デザイナーに向いている人

前回のノートでデザイナー職を最近できていないという話を書いた。しかし本ノートを読んで頂きたいグループの一つ医療従事者には、デザイナー職とは何かご存知ない方も多いと思うので、私なり説明をしていきたい。

「グラスのデザインを頼まれたら、グラスの絵を描いてはならない」受け売りだが、これはデザイナーの仕事について示した例え話である。

一般にデザイナーといえばオシャレやカッコいいものを作るイメージだろう。デザイナー職の中で花形である広告業やカーデザイナーなど確かにビジュアル、意匠で、プロダクトの価値を高めていく「ビジュアライズ」や「スタイリング」といわれる作業はデザイナーの仕事の一つで、先程の例え話のグラスの絵を描く作業である。ではなぜ絵を描いてはいけないか、それはグラスのデザインを頼んだ人のことを知らないからである。なぜ頼んだのか、誰のために頼んだのか。依頼者にヒアリングしなければ「依頼者が発展途上国の子供たちが、汚染された川の水を飲むために依頼した」ことは想像できない。もしそうであれば浄水器や井戸、川の水は飲まない方がいいという教育を依頼者へ提案しなければならない。

この例え話で、デザイナー職とはビジュアライズやスタイリングだけではなく、依頼者の根本的課題解決を行う仕事であることがお分かり頂けただろう。ここからは医療機器、ヘルスケア機器のデザインを考えてみる。課題解決のためにはヒアリングを行い、課題や背景、関連情報を深く知らなければならない。特に医療機器ではこの作業が困難である。担当する製品の医学的基礎知識(医学、生理学、生化学)、治療法やそのガイドライン、法律(薬機法)、症例報告(論文など)を多少なりとも勉強しなければならない。

美大芸大出身のデザイナーにとって上記勉強は苦しい人が多いだろう。畑違いすぎる。しかしこの勉強をできない人、やりたくない人は医療ヘルスケアのデザイナーに向いていない。勉強に熱中すると言語化できない“センス”を忘れそうになる。「医療ヘルスケア機器開発者の自分」と「デザイナーの自分」を切り替えて成長させていける人だけが、医療ヘルスケアデザイナーとして成功するのだろう。

医療ヘルスケアデザイナーを志している大学生が本ノートを見ていたら、是非医療に関する論文や発表を一本読んでみて欲しい。楽しめたあなたは素質がある。

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