花咲か爺さん

父が、
「もしもの時の為に駅の写真屋さんに写真を撮りにいく」
と言って、家を出たので、後を追った。父の行ったバス停は、目的の駅には行かないバス停だったのだけど、途中から写真を撮る目的を忘れ、バスに乗ることが目標になってしまったようで、バスが来たら乗るんだと言う。バスが来ると、私は運転手に向かって素通りしてくれとジェスチャーをし、運転手は怪訝な顔をしながらも状況を理解し、素通りしてくれていた。20分おきのバスをやり過ごしても、父は諦めず、
「もう少し待ってみる」
と言う。ただ待っているのもつまらないので、猫じゃらしを父に刺してみたり、父のポケットに花を入れ、花咲か爺さんにしてみたりしながら、1時間半たった。喉が渇いたので、父にお金をせびり、コーヒーを買い、父にはぶどうジュースを買った。2人で飲みながら、これは一日中バスを待つなあと思い、今日はデイサービスに行く日ではなかったものの、電話をし事情を話すと受け入れてくれ、またバス停まで迎えに来てくれて、父はデイサービスに行った。

デイサービスから帰ってくると、父はいつものようにおやつを食べ本を読みはじめた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?