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SIIF「Systems Change Collective事業」メンバー紹介

2023年10月10日、SIIFは「Systems Change Collective事業」の公募を始めました。その趣旨はこれまで2回のブログでもお伝えしました。ここでは、このプロジェクトに企画段階から携わり、今後、ご応募いただいた団体とご一緒する予定のSIIFメンバー4人に、おのおののバックグラウンド、「機会格差・地域活性化」という社会課題との接点や、プロジェクトにかける意気込みを語ってもらいました。

 【前編】この公募で目指すもの
【後編】2つのテーマ「機会格差」と「地域活性化」

(左から)SIIF インパクト・オフィサー 田丸 悟郎/田村 直子/齋藤 匠/古林 拓也

メンバー1人1人が、プロジェクトの目的と重なる志を持つ

ーー今回の事業でターゲットとする社会課題の1つが「地域活性化」です。そこで、皆さんご自身がこれまでどんな「地域」とかかわってきたか、というところから自己紹介を始めましょうか。

田村直子 私は群馬県の山間部で育ちました。冬には雪深くなる地域で、自然に富んでおり、その良さもよく知っています。けれど、新しいところに行きたい気持ちも強くて、中学で前橋に出て、高校は単身で北海道へ行き、東京で大学・大学院に進みました。在学中にアフリカを訪れた体験が忘れがたく、いったん国内で就職したあと、タンザニアに舞い戻って貧困問題の解決に取り組む日系ベンチャー企業にインターンとして参画しました。帰国後、SIIFに入社するまでは都内のコンサルティングファームで働いておりました。ずっと、ふらふらと旅をしているような感じですね(笑)。

ただ、自分のアイデンティティはやはり、群馬の地元にあると思います。地域の衰退は痛感しますし、画一化の波が押し寄せてくることにも疑問を感じていました。そして、日本の地方で起きている問題は、遠からず途上国でも起きるのではないかと思っています。これまで見てきた様々な場所で生じた事象や取り組みの経験をうまくつなげ、新たに生じる課題を未然に防いだり、軽減したりするなど、地域と地域の取組をつなげる方法を見出すことはできないか、と考えているところです。

古林拓也 私は京都府の南に位置する京田辺市の出身です。田んぼに囲まれて育ったので、暮らしの中に田植えや稲刈り、祭りといった季節のサイクルが組み込まれていました。けれども、その心身に染みこんだ自然の循環のようなものが、東京で仕事をしているうちに失われてしまった。地方にしかない自然やコミュニティの豊かさが恋しくなって、新潟県村上市の中山間地域で地域商社を立ち上げ、5年ほど経営に携わりました。

今年初めに父の病気が見つかって京田辺市にUターンし、今はまた、田んぼに囲まれて暮らしています。5月にSIIFに合流して、このプロジェクトに参画することになりました。道半ばで諦めざるを得なかった新潟でのチャレンジ経験や、自分自身の地域への思いを重ねながら、この取り組みを進めていければと思っています。

齋藤匠 私は埼玉で生まれ育ち、東京の大学を卒業するまで住んでいましたから、いわゆる「地方」出身ではありません。ただ、政府系金融機関に就職して最初に配属されたのが大阪市内の支店でした。とても楽しい町で、地域による文化の違いを実感する最初のきっかけになりました。

次の赴任地は長野県長野市で、こちらもまた地方色豊かでした。同じ市内でも市街地や観光地など地域によって性格が異なり、抱えている課題もまた異なることを実感しました。こうした地域で小規模事業者や個人事業主への融資業務を担当してきた経験が、このプロジェクトにも活かせるのではないかと考えています。

田丸悟郎 私は大阪の中小企業の次男坊で、京都の大学を出て、最初は東京で就職しました。そのあと、インドネシアで国際NPOのマネージャーを務め、ニュージーランドの大学院で気候変動を学んで、帰国後は途上国の気候変動対策に携わってきました。今は長野県の富士見町という人口1万5,000人ほどの町に住んでいます。地域活性化は、自分自身の生活に直結する課題です。

