日光を旅する②-お料理編|中禅寺金谷ホテル&日光金谷ホテル
「おいしい」は、曖昧だ。
育った地域や家庭の食習慣による。もちろん人それぞれの好みも違う。
わたしは西のほうの生まれで、おでんの“はんぺん”は食べつけない。"ちくわぶ”を、”ちくわ”だと思って口にした時は、「何者?」という感じだった。
その反面、もともとそんなに好きではなかった穴子のにぎりが、東京の煮たものを食べて(すごくおいしい)と気づくようなこともあった。
20年ほどまえ、職場で50代半ばくらいの営業マンが生のウインナーを食べているのを目にしたことがある。
お弁当のタコさんウインナーより小さい一口タイプ。コンビニで買ってきたのだろう。袋から一つずつ取り出して、ぽんぽんと口に放り込んでいた。
わたしは思わずギョッとして訊いた。
「Yさん、生でウインナー食べるんですか!?」
「うん、ウマい!」
ありえない。在席していた部長のところにいき、
「部長、Yさんが生のウインナー食べてます。ウインナーを、生で食べてるんです」と伝えた。
部長はYさんへ顔を向け、
「そうだね」とだけ言い、また顔を書類にもどして仕事する。
(そうだ、ねぇ~?)
わたしは取りみだしていた。(お腹をこわすじゃないですか)と言っているつもりだった。ウインナーってどんな種類であれ、絶対に生で食べてはいけないもの。そう思い込んでいたのだ。
しかもウインナーって、焼いたり茹でたりして旨くなるものではないのか?それを、生で「うまい!」のだと…そのことが二重にこちらを混乱させた。
生のウインナーを次々と口に放り込みながら、うまいうまいとY氏。
その様子を見て、平然と書類にとりくんでいるI部長。
わたしは二人を、交互に見た。
そうはいってもこのY氏、豪華なものを食べ慣れている。まぁ営業だからそれはそうだ。どこかの女性社長にカニ料理に連れていってもらっては、二人さし向かいでカニを堪能したのだと得意げに話したりしていた。
一方で、こっちには甲殻類アレルギーの気がある。ガーリックシュリンプは大好きなので喉が多少イガイガしても食べてしまうが、カニを自ら好んで食べたいと思ったことはない。おいしいと思ったこともない。かける手間のわりに、お腹に入る量が少ないようにも思う。
なんだかんだいって普通の家庭料理が好き。幸いなことに安あがりにできている。
…というわたしが、歴史ある名門、金谷ホテルで3月にいただいたお料理について(写真メインで)お伝えしていく。もし宜しければおつきあい願いたい。(前置きが長くなった)
中禅寺金谷ホテル
パンは当然のこと、パターもすごくおいしかった。体のことを考えていつも控えめにしているが、このバターは食べきりたい、と思うおいしさだ。
パンを極小にちぎっては、盛りもりに塗りつける。
――― このバターは、いったいどういう…?
気になる。でも給仕は年配の男性で、ちょっと話しかけにくい。
そのときちょうど前に座っているご夫婦の、ご主人のほうが男性に訊ねた。
「このバターもすごく美味しいですけど…?」
――― おっ!
わたしは身を少し乗りだし、じっと耳を傾ける…
「…………」
――― なんと!
ここで聞いたことを、SNSで書いていいものかどうか… あるメーカー名を出されたので、その競合企業にとっては迷惑になる可能性があるかも? しれない。やっぱり記載は控えておこう。
でも、「金谷ホテルの゙特性バター」という答えを期待していたのだが。バターは溶けなくても、少しだけ魔法が解けた。
別の見方をすれば、一般に出まわっているバターだということがわかってよかったとも思う。だって、おいしいものは日常にあるということだから。
さて、中禅寺金谷ホテルでいただいたのは、「ライトディナー」。(¥8,500-税・サ込。飲み物は別)
内容はオードブル、スープ、メイン料理、デザートとコーヒーだ。
「ライトディナー」のメインは、魚料理か、ビーフストロガノフか、肉料理かの中からどれか一つを。選んだのは魚料理。
これが肉料理だと、
「那須野ヶ原牛」フィレ肉のグリエ 茸たっぷり金谷風ソース 農園野菜のローストに日光産舞茸のフリットを添えて …ということになっていた。(メニューのまま。こちらは追加料金あり)
正直にいえば、パンとバターをのぞけば、「最高においしい」という感じではない…
でも中禅寺湖湖畔のミズナラ林の静けさと、硫黄のにおいの温泉も満喫すれば、ステキな思い出になる。とても特別な日…記念日のご夕食とするのにふさわしいだろう。
イチゴジャムには、ごろっとしたイチゴが入っている。とちおとめの手作りジャムだ。
日光金谷ホテル
中禅寺金谷ホテルと、メニューの形式も料金もほぼ同じ。
こちらでは「ライトディナー」ではなく、「トゥデイズディナー」にした。お魚とお肉料理の両方をいただける。(¥12,500-税・サ込。飲み物は別)
写真を並べるだけになってしまったが、味をご想像いただければと思う。
中禅寺金谷ホテルも、日光金谷ホテルも、車がないとホテル以外で夕食をとれるお店を見つけるのは難しい。日光金谷ホテルは町に近いのでタクシーを呼ぶ手もあるだろうが、中禅寺金谷ホテルは、ホテルレストランの予約をしておくのが無難。
つづく
次回予告:
「日光を旅する③-華厳の滝」です。