求愛のメッセージを送り続ける。その一方で、自分を切り捨てた相手への恨みを募らせ、時には残酷な手段を用いて相手を苦しめる。その言い分と行動は非常に矛盾している。」

福井 (2016)

「その理由は、自分を裏切った相手を不幸に陥れ、苦しむ姿をみたいからだ。」と説明しています。

福井 (2016)

 この場合、ストーカーを行う理由は、相手を苦しめるためと見ることができます。
相手の苦しむ姿を快楽だと感じ、逆に相手が幸せそうだと裏切られたように感じてしまうそうです。
 

俺なしで幸せになりやがって (など) 

 「感情の整理ができない」とはどういうことか。

「ストーカー加害者は、一人の人を延々と思い続け、何年も恨み続ける。筆者が診察した加害者の多くも、1年、2年、5年といった歳月をストーカー行為に費やしていた。ストーカー行為自体は収まったものの、10年にわたって相手に関心を持ち続けている人もいる

「他人の不幸は蜜の味」の状態が、かなり長期にわたって続いている」

福井 (2016)

 つまり、ストーカー行為を行う理由があるわけではなく、やめられない状態だということなのでしょうか。
 
福井氏が、ストーカー加害者と対話していく中で、

「彼らの思考、行動、感情に一貫性がなく乖離している

福井 (2016)

と感じたそうで、感情の整理を促すもなかなか実行できないと述べています。
  

ストーカー相談

ストーカー被害の相談は、年々増え続けています
それは、ストーカー被害だと認知するようになってきたという側面もあります。
 
その中には、相談しなかったというケースも存在します
なぜでしょうか。
 
最初に紹介した小畑氏ら (2020) の調査では、

「小さな出来事だから」
「プライベートで個人的なことだから」
「自分で何とかできると思ったから」

ということがわかりました。
 
これが暴力の場合でも相談しないことがわかっています。 

恥ずかしくてだれにも言えなかった」が約5割

「相談してもむだだと思った」
「自分さえがまんすれば、なんとかこのままやっていけると思った」
「そのことについて思い出したくなかった」が約3割

 また、相談について

懐疑(どんな人が担当になるか分からない,不快なことをいわれる等)
コスト(連絡・相談するのが面倒だ等)
知識の不足(どこに相談してよいか分からない,相談機関をよく知らない)
羞恥(家族や周りの人に知られなくない,恥ずかしい等)
関係断への懸念(相手と別れないといけなくなる,相手が処罰されるかもしれない)」

島田・城間, 2017

という理由があることが分かったそうです。 

自分がどんな被害に遭っているのか
どこにどのように相談すればよいのか
そして、良い関係性とはどのようなものなのか

知る必要があり、
 
相談できない理由にも配慮し、対応していかなければならないようです。
  

警察の対応

 警察にもしも相談した場合、実際に警察がどのように動いてくれるのか見てみましょう
 
ストーカー被害の相談後、警察がストーカー行為だと判断した場合、

―加害者への書面警告
―被害者への防犯指導
―自宅周辺などを警戒パトロールしてくれる
―防犯ブザーなどの緊急通報装置を貸出してくれる
避難シェルターを紹介される

などを行ってくれます。
 

書面警告については、およそ9割のストーカー行為がおさまったとされ、かなり効果的だそうです。

篠崎etc, 2018

そして、相談者が危険な状態だと判断された場合は、
一時的に避難できるシェルターを紹介してくれます
 
ストーカー (被害者) 専用のシェルターについて、私は知りませんでしたが、
DVのシェルターがあるのは聞いたことがあります。
 
DVのシェルターの住所は一般公開されていないため加害者には見つからないようになっています
 
 

ストーカー対策の難しさ

 しかし、小畑氏ら (2020) の調査でもある通り
「警察は何もできない」という意見があります。
 
ストーカー規制法ができる前、あるいは、改正される前では、警察が取り締まることのできない、未然に防ぐことのできなかったケースもあったようです
 
現在は違いますと言いたいところですが、実際に対策の難しさは存在しているようです。
 
ストーカー対策の難しさについて、青山氏 (2016) が警察の立場から3つ紹介しています。
 

一つ目は
被害者や相談者(親族、友人等)に正しい現状認識をしてもらう難しさ」です。

青山, 2016

つまり、警察へ相談へ来て、避難することを勧めるが

「とりあえず話だけ聞いてもらえれば」とそれ以上の介入を拒絶する
また、避難したとしても無断で逃げ出したりしてしまう
加害者と連絡をとってしまうなど対応を難しさがあるようです。

