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神様の土地の話 宙に浮く話

怪談作家さんの川奈まり子さんの少女奇譚・問題の部屋や、幽木武彦さんの怪談天中殺占い師の怖い話・井戸 の舞台でもあるわたしの育った屋敷とその土地でのお話です。

わたしの生まれた家は、400年以上「長男」で続いてきた(今も)家で、敷地の中に井戸や祠のある土地です。

母屋のある囲まれた敷地はほぼ長方形でその中に母家と、母家の東側に現在の家長である弟一家の屋敷が建てられています。母屋も長方形で長い辺と玄関は南むき、祠が母屋の北西の角にあり、木々で隠れています。日に当たる時間帯もありますが隠れています。その祠の見える裏庭(母屋の北側)での話。

わたしの生まれた家は先に書いたように、長男が家業と家を継いで、兄弟は本家の近くに分家をおく感じで在ります。父の妹の屋敷が、蔵と畑を挟んで本家のすぐ西側にり、徒歩5分くらい離れた東側には父の弟の屋敷がありました。

父の妹の子供はわたしと同じ歳の女の子と、二つ下の男の子がいました。わたしの従兄弟たちです。同じくらいの歳なので、3人は兄弟のように育ちました。

わたしがまだ小学校に上がるか上がらないかという歳のころはよく、この従兄弟二人と裏庭に面した縁側で夏はスイカを食べたり、花火をしたりしたものです。 わたしにも兄弟がいますが、歳が離れており幼少期の遊び仲間はこの従兄弟の姉弟とわたしの3人でした。そんな頃のお話。

その、祠の見える北側の縁側の足元には通風口があり、それを塞がない程度に隙間を開けて長い木が何本か置いてありました。イメージの丸太ほどは太くはないですが、端午の節句に庭に鯉のぼりをあげる用の木の柱なので、3メートルとか4メートルくらいはあります。それを、数本束にして置いてあるのでした。縁側に腰掛けるとちょうどその木の束にも足が乗ります。丸太みたいに積んであって、束ねてあるので崩れはしないもののずれて揺れたりします。

しゃがんだ状態でそこに乗っかってしまったら、柱の束が揺れてわたしは前のめりになり、バランスを崩して落っこちそうになりました。落っこちてもせいぜい20センチくらい?30センチくらい?の高さなので擦りむく程度で済むのですが、、、ふわっと浮いて、足を伸ばして足の裏でちゃんと着地しました。

「あっ・・・飛べる」

わたしがそういうと従兄弟二人も恐る恐るかゆっくりと柱のしゃがんで、前のめりになってみました。そうしたら、ふわっと浮きました。そして、足を整えて、着地。

「ワ〜〜!飛べる〜〜」

3人で何度も、ふわっ、着地!ふわっ、着地!と、面白くて繰り返しました。やっているうちに、ヒーローが空を飛ぶように両手を前に突き出し、足をまっすぐにして直立万歳の格好で浮いてからの〜、上むきにのけぞって足の裏を地面に近づけて着地!など、浮いている時間は短いものの「飛べる!」ことを楽しみました。体感では、2〜3秒くらいは浮いていられた記憶です。

・・・という記憶があるのですが。

小学校に上がってその話を従兄弟にしたところ、「うん」「できたよね」と言って、小学校高学年までは「そうだったね」「あの時は飛べたよね」だったのですが。。大人になって聞いたら、「そんなことあったけ」になり・・・

またやってみようにはならなかったみたいです。その日の思い出しかないので。でも、わたし、6年生の時にまたやってみようと思って柱の束から普通に転がり落ちました。一人でした。

この時に祖母に「小さい頃ここでちょっとだけ空とべた」と言ったら、「いかんに?ひろちゃん。うそを言っちゃあ。あんたはもう大人だでね。」と、諭されました。そのすぐ後、じっとわたしの目を見て「・・・それはじゃみの時代だけの遊びずら。だけしか、できん」と言いました。※

色々あって同級生の女の従兄弟とは疎遠(とても嫌われているようです)、二つ下の男の従兄弟とは帰省の時に偶然会えば話しますが、今となってはあの時の話が出ることはありません。今度また聞いてみようかな?でも、多分「そんなことあったっけ」で笑われそうな気がします。



※好んでこの話を読んでるあなたは察し・・・思いますが祖母はわたしの話が本当なのを知ってます。ただ、成長していく中で「本当のことを言うと、嘘つきと言われて傷ついたり苦労することがある」ことを教えてくれています。

じゃみ→邪魅?祖母は小さい子供のことを邪魅と言うことがありました。

だけしかできん→要約するとここでは「小さい子供しかできない」という内容を言っています。

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