【蒸留日記 vol.89】セイタカアワダチソウ花穂を蒸留してみる!
さてさて今年も秋の黄色い花の代名詞でもあるセイタカアワダチソウの蒸留シーズンがやってまいりました〜!
海外では「金の杖」と呼ばれ、異国の地である日本においてもすっかり秋の代名詞となりつつある北米外来種のセイタカアワダチソウですが、その高い生命力・侵入力さながらヨーロッパ圏ではハーブとして利用されていることも巷で知られています。
増えている外来種と聞くと厄介者のように聞こえますが、日本でもヨーロッパのように植物薬効成分の利用文化が広まれば、厄介者から薬用資源として一気に見方が変わるんじゃないかな〜と期待を込めている外来種植物だったりします(^ ^)
■北アメリカではGolden Rodの通り名。
ヨモギの花穂と同様に、セイタカアワダチソウも緻密な花を密集させた花房・花穂を持ち、開花すると穂先が真っ黄色に染まるのでブルーミングシーズンはわかりやすいセイタカアワダチソウ。
秋を代表する日本在来植物であるススキと開花時期が重なり、北海道においても共に秋の景色を構成する植物となっています。
その開花した姿は見ての通り、金の杖。ゴールデンロッド。
緑色の長い柄の先に大きな金色のジェムがはめ込まれたような立ち姿をしています。
▶︎伝統的なハーブとして扱われるセイタカアワダチソウ
ハーブ利用においてはこの北米産セイタカアワダチソウに限った話ではなく、ヨーロッパ大陸において元より自生するヨウシュウアキノキリンソウ(S. virgaurea)も似た薬効を利用するため同様に扱われているようです。
薬効はデトックス面において主に効くとされ、痛風・インフルエンザ・尿路炎症・腎結石・湿疹や皮膚炎症に対してハーブティや肌軟膏の形として利用さているそうです。
セイタカアワダチソウの草花を鍋水で煮出すと成分が溶け出た煮汁がやたら泡立つという事もよく知られた特徴ですよね!
▶︎蜜源植物として日本に導入され拡散した歴史
そして優秀な蜜源植物としても生態系機能を果たしている植物種のようです!
特に秋にわんさかと群れて咲くことから冬眠前の昆虫らにとっての貴重な栄養源ともなっているよう。
そんな経緯から1950年代以降に日本においても養蜂家が巣箱の周りにこのセイタカアワダチソウを植えまくった導入経緯があり、その導入イベントも日本国内への侵入起源となっているようです。
結果的にアカシアやクローバーや菩提樹などのハチミツには風味で勝てず、セイタカアワダチソウのハチミツはあまり作られなくなっていったそうな。。。
▶︎植物分類学観点で詳しく見ると、日本に来たのは3種!
日本の都市郊外で大繁殖している秋の黄色い花といえば、北米からの外来種であるセイタカアワダチソウであることには間違いありません。
しかし一つ問題が。
セイタカアワダチソウを眺めるとそれぞれ別種が存在しているなんてにわかにも思いもしませんが、すーーーっごく細かい点を観察してみると3種存在している事がわかるらしいのです。
誰と誰がいるのかというと、わかりやすく学名筆記すると
まず1種目Solidago canadiensis L.で和名だとカナダアキノキリンソウ。
そして2種目Solidago altissima L.で和名はセイタカアワダチソウ。
そして例外に近い3種目はSolidago gigantea Ait.で和名はオオアワダチソウ。
学名の統一性と和名の煩雑さをみると泣きそうになります。
で!それぞれリンネの時代(1700年代中盤)に別種として分類されましたが、植物全体をぱっと見しただけではまず違いには気付けないほどソックリなのです。
そして驚くことに、その3種が自生している原産地北米のアメリカ人、カナダ人であっても2種を混同・誤判別し続けている現状となっています。
それだけ判別がつきにくいようなのです。(リンネさんよく見分けたわ…)
Trueセイタカアワダチソウではありませんが、上記スウェーデンにおいてのカナダアキノキリンソウとオオアワダチソウを見分けた詳細なスケッチが公開されているページ。
カナダアキノキリンソウ(S.canadensis)は植物全体につく産毛が特徴であることを記載しています。