そして、5年前に甥が生後わずか10ヶ月で世を去ったことが、消えない痛みとして今も残っています。原因は先天性の病気で、生きていたら障がいを抱え、生きづらさを感じたかもしれない。また、いろんな方に支えてもらいましたが、それでも病児保育は本当に大変で家族は心身ともに疲弊してしまいました。その経験から、今の社会を、彼が「また生まれてきたい」と思える場所にしたい、と切に願うようになりました。

機会格差も地域活性化も環境問題も、これまで分散しているように思えた自分自身の関心が、このプロジェクトを通してリンクし、解決を目指せるんじゃないかと期待しています。

金融、コンサルティング、地域商社など、重ねてきたキャリアも多様

ーー1人1人の体験や目指していることが、このプロジェクトの目的とも重なっているわけですね。4人とも今年度からSIIFに参画したわけですが、そのきっかけや動機について、もう少し詳しくお話しください。

齋藤匠 縁あって4月からSIIFに参画することになったわけですが、振り返れば学生時代にアントレプレナーシップや社会起業家について学んだ経験があって、道はつながっていたんだな、と感じています。

新卒で政府系金融機関に入ったのも、日本を支える中小企業や創業者を、金融面から支援したいという思いがあったからです。ただ、融資業務を担当していると、志を持って社会課題に取り組んでいるというだけでは融資をすることができない場面もあり、モヤモヤしたこともありました。SIIFでは、これまでとは違う視点から、金融という手法を用いて社会課題の解決に貢献したいと思っています。今回のプロジェクトは、これまで私が携わってきたセクターに近いので、その知見でもお役に立てるかもしれません。

田村直子 私はタンザニアから帰国したあと、コンサルティングファームのパブリックセクターで官公庁や自治体のまちづくり案件などに携わってきました。国や自治体がどんな枠組みをつくれば地域の現場が課題を解決しやすくなるのか、その仕組みづくりに関心を持っています。その一方で、実際に課題に取り組む現場ともかかわりを持ち続けたい。SIIFではその両方をつなぐ視点で活躍の場をいただけるんじゃないかと考えて、9月から参画しました。

古林拓也 そもそも、新潟で地域商社を立ち上げたとき、背中を押してくれたのがSIIF専務理事の青柳光昌さんでした。実は、東京で会社員をしながら通っていた大学院のソーシャルベンチャーの先生が青柳さんだったんです。そのご縁から、村上市から京田辺市に戻らざるを得なくなったとき、このプロジェクトの存在を教えていただきました。新潟の中山間地域でやり残してきたことを、別の形でやり遂げられたらと思っています。

田丸悟郎 これまで携わってきた環境課題について、地域レベルから解決を目指すとすれば、単に「脱炭素」ではすまなくて、災害や変わる気候に対応したり、人口減少のなかで田畑や森林をいかにして維持管理するかという課題も含めて取り組まないといけない。今のところ、それを担っているのは地域のおじいちゃんおばあちゃんで、それをどうやって次世代に引き継ぐのか、代替策はあるのか、と考えていくと、必然的に社会構造の問題にたどり着く。

これまで関心を抱いてきたあらゆる課題はつながっているし、このプロジェクトなら、そのすべてを丸ごとひっくるめて取り組めるのではないかと思いました。今まで取りこぼしてきた問題意識を拾い集めたくて、SIIFに参画しようと決めた次第です。

明るく風通しの良い組織風土。臆せず飛び込んできてほしい

ーーそれぞれ、志を同じくしつつも、経験やバックグラウンドは多様ですよね。では、これからご応募くださる方々に向けて、このプロジェクトやチームの魅力をアピールしていただけますか?