青山, 2016

二つ目は
「緊急的な対応や、(たとえ逮捕しても早期に釈放されてしまうことから)長期的・継続的に警戒を要する案件の増加により、現場の負担が増大していること」

地方警察官の増員
一時避難のための経費
監視警戒システム
監視カメラ

などまだまだ不十分なようです。
 

三つ目は
「ストーカー加害者が行為をエスカレートさせないように、あるいは、再発させないようにするために、早い段階で防止対策を講じること」

再発防止に関しては、長い期間を必要とし、多くの人員を必要とします。
そのために、地方自治体や関係機関などの助けが必要なようです。
 
また、被害者やその周辺の人に対して、知識を広める活動もよりしていかなければならないようです。
 

ストーカー対策

また、ストーカー相談の危険度を判定するチェック票も全国の警察で始まったそうです。
 
これは福井氏が作成したもので、

被害者の申告を元に、加害者の危険度を測ろうとするもの」です。
※加害者にテストしてもらうものではなく、被害者が書くものです

福井 (2016)

 加害者の危険度が高かった場合、警察により加害者へ警告を出したり、被害者を避難させ凶悪犯罪を未然に防ぐことができるとのことです。
 
また、危険度の高い加害者に対して、警視庁が治療を促す試みを始めているそうです。福井 (2016)
  

刑罰

日本でもストーカー行為による凶悪事件がありました。
 
事件が起きるたび、ストーカー規制を改正されてきたように思います。
 
そこでたびたび言われるのが、

もっと刑罰を重くしろ」という意見です。

 果たして、刑罰を重くすることで、ストーカー行為の抑止になるのでしょうか。
 
福井氏はこんなことを述べています。

「ストーカー病の加害者に自殺願望がある場合刑罰は抑止力にならないのである」

福井 (2016)

「一個の生命体としての実感が薄く、自分の存在価値を十分に認識できないからだと思われる。
自己の命の尊さを感じられない者は、他者の命も同じ重さでしか感じられない

福井 (2016)

 SNSなどの発展により、人と人のコミュニケーションはより希薄になっていったと言われています。
 
人々は孤立し、自分を認めてくれる何かを探しています。
存在意義を実感することができず、鬱々とした人が増えてきたように感じます。
 
そんな中、自分に恋愛感情を抱く人に固執してしまうのは、
社会的な現象というべきなのでしょうか
 
自分の命の尊さを何で感じることができるのでしょうか。

 

最後に

以上がストーカーの説明になります。
 
冒頭に話しました私の付きまとわれ体験ですが、2回ほどありました。
どちらも同性にでした。

1回目は自ら勇気を出して「近づかないでくれ」と伝え、終了しました。
2回目は目上の人だったので、自ら距離をとり、それ以降会っていません。

 当時は、やはり電車を降りるときでも周囲を何度も確認したり別の駅で降りたりするなど生活にかなり支障がでていました。
 
私のような初期のつきまとい行為であれ、当時は、現在進行形で被害に遭っているといえる状態です。 

もしもあなたに心当たりのある場合は早急に (警察などへ) 相談してください

 
動画でも話した通り、ストーカーについての知識はまだまだ認知されていない現状です。
恋人への束縛が過剰になり、自身がストーカー行為となっている場合があります。
自分の気づいていない加害が存在しているのかもしれません

気になった方は、ぜひ一度ストーカー行為とは何か見てみてください。
※リンクを張っています。

・警視庁, 2024年度閲覧「ストーカー規制法」


引用文献

・小畑 千晴, 中島富美子, 青木 宏 (2020)「若者のストーカー被害実態調査」徳島文理大学研究紀要 第99号
 
・青山彩子 (2016)「警察におけるストーカー対策」刑法雑誌, 55 巻 3 号 p. 451-458
 
・篠崎真佐子, 小池安彦, 西田勝志, 廣井亮一 (2018)「ストーカー対応の現状と課題」法と心理学会第18回大会,18,1,34-40
 
・島田貴仁, 城間益里(2017)「ストーカー・DV・デート暴力被害者の専門機関相談の規定因―相談に関する知識,自己隠蔽,被援助志向性の検討―」日本心理学会第81回大会
 
・金政祐司, 島田貴仁, 山本 功, 荒井崇史, 石田 仁(2017)「ストーカーについての実態調査 (3) ―愛着不安,自己愛傾向,交際時の関係性ならびに関係破綻後の思考や感情とストーカー的行為との関連―」日本心理学会第81回大会
 
・福井裕輝 (2016)「ストーカー加害者の病理と介入」刑法雑誌 (55・3・81)
 
・誠心 心理学辞典 [新版] 誠信書房, 2014, p.427
 
・内閣府男女共同参画局「男女間における暴力に関する調査 報告書」令和6年3月
 
・警視庁, 2024年度閲覧「ストーカー事案の概況」
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/about_mpd/jokyo_tokei/kakushu/stalker.html

・参考文献

・生活安全局人身安全・少年課 (2024)「令和5年におけるストーカー事案、配偶者からの暴力事案等、児童虐待事案等への対応 状況について」

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