去年の蒸留記事ではググって真っ先に出てきたS.canadensis(Canada Golden rod)で学名表記しましたが、実質日本において個体数がメジャーなのはSolidago altissimaの方らしいです。日本で育つセイタカアワダチソウのうち68%がS.altissimaであることがゲノム調査で判明しています。
けど当ブログでの蒸留に供しているセイタカアワダチソウがS.altissimaなのかS.canadensisなのかは判別がついていません。
▶︎ごく近縁種のオオアワダチソウ(Solidago gigantea)
素人目にはまっっったく違いがわからないだろうごく近い別種のオオアワダチソウも存在しています。(北海道・自宅周辺で撮影)
初めは気候不順のせいかな?やけに開花の早いセイタカだなぁ…と思ってたのですが調べるとどうやら開花時期が夏にあるオオアワダチソウ。
植物学的に、セイタカとは開花時期がぜんぜん違うのでお互い受粉ができず別種となっているのです。
学名もSolidago giganteaと異なっています。(ラテン語でgiganteaは巨人の意)
とにかく日本で広まっているセイタカアワダチソウ3種の原産地である北米大陸だけでもSolidagoは亜種変種を含めると80種が存在し、全世界で合わせると120種にも膨れ上がる。。。
分類学的にこれ以上詳しく知ろうとすると脳みその回路が焼き切れる気がするのでエフゲニーマエダとしてはこれ以上詳しくは踏み込まないでおこうと思います。笑
【付録】あまりにも多すぎるセイタカ近縁種のちょっとしたまとめ!
■素材収穫&準備!
収穫してくれ!!と言わんばかりに花穂をまっ黄っ黄色に染めているセイタカアワダチソウ群落に遭遇!
花穂も特大サイズで重すぎるせいか倒れているので収穫しやすく好都合なので仰せの通りに収穫してオイルを採ってやりたいと思います!
甘い花のような香りと柑橘っぽいようなシトラス調の香りが芳ってきます。
計測重量は2946グラム!ほぼ3キロ分の花穂からセイタカアワダチソウ花オイルを抽出してみまっす!
花オンリーなので葉っぱや茎から生じる土っぽい匂い(恐らくピネン系の香り)は排除できるハズです。
■蒸留結果は…!?
さすがはハーブとしての顔も持つセイタカアワダチソウ。
1時間ほどの採取作業でこれほどの精油量を得ることができました!
30mLバイアルに注いでいて、推定抽出量23mLではないかとみています。
では収油率計算と官能評価の方やっていってみましょ〜う。
1.収油率
意外と高く出ました!0.7%というとコモンラベンダーの平均的な収油率ですが、収穫のしやすさや資源量などでみるとなかなかの高収量となっています!
2.香りとか
甘く土っぽい、開くような花の香りとグレフルのような苦みを伴う柑橘アロマがあります。
まさに開くようなフラワー感感じるアロマは花部から得た精油に特有の香りでしょうか。
セイタカアワダチソウは葉茎を蒸留することでも精油は一応出てきますが、大してフワッと軽やかに香ってくるライトなアロマはあまりないのが特徴であったり。。。
▶︎エフゲニーマエダ氏、何かに気付く。。。
ちょっと去年の蒸留結果と写真を見比べてみましょう、、、
うーん、色づきの濃さが今年は薄いような〜〜〜、、、
というのも、昨年今年とともに満開時の花穂を素材とはしたのですが、①時期が違うのと②採集地が違うんですね。
つまり、可能性としてそれぞれS.altissimaとS.canadensisを別々に蒸留した可能性を孕んでいるというコメントでっす。
もしかしたらの話ですが、ゲノム情報は目には見えないですが、精油・テルペンを抽出するとこのように成分比が種で異なることで色の違いとなって現れるのかもしれません。。。
〜関連記事リンク〜
日本に生育する”広義のセイタカアワダチソウ”には倍数体ごとに異種が存在。見た目がわからなくても染色体数を調べれば明白。
スウェーデンに生育するS.canadensisとS.giganteaの見分け図記載ページ。
S.gigantea/オオアワダチソウは開花時期や花穂形状で特徴は明白だが、S.altissimaかS.canadensisなのかわからない場合にS.canadensisの特徴が参照できる。
国内での日本産セイタカアワダチソウ精油の販売。
5mL/¥4,980ととんでもなくお高め。