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詩「 酔いどれ 」


ガラス細工は壊れない

カラスの細工は煙突のように

煙を吐いていつも真っ黒だ

色が行く種類も混じりすぎて

本音がわからなくなった

検証が必要だ

黒と黒と黒どれも違う黒

悪すぎる朝

夜を待たずに

栄光のような白に向かって歩いていく

飛ばない鳥は羽を持て余して

ゆさぶる心はウィスキーのような色をしている

酔いのまわらない夜に

朝を待ち伏せしていた

揺れる世界は黒よりもいびつな一日を創造して

今宵もソーセージを研ぎ澄ましている

古ぼけた時計はやはりぼけている

時間を鳴らす癖に

何一つ正解がなかった

待ち合わせに遅れた

取り戻せない過ぎた話を

怒りにこめて衝撃をまっすぐに

受け止めた酒場で

取り囲まれた無法者

排気音が寝覚めの悪い朝を告げると

もうそこから出ていけと言われる

積み重ねすぎたから

もう苦しい

ガラガラを音を立てて崩れ去る歴史は

解読不能の戯言

キャンセルならたった一つのボタンで可能だが

読み込むのならばそれはそれは

長い旅をしなければたどり着けない境地だ

水を埋めすぎた大きな溝は

とても役に立った

混ざらぬように引き離すことに

黒と黒と黒は

どれも同じ黒

どれを選んでも笑ってはくれない

無表情のあくび

それだけが救いだなんて誤解を

祈りをささげるような祭りで捨ててきた

ガラス細工はもうどこにもない

そんな精巧なものはもうない

浅はかなもので溢れているのだ

悲しくて涙になって

月の端まで流れていった

船は青白く揺れながら

血の気を失っていく

誰も悲しむ者はいない

悲しみであるとすら思っていないから

本当のことがわからなくなってしまった

嘘ばかりが本当になってしまった

本物がなくなってしまった

取り戻せない真実

それだけがただそれだけが埋もれているのに

視界の中にはいっていないのだ

それでもそれでもいい

黒と黒と黒

そのどこかに塗りつぶされているだけのことだから

涙をぬぐい去った

足元が砂になった

風によってサラサラになった

言い訳によってドロドロになった

脅して思い通りになることなど

不完全なプラモデルだ






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