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機能的アプローチ
はじめに
先月に引き続いて、私が治療する上で気にしてる事を書いていきたいと思います。ちなみにPNFのフィロソフィーがベースになっております。正しい知識として身につけたい方はPNFの成書を見ていただけると理解が深まると思われます。
「機能的アプローチ」
「機能的アプローチ」って聞いても、なんのこっちゃイメージがつきにくいかと思いますが、要するに目的を持った動きを運動学習に利用しましょうって事だと理解するとわかりやすそうです。あなたの運動療法は単なる関節運動になってしまっていませんか?
たとえば理学療法の治療場面でよくある風景の1つに、リハビリ室のプラットホームに患者様を背臥位で寝かせて下肢の総合屈曲、総合伸展をくり返す場面があると思います。キッキングなんて呼んだりしますかね。その動きによって、機能・構造レベルでの効果として股関節、膝関節周囲の筋力強化やもしかしたら股関節・膝関節の協調的な動きを再学習させることを狙っているかもしれませんね。そこで考えたいのが今回テーマに挙げている「機能的アプローチ」って事です。
上記の運動を患者様に提案する際に「足の曲げ伸ばしを10回やりましょう!」って明るい掛け声で実施するのはもちろん悪くないんですが、その患者様の活動レベルの問題点と実施している運動が本当の意味でリンクしているのかを今一度考えてみて欲しいのです。もしかしたら「遠心性の収縮が必要なのかもしれない」し、背臥位ではなく四つ這い位で実施した方が「実際の場面に近いかもしれない」なんてことを考えると、股関節・膝の屈伸運動がより意味を持った運動に変わる訳ですね。もちろん運動学習をする際に、体幹の固定性が不十分だから背臥位で実施するのが良いという事もあり得ますよ。要するに、患者様の状態に合わせて、その人の求める能力をその人ができる範囲で最も効果的に引き出すって事を考えようって事です。
「反復なき反復」
もう一点。
私がまだ新人といわれていた時分に、先輩セラピストに「反復なき反復」っていうのをよく言われました。Repetition without Repetition.って言ったかな?言葉だけ聞くと「なんじゃそりゃ…」ってまたなりますが、要するに「1回1回の動作に意味を持たせろ」って事だと思います。
たとえばいわゆる腹筋運動(膝を立てた背臥位から上半身を起こすアレです)を実施する際に、ただ回数をこなすだけではなく、膝蓋腱を触るように指示するとか、お手玉をカゴに入れるようにするとか、セラピストの手を触るようにするとか…。いろいろな方法は考えられますが、1回1回の動きは同じ上半身を起こすというものではあるけれど、細かくみると条件や結果が微妙に異なっていて、尚且つその結果をその都度フィードバックするって事で運動をより機能的にできますよって事だったんだと思います。ゲーム性を持たせるっていうとイメージしやすいのかもしれませんね。
おわりに
基本的に運動療法について書いていますが、PNFっていうのはどうやったら脳みそに運動を覚えてもらうかって事を考えてまとめられた方法なので、他のことにも応用が利くと思われます。たとえば語学修得なんかは近いものがありそうな気がします。運動療法も手足を動かして手足を治してるっていう面ももちろんありますが、もう一歩考えを進めると、手足を動かすことによって脳みそを治療しているとも考えられるでしょ。障害部位を治すって考えたら、脳血管障害の方々の障害部位は脳そのものです。しかし、脳自体には理学療法士の手は届かない。ということは、理学療法士の手は患者様の手足を動かすことで間接的に脳自体に効果を及ばしているってことでしょ。
まとめ
自分が提案する運動療法の「動き・姿勢・重力の方向・筋収縮の種類など…」をもう一回考えてみよう!
ってこと。