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厚、暑、熱、篤、あ、つい。

あの子の匂いで起きる正午。無駄に厚い白の掛布団。

白を基調としたあの子の部屋はいつにもなく暑かった。

乱暴に扱った、布団に埋もれた呑みかけの天然水を喉に通し、無意識にリビングに向かう。

ダイニングテーブルには、安っぽい蛍光の付箋に、あの子の丸文字が羅列している。その横には千円札が二枚、おそらく昼食代金であろう。

静寂が煩いので、おもむろに窓を開け、蝉の声を耳に通す。
蝉の声はこの熱い夏をより際立たされる。

黒色のあの子の下着が揺れる。自分の今の人生の方が干されているのに、
下着の方が頗るいい匂いで、干されて、乾いている。洗濯物は干されて乾いたら、また包んで、使用される。
僕を包んでくれるのは、あの子しかいないんだよなぁ。

共有の大きめのTシャツ、洗濯物を雑にたたむ。僕の選択は間違っていたのか。

ここの家が好きで住み着いているわけではない。ただ何となく、自分の居場所が欲しかった。

あの子は情に篤い子だ。こんな僕も気にかけてくれるんだよなぁ。
あの子の読みかけの「一人称単数」を、読む気もないのに脳死状態でパラパラと手繰る。弱い握力で持っていたから、落としてしまった。
あ、つい落としちゃったな


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