【19】 臨時教育委員会・浸水想定区域編 「教育委員の騙し方」
昨日から今日にかけて、だいぶ落ち込んでいた。昼ごろ佐伯さんに電話したとき、思いがけず涙が出てきて、あぁ私泣きたかったんだなとわかった。佐伯さんは相変わらず何もあきらめてなくて、もう次の目標に向かっていた。それがおかしくって吹っ切れた。
昨日の蔵本くんの陳述は、胸にしみるものだった。
rkbも、ここのところを切り抜いていたけれど、確かにこの部分が、陳述の核だったなと改めて思う。盛土すれば、自宅が1m以上浸かる場所になる。最悪、死ぬことだってあるかもしれない。それでも市は、引っ越し代も、家財補償も出さないと言う。であれば、「それでもしょうがない」と思える根拠をください、と。「もっといい工法がないか、学識経験者を入れて検討してください」と言っているのだ。
ここまで言われ、それでも断れる人がいると、私は思わなかった。でも、結論から言って教育委員たちは全員が全員、一度も手を挙げなかった。すべてを否決した。「一刻も早く、学校を建てなければいけない」、バカみたいに単純で不勉強なその考えだけで。
それは、
流域住民が死ぬかもしれないことより
学校を早くつくるほうが大事です
というメッセージだ。
どんな言い訳をしようとも
間違いなく
そういうメッセージだ。
それを忘れるな。
今からいのちと財産を危ぶもうとしている人たちを前に、よく平気で座れるな。心が氷のように感じた。目の前にいる教育委員さんたちや、彼らを操る教育部の面々が、血の通った人間に思えなかった。
X X
じゃあ昨日の会議を振り返ってみる。
請願項目
盛土造成前に比べて盛土造成後、どのくらいの降雨量のときに周辺地域の浸水が始まるようになるか(多段階浸水想定)を教えてください。これは内水浸水想定では分からない情報です。
私が教育委員さんたちのなかで、いちばん期待していたのは村井弥生さんだった。彼女は前回の教育委員会の中でも、一番、請願者の現状に心をいためているように思えた。そして村井さん、今回も同情の気持ちから始まった。
けれどすぐに、教育部に丸め込まれていく。
私は心の中で、「嘘つけ!」と声をあげていた。すでに解析モデルは済んでいるから、急げば2〜3週間でデータは上がると、私は調査会社から聞いている。こんなでたらめを言う教育部をなぜ信じるのだ。なぜ村井さんは自分で調査会社に問い合わせないのだ。人の命がかかっていることなのに。全部人任せだからこうなる。
次は田中一郎さんが手を挙げた。前回の教育委員会で、やけに課題規模校に通う子どもたちが被災したときのことを心配していた方だ。「ため池、洪水、高潮のトリプル浸水想定区域のど真ん中にある新しい学校のほうが危ないということにはなぜ気づかない・・・」と傍聴に来た人たちが口々に驚いていた、あの方だ。
おいおい、蔵本くんがさっき配った、文科省の「水害リスクを踏まえた学校施設の推進のための手引」に、「対策目標浸水規模を多段階で設定することが重要である」って書いてあるんじゃん。なんで自分で読まないの? たとえ義務じゃなくても、浸水想定区域に学校をつくる場合には、多段階浸水想定を出すことが文科省の意向だし、住民だけじゃなくて、生徒たちのためにも取り組んだほうがいいに決まってるじゃん。何で教育部に聞いてんの? 要らないって言うに決まってんじゃん。
吉崎教育総務課長のお得意の、”専門用語散りばめ騙し”役人構文が始まった。
何言ってるかわかるだろうか? 吉崎教育総務課長だって、これを相手がわかっているとは思うまい。わからないだろうと思って、わざと煙にまいているのだ。ある種、優秀な役人である。田中さん、わからないならわからないって言ってくれよ。わからないまま、市民の命のかかった決定をしないでくれよ。なのに、田中さんは聞き返すことなく、早速話を変えてしまった。
「なんかやるから大丈夫」っていうことにしたいのかな、という質問である。教育部は、地点9に対してなんの対策も立ててない。しかし「何もない」ことを話すのに、吉崎教育総務課長は「ある」と話す、ものすごいテクニックを使うのである。
わかりますか、田中さん? これ、ぜんっぜん答えてないですよ。なのに答えてるように見えるお役人構文なんですよ。あなたは、ご親切に、「地点9の住民が安心できるような対策を何か考えているんだろう?」と聞いたんですよ、それに対して吉崎教育総務課長は、何ひとつ言ってないんですよ。ただただ「内水浸水想定出して、対策を立てます」と。で、具体的に何? 何もないんですよ。それでいいんですか? 納得していいんですか、田中さん・・・
今度は村井弥生さんが質問を始めた。
ほらね、村井さん、彼がなが〜い言葉で言ってるのは「多段階浸水想定は、しません」ということです。わかってますか? きっとわかってないのに、村井さんも聞き返さない。
この・・・・半端ない責任放棄感。お前ら、まじ教育委員やめろと言いたくなるレベルである。
まず、この状態で、田中さん。「安心できる説明を十分すればよかった」と。いやいや、安心できる説明をできると思ってるんでしょうか、この盛土計画で。説明の仕方で安心できるようになるとかじゃないでしょ。盛土計画自体に問題があるんですよ。
それから「河川は県が管理してる」からなんなんでしょうか? それが多段階出さなくていい理由になってるんですか?
「教育委員会の段階じゃなくて、もっと大きな市の行政で話してもらいたい」ってどういうこと? もっと大きなっていうけど、教育行政のトップは間違いなくあなたたちで、あなたたちが決すれば、市役所側の人たちはそうせざるをえなくなる。ご自分たちが、どれくらい大きな権限と責任をもってるか、わかってる? わかってて言ってる?
そして村井さん、「ここで賛成とか反対って言うことかなって思う」どういうこと? 間違いなくここが、賛成、反対決める場所だよ。 「調べれば調べるほど」っていうけど、自信もって賛成か反対か言えるように、なんで調べてこなかったんだろう。わからなければ、大学教授とか、わかる人に聞きに行けばよかったじゃないですか。ハザードマップ見た、そのほかに何をしたんでしょうか? こんなに理解放棄する人が、教育委員って、ほんとにいいの?
村井さんは、きっといい人なんだろうなと私は思っていた。でも不勉強すぎる。そもそもこの3人は、多段階浸水想定や内水浸水想定がどういうものかわかってるんだろうか。私には疑問に思えた。吉崎教育総務課長の専門用語に丸め込まれたまま、ちんぷんかんぷんの三人が、ちんぷんかんぷんのまま流域住民の命を握っている・・・。なんていう恐ろしい光景なんだ。
議決が始まった。
審議1は、全員否決で却下された。
傍聴席から大きなため息が漏れ、私たちは肩を落とした。でも、次がある。「学識経験者を検討に入れること」を採決してくれれば、それは大きな希望になる。だいたい、浸水想定区域に学校をつくるのに、学識経験者を入れないほうがおかしいのである。どうやって否決するんだ? 否決しようがないじゃないよね。
私たちはこのとき、まだ希望をもっていた。(続く)
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