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登山好きが集う黒百合ヒュッテで年越しを、標高2400mに響く陽気な南米音楽と共に

年越し登山は八ヶ岳連峰にて

2022年-2023年の年越し登山は八ヶ岳の「東天狗岳(標高2640m)」、宿泊は黒百合平(標高2400m)にある黒百合ヒュッテに決めた。黒百合ヒュッテに宿泊するのは実は2回目、開設されてから半世紀以上経つ山小屋で、その伝統的な雰囲気は往古来今の登山者の息遣いを感じさせる温かみのある山小屋である。

2022年3月、初めて黒百合ヒュッテに訪れた時の様子、宿泊した山小屋の中で1番温かみを感じた

登山口は渋の湯から、決して険しい道のりではないにしろ季節は冬である。しっかりと積雪しているため厚めの防寒着、冬の登山靴、アイゼンは必須、ついでに年越し用に普段は持っていかないお酒なんかも荷物に詰め込み、さあ出発だ。

ビーフシチューに思いを馳せて黒百合ヒュッテへ急ぐ

黒百合ヒュッテまでは、ほとんど一本道で迷うことはない。急登も多少あれどサクサクとリズムを刻みながらアイゼンで雪を踏みしめていけば、2時間ほどで黒百合平に到着できる。黒百合ヒュッテには大好物が待っていると思えば足取りもどんどん軽くなっていく。

周りには自分1人、大晦日の登山者は少ない

黒百合ヒュッテに辿り着いた時の楽しみといえば、やっぱりビーフシチューである。付け合わせは一切れのパンより量の多いご飯がおすすめ、なんたって黒百合ヒュッテから天狗岳へは往復2時間ほど、しっかりエネルギー摂取しよう。

食事は降り注ぐ日光で温かいテラスで食べよう

登り納めは「東天狗岳」

腹ごしらえをしっかりとしたらアタックザックに必要な荷物をまとめて、天狗岳へ向かう。一概に天狗岳と言っても東と西があり、遠目から見るとラクダのコブのようにポコポコと突き出しているのが特徴的。西の方が東より6m高いもののこだわりがなかったので、中川峠を経由して東天狗岳に向かった。西天狗岳へは東天狗岳を経由してから行かねばならず歩行距離が伸びるので今回はパスした。

左が東天狗岳、右が西天狗岳

山頂へ続く尾根付近になると雪は風に飛ばされてしまい積もりにくいため、岩と雪のミックス地帯となっている。当然アイゼンが刺さらない場合もあるので慎重な足運びが必要で、時間をかけながら登った。

写真では伝わらないが、かなりの急騰である(中川峠より)

ふと後ろを振り向くと遠くに黒百合ヒュッテの姿が見える。登るのに必死で気づかなかったが2000m超えの山なだけあって、なかなかの高度感。

高度感に圧倒されつつも程なくして東天狗岳の山頂にたどり着く。

そこまで広くはない山頂だが見える景色は格別に雄大で、遠くの方まで雪景色に染まった山々を一望できる。登ったことのない山々が今度はこっちに登りにおいでよと手招きしているかのよう。今年の夏はどこに登ろうかと思案し始める自分、山頂に辿り着いてからが次の登山の始まりなのだ。

次は夏に来ます!と山頂に別れを告げて、黒百合ヒュッテに戻る。
これにて2022年登り納めである。2022年の登山は前年と比較して肉体的、精神的にたくさんの挑戦をできた1年であった。2023年も成長できたと感じられるような山々に積極的に挑戦していきたい。

2022年の最後も良い笑顔、これからも笑顔を忘れずに登山したい

何十年も続く大晦日コンサートで夜が更けいく

黒百合ヒュッテは数ある山小屋の中で、大晦日コンサートの先駆けといえる存在らしい。南米音楽を専門に活躍されているプロ奏者の方により、矢継ぎ早に南米の様々な国の音楽が演奏されていく。この奏者の方も登山がご趣味だそうで、学生時代に黒百合ヒュッテで演奏したことを皮切りに毎年大晦日コンサートを開くために訪れているそうだ。

自分は大昔に南米のベネズエラ・ボリバル共和国という国に住んでいた時期があるため、ケーナやフォルケーナという南米の伝統的な楽器の奏でる乾いた伸びのある音色を聴いているとどこか懐かしい気持ちになったし、登ったこともないアンデス山脈の景色が浮かんでくるようだった。

チャフチャスというヤギ系の爪を利用した楽器を渡され、合いの手を打った

初日の出に2023年の思いを込めて祈る

年が静かに明ける、静謐な朝の空気を切り裂いて中川峠まで足を伸ばす。
ちょうど付近を覆っていた雲が一気に立ち去り、初日の出が現れる。
高所で見る太陽は心なしか大きく見える、白銀の冷たい世界を温かく照らし出してくれる存在はやっぱり頼もしくも見える。
そんな太陽に向かって「今年も良い年になりますように」と心の中で願い新年が始まった。


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