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【超簡単・哲学解説シリーズ】アリストテレス『二コマコス倫理学』


〝二コマコス倫理学〟

哲学書って非常に難解で、わかりにくいってイメージありますよね。僕も哲学書を読むのは得意ではありません。ですが、書いてあることは〝普遍的で常識的な道程〟であり、何も特別異質なことではありません‼
ここでは、そんな難解な本を嚙み砕いて解りやすく解説します。第1弾は、哲学界の大巨人アリストテレスの『二コマコス倫理学』です。この本は「人間はどう生きるのが幸せか」を追究した、最も初歩的な哲学書です。中学生や小学生にも解るように書きますので、どうぞご読了くださいね^^


1. 目的としての「幸福(エウダイモニア)」

アリストテレスは「すべての人間の行動は、何かしらの目的を目指している」と考えました。そしてその最終目的が「幸福」であるとします。ここでいう「幸福」は、ただ楽しく過ごすとか、お金持ちになるという意味だけではありません。人生の中で自分の能力や善さを十分に発揮し、充実した状態であることを指します。ギリシア語で「エウダイモニア」という言葉で呼ばれ、単に快楽だけを目標とするのではなく、人間が「理性」を活かして生きることで得られる深い満足感が大切なのです。


2. 「徳(アレテー)」の重要性

アリストテレスは、幸福になるためには「徳(とく)」を身につける必要があると主張しました。ここでいう「徳」とは、現代の感覚でいう〝美徳〟や〝良い性質〟に近いイメージです。例えば「勇気」「正義」「思慮深さ(知恵)」などが挙げられます。これらの徳は生まれつきではなく、日々の練習や習慣によって身につけるものと説きました。何度も繰り返してやがて「習慣」になると、自分の行動が自然と「徳」にかなうようになります。


3. 「中庸(ちゅうよう)」の考え方

アリストテレスが強調する「徳」は、どれも極端に走らない「中庸」の状態で成り立ちます。たとえば「勇気」は、まったく怖がらない「蛮勇(ばんゆう)」と、なんでも怖がってしまう「臆病(おくびょう)」のちょうど中間にあたります。同じように、「気前の良さ」は浪費でもケチケチでもなく、適度にお金や財産を使うバランスの良いあり方です。このように両端の悪い状態を避け、ちょうどよいバランスをとることが「徳」なのだ、とアリストテレスは考えました。


4. 「知性的徳」と「倫理的徳」

アリストテレスは「徳」を大きく分けて二種類に分類しました。一つは「知性的徳」で、勉強や学問を通じて鍛えられる知性や知恵のことです。もう一つは「倫理的徳」で、先ほどの「勇気」や「正義」など、行動の習慣によって身につく徳を指します。人間が幸福になるためには、両方の徳をバランスよく育てる必要があるとされます。学ぶことだけでなく、実際の生活や行動を通じて自分を鍛えることが大切なのです。


5. 「友愛(フィリア)」の役割

人間が社会的な生き物である以上、他者との良い関係を築くことも幸せにつながります。アリストテレスは、仲間や友人との「友愛(フィリア)」を非常に重視しました。ただ仲が良い、遊び仲間というだけでなく、お互いを高め合い、より良い人間になるために助け合う関係が理想的だと考えます。本当に大切な友人関係は、相手の徳や成長を願うことで、互いの幸福にもつながるのです。


6. 実践と理性の調和

アリストテレスによると、幸福で徳のある生き方をするためには、「理性」を使って自分の行動をコントロールすることが不可欠です。欲望のままに行動すれば一時的には気分がいいかもしれませんが、それだけでは本当の意味での幸せには届きません。感情や欲望をうまくコントロールしながら、自分の目標や社会のルールを踏まえて行動する。そのためには日々の生活の中で失敗を重ねながら、少しずつ知恵や判断力を磨いていくことが大切だと説いています。


7. 現代への応用

アリストテレスの考え方は、2000年以上前に書かれたにもかかわらず、今でも多くの場面で応用できます。スポーツや部活動での練習が繰り返しを通じて技術を身につけるのと同様に、倫理的な行動も「繰り返し」や「習慣」が大事です。また、テストや勉強で知性を磨くのと同じくらい、友人や家族との関係づくりの中で正義や思いやりを学ぶことが大切だとわかります。極端に走らず、ちょうどよいバランスを探し続ける姿勢が、人生をより充実させるポイントといえるでしょう。


まとめ

『二コマコス倫理学』では、「幸福」という最終目的を実現するために、「徳」を身につける必要があると説かれています。それは単なる知識だけでなく、日々の生活での実践や友人関係など、具体的な行動の積み重ねによってはじめて身につくものです。そして、その徳は極端に走るのではなく「中庸」を保ち、理性と感情のバランスをとりながら習慣として身につけることが大事だといわれています。アリストテレスの時代から何百年も経った現代でも、勉強や部活、人間関係といったあらゆる場面でこの考え方は生きており、「自分はどのように生きたいか」という問いに対するヒントを与えてくれるのです。

★ わかったかな? 難しい本でも、古来より人間が考えることって現代にも通じていて、きっとそんなに違わないんだね。


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