匿名の誰かへ
私は「いつか必ず報われる」とは言えない。
しかし、「世の中なんて不条理なもの」と言い切れるほど世を知っている自信もない。
この答えは人によるだろうしどちらかが証明されるのは人生の終わりの時だと思う。
だから、その辺りのことを結論付けるのは一旦差し控えて先に進もう。
あなたがこれまでいろんなことを犠牲にしてきたことが、人生をかけて取り組んできたことが。
あっけなく失われてしまった。
「何のために努力してきたと思っているの?」
「どうしてよりによって今年だったの?」
「なぜ自分たちだけから奪うの?」
言いたいことはいくらでもあるだろう。言葉にならない悲しみ怒りの類も尽きることがないだろう。
それだけあなたは真剣に向き合って努力を積み重ねてきたから。
私がこんなことを言ったところでそれはなんの力にもならない。
どんなに親身な人に同情されたとしてもきっと何の慰めにもならない。
どんなに立派な人に前を向けと言われても、簡単には受け入れられないはずだ。
「『出られなかった』と、『出るために挑戦する機会さえ与えられなかった』のでは全く意味が違うではないか。」
あなたたちに言葉を向けた多くの人は、きっと分かっている。
それでも声をあげずにはいられないのだ。
これまで人生をかけて大切していた目標が自分ではどうすることもできずになくなってしまった。
残念ながらそれでもあっけなく人生は進んでいく。
飲み込めない思いは飲み込めないまま、無理やり生きていくしかない。
その思いはずっと形を変えないままあなたに墓場まで寄り添うかもしれないし、時間が解決するかもしれない。あるいはあなた次第ではその思いを昇華させて何かもっと大きなことを達成することもできる。
「昇華させたとて失われたものは変わらない。」
それもきっと、わかっている。
それでもあなたの人生が進んでいく以上、今報われなかった思いにつけてこの先の幸せを願わずにはいられない。
気持ちを切り替えること、前を向くこと、新たな目標を見つけること、好きで努力してきたものを好きでい続けること。
どれもきっと難しいけどあなたの人生の幸せを願って向けられた言葉だと理解して頭に留めておいて欲しい。
力になれないとわかってもなお応援せずにはいられない人が、あなたの後ろにはたくさんついていることを忘れないで欲しい。
*
敢えて言わなくても同じような悲しみや同情は溢れかえっているから。なるべく私はコロナ所感を言わないようにしていた。それでも言葉が出てきて止まらない。
もし私が誰かに言葉を贈るなら、伝えたいことを綴った。
逆境に立たされる人に伝えたい言葉は以前にも一度書き留めている。