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詩「 いっそのこと狂ってしまえばよかった 」



いっそのこと

かき消してしまったほうが

嬉しいのではないかとさえ思えた

午後三時昼がさがる

月と雨とが繰り返す

傘をたたむ音がする

折りたたんだ今までは

一体何だったんだろうなんて疑問は

すべてアルコールの中

血管が太っていく

伝達ゲームはあやふやな記号

言語が崩れていく

何が始まりなのか分からなくなってしまった

何が言いたいのかを知りすぎていたから

いっそのこと狂ってしまったほうがよかった

感じない笑顔

幸せそうに見えた

偽りはいつしか本当のことと勘違いされて

着ているものをすべて交換した

ハンドバッグは膨れ上がる

ガラガラと音をたてて

飛び交う銀色の飛沫

よけきれない

よけたとしても もう侵食は始まっていた

いっそのこと狂ってしまえばよかった

空と気がからまるように

読みかけの本を結んで

ひらかないようにしてしまった

口を塞いで耳を塞いで

出入り口が見えなくなりました

許されない冗談が銃口から発砲される

揉め事がお祭り騒ぎ

ただの遊びでしかない

暇人のイマジネーションで世間が振り回された

どこに行くのかわからなくなってしまった

どこに行きたいのかなんて始めからなかった

考えたこともないことは答えられない

考えてもいないから しどろもどろのお化け

破壊した後の後悔

航海をした後の戒めを破って

海のように狂っていればよかった

スクリーンを破って

こちら側に迫りくるリアルと

手をつないで縄を跳ぶ

いっそのこと狂ってしまえばよかった

この世界の哀しみを何一つ感じることがないように

いっそのこと糸をプツンと切ってしまえばよかった

道をふさげば仲間が増えるクラスター

意図をつなげば同胞が増えるクラスター

いっそのこと葡萄のようにフサフサと笑っていればよかった








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