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旅する本屋
無知が支配の武器ならば、
知識こそ革命への武器。
イタリアの隠し通路を熟知し、
山々に書物を傷付けず、
正しく価値を理解して売る膂力と査定眼。
モンテレッジォの行商人は、
文化の密売人。
聞こえは悪いがイタリアの歴史を、
根底から変えるきっかけを作ったのは、
彼らだった。
モンテレッジォ小さな村の旅する本屋の物語
ローマ、フィレンツェ、
ヴェネツィア、ミラノ、
雨に濡れて街明かりを返す石畳、
重厚な皮革装の背表紙の並ぶ書店、
豊富なフルカラー写真と風情豊かな情景描写。
眺めているだけでワクワクする。
本の行商人の旅と過去、
出会いをめぐる壮大な旅物語だ。
自分が知らない世界を求めて、
近所の本屋をふらりと尋ねたくなる一冊。
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旅する本屋
イタリア🇮🇹ブーツ👢の脛あたり、
フィレンツェの北西。
人知れぬ山奥に、本を愛し、本を売り、
本を届けることに命をかけた人達がいた。
本購入の9割がAmazonの自分からすると、
モンテレッジォの行商人の情熱には実に頭が下がる。
ヤマト運輸や佐川急便などに、
頭を下げない訳じゃないが、
重い本を担いで山道をゆく、
彼らは文化や思想の配達人だ。
作者の内田洋子さんはイタリア通信社の代表で、
エッセイスト、モンテレッジォの話は、
ヴェネツィアで知った。
伝えなければならない事がある
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農閑期、土地も狭く、
作物で稼げない彼らはなぜ、
「本の行商」に乗り出したのか。
そのきっかけはおよそ200年前の大寒波、
糊口を凌ぐため、
籠いっぱいに聖人の守り札を詰めて、🧺
モンテレッジォの行商人が、
神の言葉を運ぶ初めての日、
コートのポケットにもぎっしり本を詰めていた。
ナポレオンの勢力圏にあったときも、
オーストリアの統治下にあったときも、
時の支配者たちは、
イタリアの独立を求める民衆の決起を、
それはそれは恐れていた。
支配者は情報の制限、無知を振り翳し、
民衆を籠に閉じ込めていた。
遺さなければならない事がある
モンテレッジォの村人の数だけ、
イタリアで本屋が生まれ、
本屋の数の何百、何千、
何万倍の本が届けられ、
そして読まれ、感動や興奮、
知識を広めてきた。
伝えなければならない事がある、
未来を創る事と、
過去を語り伝える事は、
同じなんだから。
そう、
風にそよぐのは枝先の葉だけではない。
落ち葉は静かに木の元に吹き集められ、
根を覆って温め、やがて地に還る。
それはページが一枚ずつ重なって本となり、
読んだ人の心を温め、
滋養となっていくのに似ている🍂
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