齋藤匠 SIIFに入ってまず驚いたのは、とにかく自由だということでした。私がいた政府系金融の世界では、ほとんどありえません(笑)。自由な発想の中で業務が進んでいくのですが、それを支えているのは1人1人のマインドの高さだと思います。外部からの評判を聞いても、SIIFの発想力とチーム力は折り紙付きですから、ぜひ期待してほしいです。

田丸悟郎 例えば齋藤さんは融資に携わってこられたから、コンサル畑から来た私とは、世界の見方が違うんですよね。1人1人がいろんな経験と文脈を持っているうえに、お互いフラットに会話できるので、毎日が発見の連続で楽しいです。これから参加してくださる事業者の方々とご一緒できるようになったら、きっともっと楽しい。

一方でこのチームには、分からないことは分からない、分かったふりはしない、だから学ぼう、という謙虚さもある。心と心というか、魂の付き合いができる方々と本音で語り合いながら、共にシステムチェンジを目指したいです。

田村直子 実は私、SIIFに入社してまだ3週間しか経っていないんですが、すでにたくさんディスカッションの機会をいただきました。それぞれが多様なキャリアを歩んできていて、グローバルな経験やキャリアも豊富な方だけれど、とても謙虚でフレンドリーで、みんなで一緒に議論し作り上げていこうね、という風土があります。プロジェクトにご応募くださる方々とも、フラットな関係を築きたいし、きっと築けると思うので、楽しみにしていただけたら嬉しいです。

古林拓也 このプロジェクトって多分、過去に前例を見ないものなんですよ。「まだ見ぬ景色を見たい」という思いがチームに共通していて、今からワクワクしています。各事業はおおよそ3年先まで視野に入れていますから、時間をかけて変わっていくし進化していくし、社会課題の解決の幅も深まって広がっていくはずです。じっくりご一緒できる方々と出会いたいですね。

このチームの人たちはみんな必殺技を持っていて、腕が伸びる人もいれば空を飛べる人もいます(笑)。とっても楽しいし、めちゃくちゃ頼りになるので、ぜひご期待ください。現場からは以上です。

目指せ「システムチェンジ」。道程にもきっと発見がある

ーーこのプロジェクトは、社会課題の根本的な解決、すなわち「システムチェンジ」という遠大な目標を掲げています。本当のところ、皆さんはそれが可能だと信じていますか?

田村直子 そんなに簡単なことではないけれど、システムチェンジは起き得るし、起こせるんじゃないでしょうか。まずは動き出すことで、新たな取り組みを広げる端緒となると思います。

田丸悟郎 システムチェンジが本当に起きるのかと言われれば、分からないけれども、分からないからほっておくのではなく、目指していかなければならないと思います。結果は何十年後になるかもしれないけれど、そこに至る道程にも、大事な発見はたくさんあるはず。試行錯誤の時間も含めて、大きな財産になることでしょう。

古林拓也 結果として「できる・できない」はあるかもしれないけれど、システムチェンジを目指して取り組むつもりですし、そこに参加する人たちの熱意や共鳴こそが大事なんじゃないでしょうか。このプロジェクトを通じて、その本質を掘り下げたいと思っています。

齋藤匠 システムチェンジは実現できると思っています!やる前から諦めるのは嫌いですから。少なくともこのプロジェクトで、システムを変えるきっかけができた、と言えるようにしたいですね。

本質的な課題解決や変革には、50年、100年という長い年月が必要で、私たちがその変化を目の当たりにすることはできないかもしれません。けれども、次世代が生きる社会に思いを馳せ、私たち大人が現代の社会の歪みを構造レベルで把握し、変革を目指すことで、未来の社会をよりよいものにできるかもしれません。

今回の事業では、社会システムを本質的に理解し、効果的な打ち手を見定め、実際にその「点」を打ちにいくために、一緒に悩み、行動してくださるパートナーを探したいと考えています。

 note 連載マガジン Systems Change Collective システムチェンジの探索者、募集

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