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詩「 四角いボックスの中で無数の何かを飛ばし始めている 」



つり革が無数の孤独の空にぶら下がり

窓の外に花柄が飛び交い

対話が不可能な衣装が浮かんでぐるぐるしている

ミクロな画面に釘付けになって大工とダンス

金槌の音がする

今にも抜け落ちそうな

たったひとつの欠片が

皿の上に盛り付けてある

通り過ぎるばかりの寒い風

何かが見えているのかもしれないけど

何も見えていない

見知らぬ現実がそこにある

関係のないマネキン人形どうしは

横に揺れてる

白い肌

そこに傲慢さを感じて

おそらくどうしようもなく

健やかなのだろう

ボックスは四方で囲まれている

滑るように走る

あいも変わらず走る

色がパチパチと弾けている

言葉が流れるようにコウモリみたいに

痙攣しながら逆らっている

ステーションが吸い込んでる

小人を車を廃棄された空気を

水を わだかまりを 苛立ちを

計算を 礼儀を

吸い込んでいる

どこに向かってお辞儀しているのだろうというのは

愚かな疑問だ

そこにあってそこにない

どこかにあってどこかもない

無数の孤独が佇んでいる

錆びれた四角いボックスの中で

無数の何かを飛ばしている

受け止めは消えて

消えては受け止めてを繰り返して

回線の中をネズミがくぐっている

猫は追いかけてこない

夢も追いかけてこない

虚しさが追いついてきた

お面の下の素顔が

寂しがっている

蹴られて

踏み潰され

へこみを感じた空き缶が

透明なビニールに包まれ

運ばれていくのだろうか

明日にはどこにもいない

関係のない情報が

関係のない人形が

空へと細い細い手を伸ばして

求めているものが何なのかすらわかっていないし

何を求めたらいいのかすらわかっていない

掴むべきものはきっと沢山あるのだろう

何一つ届いていないというのに

朽ち果てている

だけども結ばれていく

ひとつひとつが

それに気づいていもいるのだ










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