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中編・二人称ホラー小説『あなた』  第一話 ~山着~

割引あり

前書き

※このシリーズ「あなた」は、色んなジャンルのホラーを書きます。ですので様々な『死』『痛み』『苦しみ』『因果』などを描きます。本当に苦手な方、なんらかのトラウマ、偏見、がある人はご遠慮下さい。

 小説としては珍しい「二人称」視点をベースにしていきますので、例えば洗脳されやすいような方もご注意下さい。


あなた


 あなたは、いま”これ”を見ている。すこし時間に余裕がある、というか、暇だった。
 やらなきゃならないことが沢山あるのに、現実から逃避するように何気に”これ”を開いてみた。

 やるべきこと、優先すべきことは退屈だ。なぜならそれは『義務感』が生じるから。

 宿題、家事、仕事、作業etc…

 なにより『人』が面倒くさい。周囲の友達や家族、仲間などに気を使ったり無理に会話をしたり、相づちも作り笑顔も本当に面倒くさい。

 人に言われたことも、面倒くさい。手伝いなさい、宿題をやれ、仕事しろ、飲み会だ、洗濯や洗い物、掃除や料理も・・・・・・

 でも、そんなこともよくあること。あなただけじゃない、みんなそんなものだ。
 自分にそう言い聞かせ、まぁ、せっかくなんでこの少しの『時間』を楽しもうじゃあないかとも思い、いまも続けて”これ”を読んでいる。


 そういえばあなたは寝つきが悪いときが”まま”にある。
 寝なきゃ、寝なきゃと、明日は仕事だ、学校だ、お弁当作りだなど、色々と朝が早い。
 これも明日のために寝なきゃいけないという『義務感』『使命感』に駆られてしまう。
 しかしそんな最中でどうしても、頭の中がぐるぐる✖2と様々な思いと言葉が廻りにめぐる。

 廻りめく思考と同時に脳内でいろんな感情と気分が飛び交う。
 喜び、楽しみ、緊張、不安、怒り、焦り・・・そして
 『恐怖』に・・・・・・


 いまあなたが寝つけないのは、漠然とした『未来』と差し詰まった『現在』。その不確定要素な毎日の『恐怖』

 
その不確定要素という恐怖は、いまもあなたの後ろにいます。
 じぃ・・・とあなたを見ています。いつもあなたをつけ狙うかのように、ず~っと・・・・・・
 
 そんな恐怖の『もの』が気になってしまったきっかけは、たまたま、あなたらしくもなく流行りに乗って”一人キャンプ”に行ったときです。仕事仲間の数人がキャンプの話をして楽しんでいる場に出くわせてしまい、成り行きで参加することになった。

 あくまでも一人キャンプを楽しむために二泊目まではしっかりと一人を楽しみ、最終日だけ合流しワイワイするというプランだった。
 更に一人を味わうために現地へは個別で向かい、帰省だけみんなで帰るというルールを、『あなた』は守った。恐らくは”本当に仲が良い同士”はそんなルールなんて守っていないだろうに・・・・・・

 用意するものはほとんど必要なく、なんなら食料も現地で購入できるブースもあるようなそこそこ有名なキャンプ地だったのですが、あなたは道中で断念してしまったのです。

 その一番の原因は当日、あなたの腰の重さでした。つい、いつものようになんとなく億劫になってしまい、自宅を出発したのが昼過ぎ。その頃の時期では、もう夜には少し肌寒くなるような木枯らしが吹く晩秋のため、到着時にはもう周囲は真っ暗。山道を車で行ける場所まで進み、大きな駐車場がありそこであなたは車を停めた。
 そこからは徒歩で進むのですが、点々と道沿いに外灯がある程度です。

 そこであなたはつい、気になってしまいました。
 外灯の奥のに広がる『漆黒』を。

 あなたは気づいたその瞬間、その場から一歩も前へ進めなくなりました。

 のちにあなたは野生の獣、野犬かヤマネコか何かだということにしていますが、そのときに感じた『もの』は本能からの違和感でした。
 少なくとも、どうでもいい知人ではあるが約束をドタキャンすることに一瞬の戸惑いも、躊躇もなくその場から一目散に引き返し帰宅したのですから。

 あなたはそれからというもの、たまにその『もの』の夢を見ます。

 夢のなかでいくら走って逃げても、追いかけまわされ、執拗に、際限なく、たまに、その存在は瞬間移動のようにワープしてくることも。
 トイレに隠れても、入浴中にも視線を感じます。部屋に逃げ込み、布団やベッドの隙間からも・・・クローゼットや本棚の中に。ベランダや玄関、窓のすぐそばに・・・・・・

 次第に、夢じゃない現実でも同じように、存在を感じるようになることも”まま”に・・・・・・


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