「光あれ」眼の誕生
何も起こらず長い時が過ぎた。
ーー1億2000万年ーー
地球にはまだ眼がなかった。
生物たちはきっかけを待った。
そこへ一筋の光が差し込んだ。
「進化のビッグ・バン」。カンブリア紀(5億4000万年前)に、生命が、突如として爆発的な進化を起こしたことをこう呼ぶ。
短期間に、生物の祖先の多くが出現。複雑な生物が急激に増殖。
生命進化史上 最大のミステリーと言われたこともある。“マスター” ダーウィンもこれには悩まされたそうだが、知る手段がなかったのだから仕方ない。
気になった方は続きをどうぞ。
今では、視覚の発達つまり眼の誕生によって、それが引き起こされたという説が最有力である。(アンドリュー・パーカー氏の提唱)
パーカー氏は
まず。海洋甲殻類が、交尾の合図として、閃光を使用するのを見つけた。回折格子として機能する、体の部位も見つけた。
↓ 一応書いたが読みとばしてもいい。↓
回折格子:格子状のパターンによる回折を利用して、干渉縞(2つ以上の光が同一点で重なりあい、互いに強めあったり弱めあったりする現象である「干渉」によって生じる、明暗の縞)を作るために使用される、光学素子の総称。
次に。カンブリア紀の甲虫や海の生物、バージェス動物群にも、これと似た構造があったことを発見した。
※リンク先で図鑑のように各生物が見れる。
化石に保存されていた物理的な構造から、色が復元できたことになる。色があった事実、と言った方が適切か。絶滅した動物の体色は、長年、わからなかったことだった。
ここからさらに、氏は、眼の進化について考えた。
他の何でもそうだが。色をもつことには、当然、コストがかかる。理由も無しにもっているはずがないのだ。
最初期の閃光にも同じことが言える。誰も見えないのに、生物に光や色がある?否。
光や色があったのなら眼もあった。
研究からわかったこと。
三葉虫が、明瞭な視覚をもつ一番最初の生物だった。三葉虫の眼の獲得に端を発し、カンブリア紀の生物たちは、一気に眼をもち始めた。
これが、進化のビッグ・バンの正体である。
さぞ、眼は最強だったのだろう。僕も私も眼が欲しい!となったのだろう。以前に書いた「 左右対称」と同じく、眼は、超ロング・ヒットの大流行ということだ。
では、三葉虫はどうやって眼をもてたのか。
自然淘汰により長い時間をかけて少しずつ変化したーーのではなかった。ダーウィンもびっくりだろう。カンブリア紀ありえないんだが!いきなり進化!?と。
パーカー氏の「光のスイッチ理論」。
カンブリア紀の大気が変化した
↓
地球に到達する光の量が増加した
↓
視覚の進化的利点が大きくなった
↓
眼が出現した
↓
視覚が捕食を促進した
↓
捕食をサポートする硬さ(歯や顎)ができた
↓
捕食者から身を守る硬さ(殻)ができた
↓
みんな硬くなっていった
生物が柔らかい状態から硬い状態になっていったことを、パーカー氏は、このように推測した。これはまさに、パズルの欠けていたピースだった。
初期の「眼 獲得組」にとって、そこはパラダイスだったに違いない。まだ柔らかい生物がたくさん泳ぎまわっていて、無料の食べ放題のようだっただろう。
進化的軍拡競争:ある生物の適応が別の生物の適応を促し、互いの競争関係を通じて、共進化することである。
現在、動物種の95%以上に眼がある。5%は眼が進化しなかった。95:5。眼が種を成功させる鍵であることは、火を見るより明らかだ。
参考文献
Andrew Parker. “In the Blink of an Eye: How Vision Sparked the Big Bang of Evolution”.