ファンコミュニティを気軽に作ろうとして陥る罠について解説します
先日「ファンクラブとファンコミュニティの違い」について解説させていただきました。※もしまだご覧になっていなければ是非こちらの記事からご覧いただけると本記事の理解がより高まると思います。
その記事でも記載しましたが、改めて強調すると「ファンコミュニティはタレント活動(アーティスト、インフルエンサー含む)をする方にとってマネタイズ機能だけでなく、マーケティング機能も備えた非常に強力な存在」です。
こういうと「じゃあタレントは今すぐ全員ファンコミュニティつくるべきじゃないの?」という話も出ますが、その答えは必ずしも「YES」ではありません。
本日は「ファンコミュニティを気軽に作ろうとして陥る罠」に関する私の愚見をお伝えしたく筆を執りました。
ファンコミュニティの形成には「覚悟」が必要なんです
実は本記事の結論は上記の一言に尽きますw
ただ、この一言だけだと意味不明だと思うので、もう少し詳細を説明していきます。
まず、ファンクラブとファンコミュニティの違いはファンの態度であり、ファンのタレントへの関わり方になります。
上の表は前回も紹介したファンクラブとファンコミュニティの違いをまとめものですが、ファンクラブにおいてファンは「コンテンツ消費者」にあたります。故に、ファンはタレントに対して「自分が払った金額に見合うサービス」を求めます。
そして一般的にそのサービス内容は【チケットの先行販売】や【限定情報(会報紙、限定動画など)】であったりします。この価値交換はとてもシンプルであり、FCの一般的な金額である月額500円というハードルを超えるのはそれほど難しいことではありません。
※一方でユーザーあたりの課金単価の天井が500円になってしまうため、ある程度のボリューム(一般的には会員2000-3000人以上)を確保できないとファンクラブは成立しない、という構造上の課題もあるのですがそれはまた別途論じたいと思います。
シンプルでWIN-WINな価値交換!
ファンコミュニティの価値交換はそれほどシンプルではありません。
なぜなら能動的なファンはコンテンツを消費するだけでなく、自身が宣伝マンになったり、コンテンツ制作者になったりとお金以外に彼らの人生の一部を差し出してくれる存在だからです。
そのように自らの大切な人生を差し出してくれるファンに対してただサービス的な価値交換をしようとするとファンコミュニティは確実に失敗します(というか立ち上がりません)。
ファンコミュニティの立ち上げと運営において重要な観点は、ファンの方にどうやって「自分を応援してもらうためのモチベーションを持ってもらうか」になります。
そして、ちゃんとファンコミュニティを機能させるためには相応の覚悟と時間が必要になります。
人生の一部を受け取るための何かが必要!
では、どんな覚悟が必要なのでしょうか?
次に出てくるのは当然上記のような問いになると思います。
この問にシンプルに答えると「自分をさらけ出す覚悟」、「ファンと向き合う覚悟」「時間を使う覚悟」ではないかなと思っております。
それぞれ少し掘り下げます。
その1. 自分をさらけ出す覚悟
以前ウラカタLTでpocochaのPMである住吉氏も語ってくれたのですが、「ファンコミュニティが生まれて続いていくためには進展性が必要」なのです。ここでいう伸展性とはコミュニティオーナーであるタレント本人との心理的距離感が近づいていっているというファン側からの実感です。
この実感が少しずつ強まっていくことでコミュニティの基盤はより強固になり、結果としてファンの能動力が高まっていきます。
では、「どうやってこの伸展性を生み出すか」というと、その答えのひとつが「自分自身のさらけ出し」だと私は考えています。
一見するとタレントが弱みを見せる行為はかっこ悪くてファンからするとがっかりすることなのでは?と思うかもしれませんが、実はそうではありません。
自分の目標に対して努力する中で、うまく行かず人間らしく泣いたり怒ったりする姿を見て人はそのタレントに共感し、心を重ねていきます。
※ここで間違えてはいけないのは、目標とか夢とかなくただ怒ったり泣いたりしてるだけでは共感は得られない、という点です。感情の起伏は目標達成の過程で起こることが重要です。
もっと具体的に言えば、自分の弱みを見せる、という行為です。
例えば勝負に負けて泣いたりするのってすごく共感しちゃいます。
その2. ファンと向き合う覚悟
ファンと触れ合う仕事をしている方からするとあるあるだと思いますが、応援してくれる人の中には一定の割合で「やっかいなファン」という人が生まれてしまいます。
ファンクラブであれば無視するか出禁(出入り禁止)にすればいいという話なのですが、ファンコミュニティではそうも行きません。
たとえ出禁にするにしてもまわりのファンがその出禁が正当であり、タレントの活動やコミュニティの未来のために必要な行為だ、と納得しなければなりません。
そして、その納得感を得るためにはちゃんとファンに自分がこのコミュニティをどんな雰囲気にしたいか、どういう人に居てほしくてどういう人には居てほしくないか、それは何故か、などを自分の口で語らなければなりません。
もちろんこの行為は精神的にもしんどい行為ですので、本人だけでなく事務所なども周りの方の力を借りながら行うことが良いのですが、ただ最終的には自分の意志が必須です。
その3. 時間を使う覚悟
上記の2項目を見ていただくだけでも想像がつくと思うのですが、ファンと心を通わせたり、向き合っていくためには時間がかかります。
ただツイッターやインスタグラムで面白いツイートをしたり、おしゃれな写真をアップする労力と比較すると何十倍にもなると思います。
そして、それを続ける必要があります。
1ヶ月だけやってもファンコミュニティは立ち上がりませんし、本当に自身の活動にとって有益なものにはなりません。
ファンコミュニティは自身の活動が続く限り、心をこめてメンテナンスを続けていくべく存在なのです。
やっぱり「ファンクラブでいいや、、」と思いますか?
今日の記事はファンコミュニティを広めていきたい私の立場としては、間口を狭めるという意味で少し損な記事なのかもしれません。この記事を読んで「やっぱり自分はファンクラブでいいや、、」と思う人が出てくるかもしれません。
それは仕方ないことなのではないかと思っています。逆にいうとそれくらいの覚悟であればファンコミュニティをやっても成功しないし、ファンも不幸にさせてしまうと思います。
でもそれでも、私はこれから出会う全てのタレントさんに「覚悟を持ってファンコミュニティを作りましょう!」といい続けると思います。
なぜならエンタメ量は増加し続け競争は激化し、同時に情報過多から口コミの信頼度は相対的に上昇する、この流れは今後さらに加速します。
そんな市場状況でタレントさんが勝負するためには、ファンコミュニティの存在が最重要な武器になる、という確信があるからです。
そしていつか覚悟を持ってファンコミュニティ立ち上げ、運営することが当たり前になる世界を目指していきたいなと思っています。
悟空とご飯が超サイヤ人であるのを当たり前にしたあのセル戦の前のように。
かしこ。
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